現代③

「おお、たくさん作ったなあ。」

「お母さん、ありがとうございます。」

 昭悟たちも居間に集まる。息子夫婦は県庁で立派に働いている。


「食べてみてくれる?味見してないけん、美味しいか分からんけど。」

 食卓に並べられた、かぼちゃ料理の数々。これらは全て孫たちのために用意したものだ。自分には手巻き寿司を買っている。


 忌々しいかぼちゃを目にするだけで胸が締め付けられていた頃の私には、想像つかないだろう。このテーブルを埋め尽くすかぼちゃ料理は、私が心から望んで用意したものだと言うことを。

 かぼちゃによる苦しみを、乗り越えられたかどうかは分からない。

 だけど孫のためを思えば、かぼちゃがこんなにも愛おしい。


「おばあちゃんは食べんの?」

 私は結構!かぼちゃなんて、金輪際まっぴら御免!

「アンタらが美味しそうに食べる顔が見られれば、それで腹が膨れるんよ。」


 かぼちゃはまだたくさん残っている。次はどんなかぼちゃ料理を作ろうか。

 頭の中は、かぼちゃでいっぱいである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

食卓はかぼちゃ一色 夏木郁 @Natsukiiku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ