7. さよなら青信号



その一. 青い壜




青い壜ブラッドベリの香りして青酸舐めたの?醒めた顔色


ジョニ青を一壜空けて明けたなら琥珀の海にビー玉溢れ


空き壜に魚吊そう七宝のお部屋は海だおはじきを積め


細長い薔薇の香りの藍色のガラスに嵌めよう銀の腕輪を


もう駄目だまた捕まったこの家に青春切り裂く血は美味かろう


竹籠に盛ったおはじき詰め込もう青い壜にはもう酒はない


青は春おのれの青はどう、と去り。残れる時間を壜は抱えり


胸被う燃えかすの夢手招きし穴を満たそう薔薇と灰とで






その二.なお青い地上で




告別の教会に立つ青衣さよならマリアそれが友の洗礼名


精霊を抱いて祈れる青衣涙ばかりが涸れて残れる


永遠を耐えて笑みには隠せても抱くもの逝く嘆けや聖母


なお青い空の地上で響くなら宣言しよう鼓動の愛を


穢れない輝く画像手の平に見つめて笑ってそれっきりでも


風光る紅梅の枝髪に挿しみっともねえよデモヤメナイヨ


既視幻視すべて組み立てられるなら世界は青い絵を撒き散らせ


長い髪ぐるぐる巻いて頭頂に藍貫いて人の世へ出る


巻き直す束髪に挿すかんざしを逆手に握れ鏡は割れる







その三.さよなら青信号





死にました嗚呼死にました九十七くじゅうしち最後の祖母が明治へ還る


祖母が逝き四十九日に今日はまた嫌われ伯父が河のむこうへ


兄弟はらからの死に祈りくらいはしないかいあの地この地で恨みあっても


人が死ぬそのとき映える顔がある残された人自由となりて


憎しみは心の中で昇華する可哀想だけ歌に詠めれば


アイボリー曖昧な色墨のの骨揚げする日これと解りぬ


ジョーカーと罵られてた遅い脚いじめられっこの誇りでしたよ


あこがれた覚悟という名の銀の杖ようよう手にする時が来ました


旅空を眺めて歩いた二十代計算ずくで見納めていた


先生の脚はそれで平気かと教え子つたない日本語で言う


歩きましょ行ける果てまで奔りましょ私にはまだ君があるから


海のの街に生まれて出奔し泣いて戻って青を踏み割る



傘越しの湿気った青を目で利いてひねくれ者の旅が始まる


さよならを青信号に叩きつけ這っていくぜよ馬鹿野郎ども




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 「女大公カイエン」を休んでいるうちに、「歌集・青い時代の虐殺」は終わりました。

 多分、全部で231首。

 まあ、色々とキツくてエグい言葉を叩きつけていた時代を、これで確実に「歴史」に変えて、これからの人生を新しい「歌」で飾っていきたいです。


 この「青い時代の虐殺」のために、古いものをあちこちから集めてきて、再編成する中で、「次の時代の短歌」を始めないといかんなあ、と思っています。

 小説はまずは「女大公カイエン」を終えてから次にいくと思いますが、短歌は空き時間に書き溜めていきたいと思っています。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 なろう版には挿絵を入れています。

 リンクは貼れませんが、検索ですぐに見つかると思います。

 絵が入ると、また趣も違いますので、よろしくお願い致します。

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歌集・青い時代の虐殺 尊野怜来 @ReiraTAKANO

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