第7話 貴重品
(貴重品…この家の貴重なものはどこだ…)
空き巣に入った家の中をゴソゴソと荒らしまわった。
箪笥の中、机の引き出し、テーブルの上に置きっぱなしにされた書類。ありとあらゆる場所を探り出した。
箪笥の中に分厚い封筒を見つけた。中には束になったお札が入っていた。
机の引き出しには指輪がしまわれていた。
だが、さっと目を通すだけで手を付けずにそっと引き出しを閉じた。
テーブルの上を見渡す。
この家の住人は片づけが苦手なのか書類の入った封筒用紙、メモ用紙、葉書が置きっぱなしになっていた。
それぞれの元の場所をスマホで撮ると一番近くにある物から手に取った。
まずは書類。職場の物らしく会社名と事業内容が記載されている。
次にメモ用紙。来週頃どこへ何しに行くのか遊びの予定が書かれている。
最後に葉書。赤ん坊が生まれたと家族写真付きでの知らせ。文面から親類だと察することが出来る。
目を通す度にスマホで撮影する。
(今日はこんなもんか…)
満足すると最初に撮影した画像通りに物を配置する。
物音立てずに家から退出する。
この家の貴重品が詰まったスマホを携えて。
正直、現金や宝石といった形のある貴重品は足が付く。
狙うなら形のない貴重品。個人情報だ。
あの家からは住民がどこの会社に勤めてどんな仕事をしているのか、来週の予定、人間関係の情報を盗むことが出来た。
さあて手に入れた貴重品はどこに売ろう。
押し売りな悪質商法や振り込め詐欺グループ…会社の情報は高く売れそうだ。
そうそう親族の情報も…住所と名前、家族構成が分かったしな。
短い物語寄せ集め集 桐生文香 @kiryuhumi
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