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「宝石の蒸発」あとがき

第一回イトリ川短編小説賞に「宝石の蒸発」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054917606427/episodes/1177354054917606459)という作品で参加致しました。この場をお借りして、拙作の簡単な解説と、参加した感想について述べたいと思います。

 以下のような順番になっています。
①「たったひとつの望み」解釈
②執筆小ネタ
③参加した感想
 
①「たったひとつの望み」解釈
 執筆するにあたり、まず「たったひとつの望み」というテーマについて解釈しました。「たったひとつの」とあるくらいですから、「望み」の内容は並大抵のものではないんだろうなと思ったからです。きっと望む者にとっては何よりも優先すべき切実な望みなのだろうと。そこから、主人公を「たったひとつの望みだけを追い求め、それを人生の中核に置いている人」にしようという発想に至りました。

②執筆小ネタ
・舞台設定について
 今作における神々は、人間がコントロール出来ない存在として描かれています。アダシアは自分の子供を奪った王に復讐するため、人間社会に災厄をもたらしました。その王は百五十年前の人なので、現在の王族や都の人々からしてみれば「知ったこっちゃない」理由なのですが、神の意思に人間は介入出来ません。能力の高いカエカでさえも、神という人智を超えた存在は凌駕出来ないのです。
 このような神の描写はローマ神話に着想を得ました。例えば、ウェルギリウスによる叙事詩『アエネーイス』では、女神ユーノーは「トロイア人が憎いから」という理由でアイネイアースを徹底的に邪魔します。アイネイアースからすれば「知らんがな」な理由で女神に困難を強いられています。神ってそういう、人間が適わない存在だよねっていうのが描かれていると思い、今作の参考にしました。
 この物語に登場する王国は、現代でいうイタリアを想定しているのですが、なぜイタリアなのかというと、ローマ神話を踏まえて世界観を創造したからです。

・宝石について
 宝石が神々の子供であるという設定が生まれた経緯はうろ覚えです。神々に頼めば手に入る宝石についてどう表現するか考えていた時に、「神々の与えし仔」という比喩が生まれ、その比喩を設定にした……みたいな感じだったと思います。
 カエカが地元の海で宝石を貰う場面は、真珠の養殖方法からヒントを得ました。真珠ではなくアクアマリンなのは、キラキラして透明感がある感じを演出したかったからです。(作者の好みとも言い換えられます)
 ちなみに、宝石の貰い方にも得手不得手があるという設定です。どんな宝石が貰えるのかは神々の機嫌次第。奉納物が気に入れば美しい宝石を分けてくれますし、機嫌を損ねればただの石ころが投げ捨てられることもあります。カエカは宝石貰い歴(?)が長いのと詩の能力が高いので、かなり良い物を貰っていると思います。作中に登場したエメラルドも、目の肥えた都の人が見ても感嘆するレベルなのではないでしょうか。

・サテラスについて
 勝手に動き出したのでビックリしました。元々、カエカが望みにとらわれて視野が狭くなっている痛々しさを示すために配置した登場人物なのですが、急に独白するし、勝手に忠告を与え始めるしで、「めっちゃ喋るやんこの人……」と思いながら書きました。
 彼による物語への介入によって、物語のラストも当初の想定よりバッドエンド寄りになってしまいました。もう少し希望が感じられるラストにしたかったのですが、作者の力量がサテラスに及びませんでした。これはこれで良かったかなと思っていますが。

・登場する神々は、基本的に自然現象を擬人化したものです。スチカは彗星を、アダシアは嵐や雷をイメージしました。


③参加した感想
 今作はカクヨム3作目の作品でした(人生で完結させた小説では4作目です)。自分に合った執筆手順の確立に一歩近づけたような気がします。今回分かった教訓としては、
・プロットは大まかに
・「この部分は後で書き加えよう」より「適当でも何か書いておく」ほうが矛盾が生じにくい
・思いついたことは紙にメモしていく(今回はA4で19ページメモして実際に使ったのは3ページ分くらいですが、19ページが無ければその3ページは生まれなかった)
・インプットはネット<書籍
あたりでしょうか(あくまで私の話です)。
 もっと書きたいことはあったのですが、書き切れなかったのが無念です!これからたくさん作品を書いて上達していきたいと思います!

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