第4話 世界平和と人間の欲
全く人間の欲は無限に大きくなるものだ。
神はため息をついた。
金だ。権力だ。名声だ。いろんな願いを人間たちは望んできた。
その度に叶えてきたが人間たちは満足を感じない。新たな欲が生まれては願い事の内容を肥大化させていく。
また新しい願い事だ。
人間が願い事をするたびに頭痛を感じるようになった。今度は何なんだ。
「神様どうか世界を平和にしてください。戦争をこの世から消してください。」
平和か…戦争の無い世界…それなら叶えてやろう…
神は世界から戦争を無くした。
世界から戦争が消えた。人々は戦争の無い世界を喜んだ。
今度は凶悪犯罪に目を向け悲しむようになった。
「神様どうか世界を平和にしてください。凶悪犯罪をこの世から消してください。」
…凶悪犯罪の無い世界か…それなら叶えてやろう…
世界から凶悪犯罪が消えた。人々は凶悪犯罪の無い世界を喜んだ。
今度は大きな争いに目を向けた。国際問題、政党争い、デモが起こるのを悲しむようになった。
「神様どうか世界を平和にしてください。大きな争いをこの世から消してください。」
…大きな争いか…よし叶えてやろう…
世界から大きな争いが消えた。人々は大きな争いの無い世界を喜んだ。
今度は身近に潜む喧嘩といじめ、誹謗中傷に目を向け悲しむようになった。
「神様どうか世界を平和にしてください。喧嘩といじめ、誹謗中傷をこの世から消してください。」
…喧嘩といじめ、誹謗中傷か…よし叶えてやろう…
世界から喧嘩といじめ、誹謗中傷が消えた。人々は喧嘩といじめ、誹謗中傷の無い世界を喜んだ。
今度は日常での些細な口喧嘩に目を向けるようになった。学校で職場で家庭で些細な事を言い争う事。それを悲しむようになった。
「神様どうか世界を平和にしてください。口喧嘩を世界から消してください。」
…口喧嘩か…よし叶えてやろう…
世界から口喧嘩が消えた。人々は口喧嘩の無い世界を喜んだ。
今度は異なる意見に目を向けるようになった。穏やかで優しい言い方をしていても自分と相手とは考え方が異なることに人々は悲しむようになった。
そうしてまた同じように神に祈った。
「神様どうか世界を平和にしてください。異なる意見を世界から消してください。」
…ああ…やはり人間の欲は無限に大きくなるものだ…
神は頭を抱えた。
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