花子さん

中学生にもなれば、自分とどんな奴が話が合うか、分かってくる。


クラスの隅っこの席で、1人でいる女の子がいた。1人でいる、のだが、それは皆が1人にさせているって感じだ。関わりを持たないよう、遠くで白い目で見る。ヒソヒソ話をし始める。

彼女はおかっぱで、赤いスカートを履いた花子さん。そう、あの有名なトイレの花子さんだ。

彼女は俯いて、静かにいた。授業が始まるまでも、誰にも絡まれていない。

皆、怖がっているのだ。

彼女は転校して来たのか、突然現れたのか。それはよく分からないが、最初からクラスに居るというのでは無いように感じた。


「あなた達。花子さんと仲良くしてくださいね。」


教師が言った。

それを聞いたクラス中は、嫌がっていた。

俺は花子さんを見た。花子さんは、泣いていた。声をあげて、周りをギョロッと見回す。目は恨めしそうな、かなり力んだ目だった。俺は可哀想だと思ったけれど、怖くて話しかけれないでいた。


授業が終わり、休み時間。

花子さんは急に立ち上がった。俺は珍しいな、って思った。歩いて教室を出て行った。俺は後を追った。

廊下を進む。花子さんは学習室に入った。いや、トイレじゃないんかいと思い、俺も入った。

入ってみたものの、そこには誰もいなかった。隈なく中を探してみたが、やはり何処にも居ない。

すると、勝手に入るなと教師に叱られた。俺は学習室を後にした。

教室に戻ると、母がいた。何か叱られたのだが、よく覚えていない。


ここで夢は終わった。

俺も一時期クラスで孤独を感じた事がある。

花子さんの気持ちは少し分かるが、彼女は既に"怖い"というレッテルが貼られた状態だった。彼女はその第一印象だけでクラスから外されたのか。思い返すとそうにも思えてくる。

幽霊や妖怪は、昔から忌み嫌われたり、孤独な者が多い。でも、俺は花子さんを幽霊でもなく、妖怪でもなく、人間に見えていた。あれは、当時の俺を写したのかもしれない。


でも、俺は結局、花子さんを救えなかった。

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