第4話 【スピンオフ】2039年 あたしの旅 生きてみようと思ってください。先生からのアドバイスですよ!!
……これは最後の遺書です。あたしは今、2039年にこの手紙を書いています。
あたしは、もうすぐ力尽きるかもしれません。それでいいのだと思います。何故なら、あたし達の永遠の敵である人工知能AIの威力は、結局は衰えませんでした。
あたし達人間は無力ですね。それは、初めから分かっていたことですけれど。
ナザリベス……あたしと勇太の子供。
どうですか? 過去に戻り、彼のもとに行って同じ時代を生きてくれとあたし達は願いを掛けた。それが今ではどうなっているのかを、知る術があたしにはありません。
何故なら、あなたを送り出した世界はパラレルワールドなのですから……。
世界の流れを変えることは決してできません。あたしは、それをはるか聖ジャンヌ・ブレアル学園の生徒の時から理解していました。
それを教えてくれたのは――大美和さくら先生でした。
「――新子友花さん。聞きますよ」
部室には、あたしと大美和さくら先生の2人だった。
「はい。大美和さくら先生」
あたしはそう言って、こくりと頭を下げた。
「ふふっ」
先生はいつもの通りニコリと微笑んでくれた。
「先生は言いましたね。新子友花さんに」
「何をでしょうか?」
「フィクションの本質……キャラクターは死なないということをですよ」
「……はい」
あたしは思い出した。それは、先生があたしに出してくれた課題――自分の未来を存分にフィクションしちゃってくださいの時に、大美和さくら先生が仰った言葉だ。
フィクションの本質――
「新子友花さん……。フィクションとは、どういう意味ですか?」
大美和さくら先生は、頬杖をついて隣に座っているあたしを見つめて、そう仰った。
「……虚構とか作り話です」
あたしはそう答えた。
「ふふっ。少し違いますね」
先生は、頬杖から背筋を正しく姿勢良く座り直した。
そして、裾も正しく大美和さくら先生は、あたしに身体を向けて……
「ふふっ」
また微笑んだのでした。
「新子友花さん……先生はこんなことを言ってしまったら、聖人ジャンヌ・ダルクさまもびっくりくりくりしちゃいますけれど……」
大美和さくら先生は、頬に左手を当てて少し照れ笑いを見せてくれた。
「あの……何がでしょう?」
あたしは尋ねた。
「――フランス革命の時から、世界は一変しちゃったっていう話です」
と、大美和さくら先生は淡々と。
「フランス革命の時からですか?」
あたしは、勿論聞き返す。
「ええ……」
そしたら、大美和さくら先生は、また微笑んでくれた。
「――新子友花さん。いいですか? よーく聞いてくださいね」
頬に当てていた左手を先生は膝に下ろして、今度は右手で頬を触って、
「この際、もっと言いましょう。実はイエス・キリストさまの磔刑すらもフィクションなんですよ!」
「フィクション??」
と、あたし。
「ええそうですよ。あれウソなんです。こんなことを、この学園の先生の立場から言ってしまったら辞職ものですね。聖墳墓教会もヴァチカンもびっくりですね。でもね……あれウソなんです。イエスさまの磔刑ってのはね……」
頬に手を当てたまま、ニコニコしている大美和さくら先生だ。
「本当ですか? 大美和さくら先生??」
あたしは、当然尋ねる。
「はい! この話、先生のフィクション。ウソです。 ^_^ 」
「……はにゃ?」
――部室には、あたしと大美和さくら先生。
変な間が、……というか空気がお互いの間に流れていった。そういう感じが……いやそう感じた。
刹那。大美和さくら先生はひとつ咳払いをしてから――
「……新子友花さん。びっくりくりくりですよね? あなたの気持ちを先生には理解できますよ。こんな突飛な話をされて、あなたがびっくりすることをね」
ふふふっと、先生は首を傾げて微笑んで。
「先生??」
あたしはよく分からなかった。
「……新子友花さん」
大美和さくら先生は、そのまま微笑みながらあたしに……。
「いいですか? 先生がフィクションで思う『存分に未来をフィクションしちゃてください!』と課題を出した理由がこれなんです」
「これなの?」
「はい」
と、ニコリとしてそう仰った大美和さくら先生は、立ち上がり――ないなや!
スターッ タッタッタッタッ タッ
と、おもむろに部室の前まで走って行って……そして、あー想像できるぞ。あたしはこの先の展開を……ね。
フィクション ^_^
大美和さくら先生は、ホワイトボードにそう書いたのでした。
「はあ……。はあ……」
先生、息が上がっている。それに今度はびっくりマークじゃなくって、笑顔の顔文字かい……。
「先生が言いたいことはね新子友花さん。はあ……」
大美和さくら先生、すっと少し肩を落として自分の席まで歩きながら、彼女は推定年齢27歳です。書いときましょうか。折角だから……。
(せっかくって何が? 別に書かなくていいんじゃなくて。 作者さま)
(……仰る通りですね)
「要するに、確かめようがないのです。今から2000年前に確かにイエスさまがいらして、そしてユダヤの王と罵られて、ゴルゴダの丘で磔刑に処されたのかもしれません。でも、それは聖書に『そう書かれているから』新子友花さんも、そう信じているだけじゃないでしょうか?」
「……はい。そう思いました」
あたしは少し悩んだけれど、たぶん、大美和さくら先生の仰ったことが正しいんじゃないかと思った。
「はい。なんとなくですけれど、先生の仰りたい意味がなんとなく。……たぶん、大美和さくら先生はこう仰りたいんだと『読んだだけで、何が分かるんじゃいって……』(作者……小説書いといて、これはショックであるぞ)」
「ええ嬉しいです。分かってくれましたね」
大美和さくら先生は、あたしの頭を右手で優しく触って――撫でてくれた。
「新子友花さん。フランス革命の瞬間から、世界はイルミナティに支配されちゃいました」
「イルミナティって……??」
あたしは勿論尋ねる。 本日2回目。
「イルミナティってのはね、わかりやすく言えば聖書の原理主義者の集団です。その本拠地は……アメリカでありCIAとか在日米軍なんかも関係していて……。絶対王政のフランスを民衆が牢獄を襲撃して、フランス革命が始まりましたけれど、あれって聖人ジャンヌ・ダルクさまの火刑までの物語に、似ている点があると思いませんか?」
「似ている点が?」
「はいそうです」
……あたしは、しばし考えた。似ている点? う~んよく分からん。
「ふふ、新子友花さん……」
大美和さくら先生は撫でてくれた手を、そっと自分の膝に置いてから、
「新子友花さんは聖人ジャンヌ・ダルクさまへの信心が深いですから、そう深く考えなくてもいいのですよ」
「はにゃ? 先生……どうしてですか?」
あたしは、首を傾げて尋ねた。
「でもね……新子友花さん。これは知っておいてくださいね」
大美和さくら先生はニコリとしている。変わらず。あたしに……。
「先生?」
「……世界というものはね、わずかに目立っている者を持ち上げて、そして奈落に落とす行為によって、平和を勝ち取ることができる……そういう常套手段という行為で、成り立っているのですよ」
「ーーはあ」
理解できない、あたしです。
ニコリは続いて、今度は大美和さくら先生、左手の人差し指をピンと上に伸ばし……
「例えば、聖人ジャンヌ・ダルクさまは、結局はフランスの王族に利用されて捨てられたのです。こんなことを学園の先生が言うと問題ですけれど。でもね……先生は知っているのです。こういうことを。何故かって? それは聞かないでくださいね。先生も独学でね、聖人ジャンヌ・ダルクさまのことを学んできたのですよ」
と、ニコリとしながら淡々と教えてくれた。
「……は、はい。大美和さくら先生」
あたしは、深く頷いた。
「わずかな権力者とか覇者に対して民衆が蜂起するという行為に、人は正義感とか開放性を抱くのです。その気持ちは多勢という現象で正当化されてしまい、最後にはその多勢が勝ります。イルミナティは知っていたのですよ。絶対的権力よりも多勢が勝つことを。……そういう人類の歴史があるのです」
大美和さくら先生は席から立つと、そのまま窓辺まで歩いて行き窓の外を見つめた。
「大きすぎるウソはバレないと言った、戦争中のヨーロッパの独裁者がいましたっけ?」
「……ア! アドルフ・ヒトラーですね。先生!」
あたしは即答した。
すると、大美和さくら先生は、くるっとあたしの方へと向きを返して、
「……はい正解ですよ!」
そして、やっぱしニコリしてくれた。
――でも、すぐに先生は窓の外を見つめて、
「聖人ジャンヌ・ダルクさまは犠牲にあったのです」
「聖人ジャンヌ・ダルクさまが……」
「それを、この学園の生徒も先生も……私も、いたわるべきなのだと思います。死ぬしかなかったジャンヌさまを、誰よりもこの学園の全員がいたわらなければ……」
大美和さくら先生は目を閉じてしまった。
あたしは――
――
ナザリベス――
あたし達の希望の子供――
あたし達が送り出したパラレルワールドへと送り出した希望。あなたが成長するごとに、彼と共に生きていくことにより……あなたの世界は必ず救われるでしょうね。
羨ましいですよ……ナザリベス。
あなただけが希望なのだから……彼と共に生きるあなただけが。
――悪魔め……、来い。
さあ……これから日本のパラレルワールドに起きる終末を教えよう。ナザリベスと私が教えよう。記録しよう。
私達とは違うかもしれない未来の終末……もしくは異世界のフィクション――今となってはどちらでも構わない。
日本の終末は近いけれど、それでもまだ生き延びる手段は残っている。
その前に教えたい。
これから、日本がどのような終末を生きることになるのかということをだ。パラレルワールド――つまりフィクション――存分なフィクション――物語とはいつもダイナミックであろうと作者は思っている。
【永遠の未成年者集団の終わり】
アドルフ・ヒトラーは預言を残した。東方の日本で、永遠の未成年者集団が生きる国ができると。これは真実である。それを教えよう。
新しい支配的人物とは イルミナティ
新しい貴族階級とは GAFA
新しい中産階級とは 日本政府 大企業
仕える者の集団とは マスコミ マスメディア
無知な大衆とは 一般人
新しい奴隷とは 芸能人 風俗
誰も気が付かない。東方が壮大な実験場であることの前提は何か? 在日米軍と日米安保である。ならば、その主犯はアメリカであることは間違いない。
かつてアドルフ・ヒトラーと対峙したアメリカ軍が、アドルフと結託して日本をイジメていることが全ての事実であるならば、どうしてその事実に抵抗する日本人を虐げるのか? 理解できない。
アドルフの預言には超人の存在がある。人類から超越した新しい進化した生き物――
それは魔女と言われている。
ならば魔女が命令する。
やめなさい。今すぐ。この実験を今すぐにやめなさい!
この最終呪文によって、なにがなんでも!!
――そう遠くない未来。
アメリカ合衆国大統領と日本国内閣総理大臣が、同じ日に暗殺される。たとえ暗殺未遂で終わっても、重傷を負うだろう……。
その首謀者は、中国とロシアとイランである……。
これを回避する呪文を、最終呪文を放つためには……
□□を永遠に封印することだけである。
【スマートシティー計画と首都直下型地震】
トヨタ自動車が静岡県の富士山麓にスマートシティーを建築する計画がある。これは数年後に必ず起こる首都直下型地震による、東京壊滅の後の遷都計画である。首都直下型地震の後に必ずスマートシティーに遷都される。
けれど哀しいかな。その遷都したスマートシティーは南海トラフ震源域であり近くには浜岡原発がある。イルミナティとCIAと米軍関係者は、いずれこの場所に大災害を起こすだろう。それは関東大震災のように起こすだろう。
関東大震災は帝都東京を軍事的に改造するための謀略だったことを、日本人はほとんど知らない。
【実験による超越した科学技術の終わり】
彼らの科学技術は凄まじく発展している。それは鏡から映像を取り出す科学技術、エアコンやトイレなどの赤外線装置から映像を取り出す科学技術、スマホやカメラや何もかも運転免許証まで、自分の居場所をGPSで取り出す科学技術など……
しかし、東方の日本の壮大な実験は終わりをもうすぐ迎える。何故なら。
役に立たない愚かな人工地震よ。魔女は魔女の全てを奪い笑ったアメリカを許さない。原爆の祈りを、魔女は広島で祈った。けれどそれをアメリカは嫌った。それは凄まじい、イジメだった……。
魔女は怒りの頂点である。
魔女の限界は魔女からのメッセージによって広がる。それは誰にも止められない。
今までずっと、テレビ局も何もかも、魔女をバカにして生きてきた。全てのメディアと言っても構わない。その理由と原因は、あなた達が永遠に秘密として隠して生きることになるのだから。
これらマスメディアはテレビ番組で魔女を容疑者扱いして、今でも魔女の自宅を眺めて支配している気になって、聖人ジャンヌ・ダルクの火刑のように、魔女を異端視しては異端審問を望み、そして笑っている。
情けない人類――これバレていないと思っているのだろうけれど、分かりやすく言えば、会社の別室の機械から「壁のお告げ」のごとくイルミナティからの指令がきて、それに従うという会社の構図がある。
もうバレているから――
みんな魔女を馬鹿にした。この事実は魔女が体感した経験では、それを謝って、どうこうなんて到底無理である。魔女の大切な人生の時間を奪って誰もが居直った。
日本が救われる方法は一つある。
それを、新子友花は最後に書こうと思う――
聖人ジャンヌ・ダルクさまは、死んでもいいと思った。
そうすることで、フランスが平和になるのだと信じて死んだ。そう思い信じて。死を受け入れた聖人ジャンヌ・ダルクさまを、私達、聖ジャンヌ・ブレアル学園の生徒も先生も信じている。信じているからこの学園は実在している。
「いいか新子友花よ。我ジャンヌ・ダルクの助言を聞け! お前の未来のために」
実在は信心の先にある。信仰無くして実在は存在し得ない。
「よく覚えておいてくださいね。新子友花さん。つまり、信じる者は救われるという単純な理屈ですね。先生もずっとそうして生きてきましたから……それが幸せであろうとするための、たった一つの処方箋でした。あなたの幸せは、あなたが思うことでしか実在しないのですよ……」
【最終警告と最終預言】
3つの飛行機雲が最終警告を告げている。笹百合愛華と、その妹の笹百合優美は見上げていた。
愛華は知っていた。自分の遺伝子の中にあるコードが、世界を平和にすることができると――同時に自分の遺伝子の中にあるコードで世界が戦争していることを……。
愛華は妹の頭にそっと手を乗せた。妹の優美は姉を見上げる。
「さあ一緒に死のうか?」
「……うん。お姉ちゃん」
私達が死ぬことで、日本も世界も、元の平和に戻ることができるのだから……
「ほら! 新子友花さん? どうしました何、物思いにふけっているのですか?」
「にゃ、先生……生きてる」
「当たり前ですよ」
(だってね、フィクションですから……)
ふふっと……、大美和さくら先生は、あたしの顔を後ろから覗いて、そう仰った。
「どうしました?」
「……いえ」
あたしは少し俯いて、そう返した。
……あたしを見つめる先生。
ふふっ
また微笑んでくれて。
「新子友花さん……。あなたが一度は先生が死んだと思い、そして泣き崩れてしまったことを……。先生ははっきりと覚えていますよ」
大美和さくら先生は、あたしの頭に手を乗せて。
「先生はその時は、CIAの友人から契約の箱の鍵を拝借していた時ですね。先生はこの世界を元に戻したいと、人工知能AIなんてぶっ飛ばして、人類が人類らしい一生を――たとえ短命でもいいんです。そんなことよりも、人類が人類らしく、生きることができる地球を取り返すことができたら、そのお手伝いができるのであるならば、先生はもう……うんじゅっさい生きてきましたからね。もう、それでいいかなって」
いいかなって……
死んでもいいかなって
「そんな! 寂しいこと言わないで大美和さくら先生」
あたしは先生に抱きついた。
あたしはそのまま、先生にしがみついたまま、へしゃぎこんだ。そして、……しばらく、なんだかいたたまれなくなって、……大粒の涙を両眼から。
「アホか! お前。女が女に抱きつくって……それレズだろ」
忍海勇太がいた。ずっと隣に。
「ちょっと勇太さま! レズは言い過ぎなんじゃ」
神殿愛もいた。ずっと隣に。
「レズじゃなきゃなんだ」
「……それは」
2人がシンキングする。
「そりゃ、友花ちゃんの友愛かな~」
東雲夕美もいなくていいのに、隣にいた。
いやいや……
「お前、あたしがこんなに感動ふけっている最中に、何? 物語ぶっ壊すことを言ってくれるかなお前……。あと、あたしのことをお前いうな!」
「お前も、お前言ってるじゃんかーー」
忍海勇太がめずらしく新子友花にツッコんだ。
「んもー!! 勇太」
「んもーー!! じゃなくてお前」
「だから、お前って言うなー!!」
言って欲しいよ……。
んもーー!!
みんな、いたんだ。ここに。
当たり前だぞ。
みんな、あんたも。
お前も。
もう、お前って言うな……
「新子友花さん……。何度も先生は聞きました。んもーー!! と言うあなたの『反骨心』を聞きました。だから、先生は嬉しいですよ」
「嬉しいですか先生? 何がですか??」
反骨心――?
「どうやら新子友花さん……。さっそく、契約の箱の鍵で送り出しちゃたんですね。あなたの勇太との子供を……パラレルワールドにタイムマシンで。さっそく使っちゃいましたか」
大美和さくら先生は、あたしの泣きべそな顔を見つめている。
「……まあ、それでいいのです。それで世界をまあ、パラレルな私達の世界が救われるのでしたら」
「先生? あたし??」
「でも、この世界は……どうでしょうね?」
――大美和さくら先生は、さっきからずっと、あたしの傍に立っている。
あたしは、その姿を見上げている。
聖人ジャンヌ・ダルクさまの像に祈る、かつてのあたしが今ここにいる――
ふふっ!
「新子友花さん……あなた勇太君との間に生まれたその子供、ナザリベスは。きっと……きっとパラレルワールドでしっかりと生きていくでしょう。漫画家の『さくらももこ』さんも、同じくパラレルワールドで生きていくことでしょう。子供の頃からよ~く見ていましたから……そうあって願いたいです」
大美和さくら先生は、言いたかったのだと思う。
「それは、この世界からすれば幻想なのかもしれません。でも、でもね。パラレルワールドでは、あなた達が送り出したナザリベスの願いと共に、きっとその世界では、新しいイルミナティもCIAの脅威もない素敵な世界があることでしょう。契約の箱の鍵は、私達全てに福音をもたらしてくれる神のパワーそのものですから……羨ましいですね」
「まあ……私達の世界は、このまま滅んでいくことでしょう。それはイルミナティにとっては、新世界秩序の新しい世界になることなのかもしれません。けれど、先生はそんな無慈悲な新世界をバカにしたいです」
「バカに?」
あたしはとっさに尋ねる。
「ふふっ。はいな!」
大美和さくら先生、なんだか楽しそうに……。
「だって、私達を助けてくれないユダヤの王達を、どうして私達が寄り添わなければいけないのでしょうか? 意味ないです。私事で言いましょう。どこかに書きました[ドラゴンバスター]の話です」
(この辺りの詳しい内容は、今後の『んもー!! 新子友花はいつも元気ですって!!』を読んでください)
「先生言いましたね。母親のカレンダーのエピソードです。勝手に見て言いふらして、母親は何とも悪いとも思っていない。そんな母親を患う娘である私は不幸でした。それを私は田舎に帰って、なんとか記憶を、思い出を消化して、新しい田舎の思い出へと展開させる努力をしてきました」
「はい……聞きました。大美和さくら先生」
あたしは返事した。
「今更こんなことを、2039年になってまで、覚えていて言うことにも抵抗を感じますけれど。どこかで言いましたっけ? 新子友花さんに。なかなか忘れられるものじゃないって……。母親は私に言いました。あんたのためにできる限りのことをしてと……ですが、それはウソです。その程度の母親でした。何故なら、娘がこんなにトラウマになってしまって、その原因を母親に求めた時、母親はチンプンカンプンでした」
「ああ私の母はこの程度だった。ああ父もそうだった。そんな両親と決別して、新しい自分の人生を生きていこうと……それが、先生が田舎にしつこく通った本当の動機でした。先生がしつこく田舎に通ったのは、もうこの一年間で10回になるくらいです。今後の自分の人生に両親はいりません。いや……本来はそうあるべき人生だったのだろうと言いましょう。小鳥も野生の獣も巣立っていくべきなのであり、それは自然の本来ある習性ですから」
「それが、1人の人間が生きていくことだと思いますし……先生も、新子友花さんと忍海勇太くんのように寄り添うことができれば、そう羨望しちゃいますね! 人類は、どうしてこうも難しい習性――『言い争うこと、分かち合う気持ち』を選んだのでしょうかね?」
「大美和さくら先生……。あの…………はい」
あたしは意味がよく理解できなかった。そう返すことしかできなかった。
すると、先生は――
「まあ……その習性とはね、国語教師の私から考えれば言葉の持つ特性です。聖書は言葉で布教しています。2000年前のイエスさまなんて、それよりも汝の隣人を愛そうじゃありませんか!! 新しい人生を……新子友花さんと忍海勇太くんに。終末のこの世界で生きていく、あなた達に幸あらんことを……」
生きていれば良いことありますからね。
生きてみようと思ってください。先生からのアドバイスですよ!! ^_^
「いいですか? 新子友花さん。よく聞いてください……」
2039年のイルミナティが犯した荒廃した地球。その丘の――かつての学園の上に先生はスッと姿勢よく立ち、見つめるは朝焼けの東の空を――
明けない夜明けはない。 終わらない闇夜もない。
「先生は、私の人生のために田舎に帰って、そして多くを学びました。もう77万くらいに旅費を掛けて、自分なりに解答を見つけようと努力してきて、見つけました。こんな2039年の終末を生きて……どうですか? 怖かったですか。当然ですよね。みんな死んでしまって……。でもね、先生は自分がここまで生きてきた価値が、この世界にあったことを確信してきましたよ。何故なら、不思議な縁、懐かしい親友との再会とか。[ドラゴンバスター]もそうですね。このゲームが無かったら、田舎なんてこれっぽっちも思わなかったことでしょう。それはそれで意味があったエピソード――人生だったのだと思います」
好きだったのでしょう。
「この言葉――『あたらしい文芸』に書いていましたね。新子友花さん! その気持ちを、これからも大切にして生きませんか? あなたが契約の箱の鍵を使って、それでいいと誓って……そして、それを使った。ナザリベスを送った。ナザリベス――パラレルワールドの世界を、あなたは救うためにそう願って」
「でも、言わせてください。新子友花さん。――そのパラレルワールドって、ぶっちゃけ本当に別世界なのでしょうかね? 言いましたね。確かめる術はありませんと――」
確かめられないことをいいことに、今日もイルミナティは闊歩ですね♡
バカバカしいですけれど。
――これは魔女として生きた、あたしの本当の遺書です。
この後にあたしは死ぬでしょう。それは仕方がありません。この世界を生きてきて、でも世界を救うこともできないあたし……それだけじゃなく。
あたしがこの世界を、不幸にしてしまっているという事実を知ってしまって、だから、もうこの世界には生きたくなくなりました。
みんな他界しましたしね。このくらいが、ちょうど良い死際でしょうね。
あたしは救えなかった。世界をです。
でも、ナザリベスが生きる世界は、今もこの宇宙のどこかで生きていくのでしょう。あたしはそれを幸せに思い、願います。
さようなら 魔女は絶滅するしかないのですから――
「あ……あ……。なあ、新子友花よ」
どこからともなく声が聞こえてきた。
「はにゃ?」
あたしはその言葉に気が付いて、辺りをキョロキョロと見渡した。
夕暮れ――聖ジャンヌ・ブレアル教会の中に跪いて、祈り続けている新子友花。
「新子友花よ……」
その声は正面のジャンヌ・ダルクの像から聞こえていた。
「あの。毎日祈ってくれることはありがたいと思っているのだが、その……魔女の一節を、このジャンヌに跪いて祈る行為は、その、今の聖人としてのジャンヌとは矛盾するんだがな……」
「……はあ、ジャンヌさま?」
別に驚かなかった。いつものことだから。あたしは普通に返事をした。
(新子友花……。作者からいいかな? ジャンヌ・ダルクさまは魔女じゃないって生涯言いたかったのだけれど、それも時代の流れで言えなかった。それを今の時代に、君が彼女を魔女としてお祈りすることは……だめだよね)
「新子友花よ……何かあったのか? ああ……我には分かる。あれだな、大美和さくらからの『フィクション』の課題か?」
「……はい。なんか、あたしには難しい課題でして」
あたしは俯いた。聖人ジャンヌ・ダルクさまの像に。
――新子友花を見つめるジャンヌさまの像
「新子友花よ――我ジャンヌは言ったと思うけれど、正確には書いたと言おうか……。あたらしい文芸の一節だ。『今を生きようぞ!!』この言葉は過去でも未来でもない、新子友花の現在のためのアドバイスである」
「――今、ですか?」
像を見上げる、あたし。
「……まあ、悩み多き年頃だから、悩むことは当然のことだろうと思う。でもな、新子友花よ。戦場で死に物狂いで戦い異端審問で蔑まれて、最後に火刑で世を去った19歳の我ジャンヌ・ダルクの人生に……というかストーリーに比べたら、ひたすら明るい未来を書くということでいいんじゃないのか? お前は、我ジャンヌに浸りすぎなのかもしれない。そう思うぞ」
「……はい! 聖人ジャンヌ・ダルクさま。分かりました。あたし改心します!」
「いやいや……お前って、何も悪いことして無いじゃん!! 今日は聞き分けが良すぎるぞ。何かあったのか??」
はにゃ?? と新子友花。
新子友花よ――
ところで、お前はそんなにも悩むくらいの失態を犯したのか?
お前、そう思う根拠は?
何もないだろう お前。 新子友花、お前よ。
だから、お前、お前、お前。
人生はフィクションなんだよ……
お前
――聖人ジャンヌ・ダルクさま。やっぱし、あたしのことを最後の最後まで『お前』って仰るのですね。なんだか。とほほ……ですよ。
なんだかね、あたしこう思います。
んもー!!
ところで、作者よ[ドラゴンバスター]って、ぶっちゃけ好きだったのだろ??
そして、エンディングの無い無限アーケードゲームに、なんとかエンディングを残したかった。これが作者の本音なんだろう。ジャンヌ・ダルクはそう感じるぞ。
わざわざ、ドラゴンを倒しに行かなくてもいいのにねえと思い、でもそれじゃゲームにならないじゃんって思い……だからせめて、このスピンオフに田舎の思い出を重ねることで、終わらせたかった。
作者の7年間の[ドラゴンバスター]は、ようやくクリアーできたな。それで良いと、我聖人ジャンヌ・ダルクが言おうぞ!!
何故なら――
この物語は、聖書の内容を参考にしたフィクションです。
登場する人物・団体・名称等はすべて架空であり、実在のものとはまったく関係ありません。
また、[ ]の内容は引用です。
終わり
【スピンオフ】んもー!! 新子友花はいつも元気ですって!! 2039年 あたしの旅 橙ともん @daidaitomon
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