――始まりは紙飛行機なのかも知れない。
これは、女子高生の朝倉希と大学生の明日香涼とのラブストーリー。
紙飛行機というキーワードが物語を牽引します。
明日香涼は謎の記憶に悩まされていた。やがて涼と希は付き合う様になるが、涼の記憶の断片に第三者の記憶が飛び込んできます。謎の記憶とは誰なのか?その記憶の先にあった過去は、誰が関係していたのでしょうか?
ファンタジーの要素を持ちながら、物語の後半へ突入すると、切なさが止まらなくなってしまいます。親子間の愛情。恋人間の愛情。浮かんでは消えていく過去に伝えきれなかった想いが、お互いに繋がった瞬間は涙腺が崩壊してしまいます。
繰り返されるフラッシュバックの記憶の断片に、垣間見た希の母親と、謎の記憶の持ち主の関係とは?そして繰り返される悲劇にどのような意味があるのでしょうか?
もしも喧嘩して別れたならば、また何処かで偶然会う事もできますが、亡くなってしまったら、永遠に会えなくなってしまう。ましてや、事故ならば納得も出来ない。
愛する人を失い、後悔だけが取り残されて苦しい日々が続く中、人はどうやって、いやどのようなキッカケがあれば前を向いて歩いていけるのでしょうか?
奇跡とは信じるだけではなく、絶対に諦めず信じ抜く事で起こるのかも知れません。
――この恋は運命ではなく、小さな奇跡の物語――。
あの頃に見た君の(あなたの)笑顔に、もう一度逢いたいから……。
そんな主人公たちの声が聞こえてきそうです。
前世の記憶を持ってしまった主人公と、その前世に関わりのある血を引くヒロインとが繰り広げる物語は、私の中に深く残りました。
もう何作も、ayaneさんの物語を読んで来ましたが、やはりこの物語を読む上でも、感じるのは「人の優しさ」です。
自分語りをレビュー上でしてしまうのも失礼な話かも知れませんが、私は人間の行動は2種類だと思っています。良い行動と悪い行動…ではなく、自分のための行動か、他人のための行動か。自分のための行動は悪い行動で、他人のための行動は良い行動かという話でもないです。
この物語に易しさを感じるのは、この物語の登場人物は自分の周りにいる人達の笑顔を見る事、皆が幸せである事が大好きなのだという点です。
それが行動原理にあり、それは他人のための行動と自分のための行動がイコールで結べるのだと気付かされます。
だから優しいと思ったのです。
その優しさは、甘さも伴ってしまっているとも思うのですが、それこそが高校生らしい、また誰もが高校時代に――多くの人が過ごす青春時代に持ちたかった優しさではないでしょうか?
それを書ける作家・ayaneさん、いつも凄い方です。
フェンス越しの純粋な恋愛が始まるのかな、と思いきや、複雑な人間関係が織りなすドラマが展開されます。
フラッシュバックする事故の記憶。自身の中に残る記憶。
何かを覚えていることの方が、よほど奇跡的なのかもしれないとさえ思わせるような深いお話でした。恋愛小説の枠組みを軽やかに越えて、過去から現在へ、現在から未来へと紡がれていく想いと奇跡の連鎖が此処にあります。
紙飛行機に、車のクラクション、瞳に映る光景。そして記憶。
様々なキーワードが、気心知れた友人たちや家族、思いがけない絆に紐づいています。現代を生きる我々も直面するかも知れない『選択』に関する迷いや苦悩もありありと描き出されています。
複雑な関係性を描きつつ、読み手を混乱させることはない。読み進めるうちに深いテーマが浮き彫りになってくる辺りは、作者様の筆力の賜物でしょう。
本作は恋愛作品としてピュアで初々しい二人の物語を綴りながら、ミステリーの要素もあります。
その謎も相まってグイグイと物語の世界に引き込まれました!
主人公は、謎の記憶に悩まされる明日香涼君です。彼はなぜか幼い頃から不思議な映像が頭の中に浮かんできます。
そして、月日は流れ大学に入学……そこで紙飛行機を探していた希ちゃんと運命的な出会いを果たします。
二人が運命の糸に導かれていく中で謎が段々と紐解かれて行き……。
高い文章力と一ページが短いので、とても読みやすくあっという間に完結まで読破してしまいました!!
あまりの面白さに一気読みでした。
後半は涙なしには読めません!
この感動をぜひ御一読下さい!!