未知との遭遇から始まるかわいい生き物の同居生活

ある日帰宅途中にラディカンスペルクと遭遇した吉川善一。突然の出会いに狼狽する彼だが、結局吉川は言われるがままラディカンスペルクを家に上げ、リリアーヌと名前をつけてそのまま暮らすことに。

ラディカンスペルクとは何かと言われればラディカンスペルクとしか言いようがないのだが、強いて言うならば名状しがたい知的宇宙生命体である。

というわけで、本作はラディカンスペルクと人類の同棲ものである。最近のラブコメでも流行りつつあるジャンルだ。最初はラディカンスペルクと一緒に映画を見たり、料理を作ってもらったりとほっこりする日常が描かれていくのだが、だんだんラディカンスペルクの強大な力を使えば色々なことができると吉川が気付いてからが話の本番。

社会的にそういうことをしてしまうのはどうなんだという展開も通過した上で、物語は意外な結末へと突入する。

しかし、触手や繊毛が生えていて口や目がいっぱいあるらしいラディカンスペルクだが、その独特の思考法も相まって、読んでいる内に非常にキュートで可愛らしい生物に思えてくるから実に不思議である。吉川による「リリアーヌはぐろぐろと美術館めいた猛笑を浮かべた。」みたいな意味が分かるようであんまりわからない独特の比喩表現も実にいい味を出していて、ラディカンスペルクの可愛さにますます拍車をかけていて素敵だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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