第2話 佐紀の新しい習慣


最初は、佐紀自身もおむつに対して何も感じていなかった。高学年や中学生になっておむつを履くこと自体は恥ずかしいことだという自覚はあったが、海外に行くときだけで誰かに見せるわけでもないので、特別な羞恥心を持つことはなかった。それが大きく変わったのが中学1年生の時だった。


年ごろになってきた佐紀にも、好きな男の子ができた。周りの友達とも、何組の誰々君がかっこいいやら、サッカー部にイケメンが多いとか、そういう話題も多くなってきた。大っぴらに自分の好きな子を誰かに話すことはなかったが、実は同じ小学校の幼馴染のことを思うと胸がどきどきするようになっていた。多感な時期の女子中学生ともなると、性的な部分でもませている子が出てくる。ある日、佐紀は部活の先輩に初めて「AV」なるものを見せてもらった。先輩たちが輪になって囲むスマホの画面には、喘ぎながら熱心に自分の股間をまさぐる女性の姿が映っていた。


「佐紀ちゃんてオナニーしたことある?」

先輩の一人がからかうように佐紀に聞いてきたが、他の先輩たちが爆笑してしまったので、答えるまでもなくその場は流れた。


その日の晩、ふと好きな男の子を考えていた。あの子とたくさん話せたら…、手を繋いだり、キスしたり…。想像すると胸がキュッと高鳴る。先輩から見せてもらった動画のことが頭をよぎる。佐紀は、誰も見ていない布団の中で、恥じらいながらこっそり手を股間に伸ばした。


「んっ… ふ…」


秘所に手が届くと、感じたことのない感覚と、声にならない声がこぼれてきた。最初はそっと触れるだけだったのに、時間が経つにつれて動きが激しくなってくる。誰に教わったわけでもないのに、自然と快感を得やすい動きになるのに男女の差はないようだ。30分ほどで佐紀は果てた。汗だくになった首筋は、紺色の枕にくっきりとシミを残していた。段々と股間が湿っていくのに佐紀自身も気づいてはいたが、途中で止める選択肢はなかった。佐紀のパンツは犠牲になった。


(パンツ洗濯カゴに入れられないよなぁ…)


迷った佐紀は、キッチンからナイロン袋を一枚拝借し、汚れたパンツを入れてきつく縛った。オナニーを覚えた佐紀にとって、下着が汚れることが一番のネックだった。最初はパンツを脱いで裸ですることも考えたが、シーツが汚れる方が母に言い訳が立たない。佐紀が思いついたのが、「紙おむつ」だった。汚れても捨てられる下着、しかも一回分なら余裕でおしっこを吸収できるのであれば、オナニーくらいの湿り気なら余裕だろうと思ったのだった。


翌日、早速佐紀は行動に出た。旅行用のおむつは自分の部屋のクローゼットにしまってある。こっそり履いても自分の部屋の中だけならバレることもないと佐紀は踏んでいた。クローゼットを開けてコートなどの服をかき分けて奥に置いてある段ボールに手を伸ばす。普段使わない分奥にしまってあったので、懸命に体を伸ばして段ボールを開けた。ピンクのパッケージが見えたので、さらに手を伸ばして一枚だけ引き抜いた。子供用の大きいサイズのおむつだが、華奢な佐紀にとっては普段履いているパンツをサイズは変わらない。旅行の時のように、腰まで引き上げ、そのままベッドにもぐりこんだ。


おむつ履いた時点でスイッチが入ったように佐紀の胸が躍る。待ちきれずに佐紀の頭の中には好きな男の子の妄想が駆け巡った。部活で見たAVのように、裸のまんま体を寄せ合うシーンも頭の中で想像する。佐紀が果てるまで大した時間は必要なかった。それから佐紀は5日連続でおむつを履いてオナニーをした。佐紀にとっては、おむつを履くことイコールオナニーという感覚に陥っていた。


「佐紀、今年の海外旅行だけアメリカのシアトルに決めたよ」


食卓でお父さんから言われた。毎年夏休み前になるとお父さんとお母さんが話し合って行き先を決める。佐紀が意見を言ったこともあるが、低学年の時に行きたいところを聞かれて「北極!」と答えてからはあまり意見を尊重されることはない。


「佐紀ちゃん、8月の2周目には日本を発つから準備しておいてね。おむつはまだ前の分残ってるよね?」


一瞬言葉に詰まる。初めてオナニーにおむつを活用してから1週間。開封したばかりの14枚入りのおむつは半分ほど減っていた。もちろん家で履いているとは口が裂けても言えない。


「ん~、どうだったかな…後で見とくね」


結局後になって、半分しかなかったから買っといて~と笑顔で誤魔化したが、お母さんは「前の旅行の前にも買ったはずなんだけどな…」と怪訝な顔をしていた。佐紀は、今後はおむつを履いてオナニーに興じるのは難しいなと落胆した。




飛行機はシアトルの空港に到着した。日本からおよそ20時間。家族3人とはいえ、すでに大変な長旅だ。しかし、様々な海外に行った高田家にとっては、アメリカの旅行程度はちょっとしたものだ。過去には、東南アジアでお母さんが置き引きに遭ったこともある。あれから、お父さんはふざけて盗難アジアと呼んでいる。


ちなみに飛行機の中ではおむつにお世話になることはなかった。家族3人で横並びに席をとることができたので、トイレに行きたくなったら隣に気を遣うことなく行くことができた。税関を通ったところで、佐紀はお母さんの耳元で小さくささやいた。


「お母さん、ちょっと着陸の時にちびったみたいだから、トイレで替えてくるね」


「え~、たしかにちょっと揺れたけど…。早く行ってきなさい」


飛行機には慣れている佐紀だったが、今日の着陸は乱気流の影響もあってかなり揺れた。後ろに座っていたヒスパニック系のご婦人は小さく悲鳴を上げていたくらいだ。


佐紀は日本のラウンジと同じように、おむつを手に持ってトイレに向かった。今回はカバンも一緒に持っていっている。個室に入ると、ズボンを脱いだ。ズボンは完全に脱いでしまって便器の上にあったスペースに一旦置いた。おむつが汚れただけであれば、サイドを破って捨てればいいだけである。佐紀はカバンの中からキレイに畳んだビニール袋を取り出し、そっと脱いだ紙おむつを丁寧にたたんで袋にしまった。袋はカバンの一番下に押し込んだ。


佐紀にとって、海外旅行はいろんな経験をしたり、見たことない景色を見に行くものではなくなっていた。佐紀の一番の目的は、おむつを履いてオナニーをすることと、おむつを使ったふりをして、そのまま持ち帰ることだった。家でおむつを使ってオナニーをすれば枚数が減る。かと言って、中学生の自分が自分サイズの紙おむつをドラッグストアで買うのも難しい。旅行で使ったふりをして持ち帰り、オナニー用としておむつをストックしておく作戦なのだ。


「おむつ替えてきたよ~」


明るく家族に行って佐紀は待合所に戻ってきた。ここから目的地までは寄り合いバスのようなものに乗っていく。今回はシアトルの田舎が目的地のようで、オンボロのバンがたくさん止まったバス停で佐紀たちは待っていた。いろんな海外を訪れた高田家にとっては、有名な観光地よりも、田舎のにおいが染みついたような異国の地の方が好みだった。今回はなんと空港から4時間の道のりという。佐紀が高学年になってもおむつを履いて旅行に行くようになったころ、お母さんも自分用のおむつを買ってきた。長距離移動の時は念のために履くようにしている。さすがにお父さんは履いていないようだけど。バス停に並んでいるときに、そっと列を離れてお母さんもお手洗いに行った。おそらくその時おむつを履いてきたのだろう。


バスの中にアジア系と思われるのは佐紀たちだけだった。黒人の方が少し多いように感じたが、おそらくほとんどは地元の人たちだろう。隣に座った人同士フレンドリーに話している人たちが多かった。バスが出発して2時間ほどしたとき、佐紀はやんわりと尿意を感じはじめていた。途中1度だけガソリンスタンドに寄ったが、どれくらい停車しているのかもわからなかったので、3人とも乗車したままにしておいた。バスと呼ばれているおんぼろのバンは、どうやらフリーウェイに入ったようだった。どうやらしばらくは止まりそうにない。


「ねぇお母さん、ちょっとおしっこしたいかも…」


「え、もう出る?」


「たぶん…。座ったまましても大丈夫かな?」


中学生になってからもおむつで旅行してきた佐紀だが、実際におむつにおしっこをした経験は少ない。飛行機でのおちびり程度なら何度かあったが、尿意を感じてそのままおむつに出すのは少々勇気が必要だった。サイズが合っているとはいえ、幼児用の紙おむつだ。


「たぶん大丈夫だと思うけど…。一応ゆっくり出すようにしなさい。お母さんもさっきちょっとだけ出したけど、ゆっくりならたぶん大丈夫だから」


長距離の時はお母さんもおむつを履くことは知っていたが、口に出したのは初めてだったので少し驚いた。お母さんの言葉聞いて少し安心したのか、おしっこを我慢して力の入った体は少しリラックスさせることができた。佐紀は膀胱を緩め、少しずつ少しずつおしっこをおむつの中に解放していった。バスの音にかき消されておしっこが出る音は佐紀自身にも聞こえない。30秒ほどかけてすべてのおしっこを出し切った。ズボンの上から触ってみると、かなり膨らんでいるのがわかる。空港の中で買ったスタバのフラペチーノの全部飲んだのがいけなかったのかもしれない。


「佐紀ちゃん大丈夫だった?」


「うん、たぶん漏れてないと思う」


佐紀はお尻側にも手を入れて湿っていないか確認した。長時間座って少し蒸れてはいたが、おしっこが漏れたわけではなさそうだ。ここまで濡れたおむつは中学生になってからは経験しなかった。あと2時間以上このままなのは不快だと思ったが、少し時間が経つと濡れた感覚はだいぶ減っていた、最近のおむつの性能はすごいらしい。おむつの性能が上がって、赤ちゃんが濡れた感覚を覚えにくく、おむつ離れが遅くなっているという話も聞くが、あながち本当かもしれないと思うのであった。


目的地に着くまでの2時間、半分以上はウトウトしていたが、特に濡れたおむつの不快感を味わうことはなかった。目的地に着いた佐紀は、いの一番にバス停のトイレへ走った。おむつが不快だからではない。


(もう、もう我慢できない!)


佐紀は個室に駆け込むと、ズボンを下ろして膨らんだ紙おむつを上から手でなぞった。


「ひんっ…」


トイレの中には他にも人の気配があった。ここで声を出すわけにはいかない。段々と手を動かすスピードが上がる。数分後には、佐紀の手はおむつの中に突っ込まれていた。お母さんが旅行の直前におむつを買ってくるまで、2週間も佐紀はオナニーをすることができなかった。2週間の間に他の方法でオナニーをすることもできたが、佐紀はそれをすることはなかった。はじめてのオナニーがおむつだったからなのか、佐紀は「おむつでオナニーをしたい」を強く願うようになった。2週間ぶりの快感が佐紀を包む。


今まではきれいなおむつを履いてのオナニーだけだった。今日は、初めて汚れたおむつを上から撫でている。赤ちゃんでもないのにおむつを汚す羞恥心、誰に見られてもいけないという背徳感、そして紙おむつの感触。どれも佐紀にとっては欲情を煽る大事なものだった。佐紀が果てるのは一瞬だった。おむつの中は、おしっことも、愛液ともつかない混合物でいっぱいだった。


ふと正気に戻った佐紀は、ここがシアトルの田舎の小さなバスステーションであることを思い出す。外では先におむつを交換したお母さんと、モーテルの手配をしているお父さんが待っている。急いでサイドを破ったおむつをビニール袋に仕舞った。さすがに持って帰るわけにはいかないので、そのままトイレのごみ箱に失礼しておいた。

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