その後三島君とは数度連絡を取り合ったが、別の中学となると同じ町に住みながらも生活圏が全く異なってくるため、滅多に会うことがなかった。


 次第に疎遠になり、年賀状のやり取りも途絶え、いつのまにか互いにどこでどう過ごしているのかも分からなくなってしまった。


 噂では三島君はその後も順当に中高を経て、人が聞けばなるほどと一歩下がって襟を正したくなるような名門大学を出た後、現在は海外に移住し、農業に関係した研究をしているということだった。

 

 一度、ふと思い立って、三島君のネットサーチを試みたことがあったが、かろうじてフェイスブックのアカウントにそれらしい人物を見つけた程度で、でもそれも非公開設定となっており、人違いの可能性を考えるとそれ以上踏み込むことができなかった。





 三島君からもらったカードはその後、年月とともに異様な価値を発揮し始めた。


 例えば、くだんの『ヴァルキュリアスドラゴン』などは、最新のネットオークションの結果を見ると、桁を間違えたのかと思う程の高値を示している。

 そうしたカードは他にも何枚もあり、結果として三島君からの贈り物は私にとっての本当のお宝となったのであった。


 引き換えに私が渡した手書きの原稿の数々が、三島君にどのような価値を発揮したのかについては全く未知のままである。


 ただ、特に漫画家でも何でもない平凡な会社員に納まった私の経歴を明かせば、その価値も大方察することが出来るかもしれない。




『サヨナラ、小さな罪』終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サヨナラ、小さな罪 けんこや @kencoya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ