第3話 親切

 「大丈夫か?」

 友人のAが優しく声を掛けてくれる。

 

 1Kロフト付きのアパートで怪我した俺をAが世話をしてくれる。

 Aは大学からの付き合いだ。最初はヤクザと付き合いがあるだ。覚醒剤の取引に手を貸しているだと悪い噂にはビビった。でも実際に話してみると良い奴じゃねえか。

 俺は運悪く左腕を骨折してしまった。俺の片腕は三角巾に包まれている。それが不便で仕方がない。でもAが世話をしに来てくれたから助かっている。

 

「いいなあロフト付きって。俺ロフトとかに憧れているんだよな。」

「登ってみるか?」

「いいのか!!」

 Aが嬉しそうにロフトの梯子を登りだした。

子供みたいに喜んでいるAがどうして悪い噂を流されるのか俺は疑問に思った。



左腕を怪我したとか都合いいじゃねえか。

Aの顔に笑みがこぼれる。

ロフトにそっと覚醒剤の包みを取り出し置いた。

あいつは片腕を怪我した。三角巾の腕じゃロフトへはしばらくは登るのは無理だ。あいつが気づくことは無いだろう。それまでの間、覚醒剤の隠し場所にさせてもらおうじゃねえか。

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