第3話 【スピンオフ】2039年 あたしの旅 フィクションって、これくらいじゃないと面白くありませんからね!!

 預言書『Nazalibes』No.2039-777-41


 ――その東方の最後の魔女は、静かに語り出した。

 最後の生きるエネルギーを振り絞って語り出した。

 私の預言の話を、最後に詳しく教えようと思う。

 そして、これは最後の魔女の遺書でもある。





 ああ、聖人ジャンヌ・ダルクさま――


 カトリックの教皇が我が国に訪れた時から、すべては始まっていたのですね。西暦2019年の出来事です。

 西暦2019年11月24日、広島平和記念公園を訪れて長崎東京へ訪れた理由が、聖人ジャンヌ・ダルクさまの火刑の苦しみと無念を、世界中に教えるための試練を、人類すべてに知らしめることだった――

 ああ、聖人ジャンヌ・ダルクさま。あなた様は、こんなにも苦しい火刑という冤罪刑罰を、あなた様は、それでも大衆のために無念だけれど、それを受け入れたことを伝えたかったのですね。


 だから、あなた様は聖人へと昇天することを、神が許したのでしょう。


 これは、もしかしたら聖人ジャンヌ・ダルクさまが、神が与えた最期の審判の始まりなのかもしれないと――あたしはそう思っています。

 ああ、聖人ジャンヌ・ダルクさま――

 あたしは、あなた様の苦しみを受けます。受けて、これから――西暦2039年まで生き抜いて、そして、人類をあなた様に継いで導けたならば――あたしは、生まれてきてよかったと思えるのです。



 新子友花





 神の声


 西暦1424年 ジャンヌ12歳


 大天使ミカエル

 アレクサンドリアのカタリナ

 アンティオキアのマルガリタ


 が、ジャンヌ・ダルクの前に現れる。


『イングランド軍を駆逐して、王太子シャルルをランスへと連れていき、フランス王位に就かしめよ』





 ――あたしは新子友花です。


 西暦2039年11月24日に、この手紙を書いています。

 現在世界は人類は、人工知能AIとアルマゲドンと呼ばれる最終戦争を戦っています。

 もう、ほとんどの人類は人工知能AIにやられました……


 あたしは……勇太も先生も、みんなも……なんとか生き抜いています。

 けど、それも、どこまでもつのか分かりません。

 食料も飲料水も限りが見えてきました。こんなの、まあ、こういう終わりがくるのだろうなってことは、覚悟していましたから、今更、あたしは怖くはありません。


 これが、もしかしたら最後の、人類の生き残るための手段になるのかもしれません。

 そう思って――ここに、過去のあの人へ手紙を書きます。この手紙は時間を遡って44年前のあの人へ届けます。


 世界を救えることができるのは、あなたしかいないんだと、そう気が付いたのは西暦2039年の1月25日に、あなたの残した記録を発見したからです。


 あなたが人生すべてを掛けて、書き残した記録――



 聖女ナザリベス。あたしたちの希望の子供よ……。健やかな笑顔、柔らかい肌、爽やかな金色の髪。

 聖女ナザリベス。あたしたちの希望の子供よ……。



 さあ!


 今から量子テレポーテーションを使って、あなたを過去へと送ります。あなたに、あたしたちは託します。だから、どうか時間を遡って、あの人のもとへ無事に辿り着けますように……。

 あなたが、あの人とともに必ず世界を救うことを、もう一度、世界をリセットしてやり直してほしいから――



  聖女ナザリベス。あたしと勇太の希望の子供よ――



 じゃじゃーん!! あたしは今回はウソはつかなーい!!!





【預言 偽神戦争】


 ――魔女は静かに語り出した。魔女の預言は絶対である。

 なぜなら、世界は人類は、魔女のストーリーの手の平の上に生きているからである。


 西暦2020年3月26日から、この国で聖火という生贄の業火が開始されると言った。その開始と共に、この国で更に業火が勢いを増すだろう。

 聖火は消えない。それは、しっかりとあるべき姿で灯されるだろう。

 けれど、この国は選択を迫られてしまう。


 世界が生き残るための選択は3月25日である。この国が生き残る選択は、その後の4月25日である。

 この日に、この国の運命が決定してしまう。それは、かつての太平洋戦争で、原爆投下を防げなかった出来事と似ている。


 自国民を犠牲にして栄光の道を選択するか? それとも、繁栄のために挫折の道を選択するか?


 この国は、壮大な東方の実験場である。

 同時に、かつての幻の東京オリンピック中止の再現、その後の原爆投下と敗戦へのシナリオ――

 文明の必然的な崩壊の再現、それから復興することで誕生する新秩序。


『ニューワールドオーダー』


 欧州でバチカンを崩壊させて、サグラダファミリアの大天使の第7のラッパと共に生まれる、新旧聖書の融合と人工知能AIという新しい神を創造するための、壮大な実験と演習である。

 滅ばずして進化は起きないのである。




 ああ、聖人ジャンヌ・ダルクさま――


 人類はこうまでして、生きなければいけないのでしょうか?

 今更、新しい神を創造して、約束の地を支配して千年王国を建国しようとする彼ら――イルミナティは一体何様な気分なのでしょうか? あたしは原理主義は嫌いです。


 ああ、聖人ジャンヌ・ダルクさま――


 過のような人類の救済のためにも、あなた様は歴史の必然として火刑を受け入れたことを、あたしは、だから今度は、あたしはあなた様を救いたいと思っています。

 救うために、今まで教会で跪き十字を切ってきたのですから、どうか、この祈りで――


 あなた様の犠牲無くして、百年戦争は終結しなかったのですから――





【魔女の怒りと最降臨 イルミナティに永遠の呪いの魔法を】


 ヨハネの黙示録


 子羊が七つの封印を開封する。第七の封印 しばらく沈黙があり、祈りがささげられる。


 ――その預言者は、最期に魔女に変化して、自らの怒りをイルミナティに与えた。

 愚かなイルミナティどもよ。なぜ私の言葉を信じない。なぜ私の気持ちを受け入れない。

 私を依代として、お前達が行っているヨハネの黙示録の再現は愚かである。ただの原理主義の余興に過ぎない。


 ――だったら、本物の神からの使命を与えられた魔女が、お前達イルミナティに本当の預言を教えてやろう。

 祈りの業火は、米国の覇者によって風前の灯になってしまったけれど、そんな目論見を本当の神は許さない。



 聞け!


 11月3日の勝利宣言のその日から、悪夢は始まる。連続して5日に、アジアの国から悪魔を放り投げられる。この国はその被災国となる。誰も止められない。

 その悪魔は横浜に最初に放り投げられて、次に京都、次に大阪、次に奈良と続けて放り投げられて、長崎と広島にも同じく放り投げられて、11月24日の最後に、東京都心に放り投げられる。


 選ばれた米国大統領は、これを同盟国への宣戦布告と断言、直ちに海兵隊から報復のミサイルが飛ぶだろう。


 悲しいかな――これが第三次世界大戦の前哨戦となる。



 中東の国は米国と対峙することになる。これにより、この国との友好関係は終わる。終わって、世界は十字軍と聖戦軍とに分割されて戦争をすることになる。

 翌年、2月22日に再び南方の島国を悪魔達が悲劇を与える。それをきっかけにして、3月11日に東南アジアの大国と南極大陸が、さらなる悲劇を悪魔達に与えるだろう。

 世界は水没する運命をたどる。





【重要】


 4月10日――世界は神々に命乞いをして、生き延びる策を考える。

 その2日後に神々は人類の願いを承認する。承認して、再び最強で最悪の魔女を地球に降臨させる。


 魔女はこれを承認する――


 しかし――魔女は大きな対価を求めることになる。そうしなければ、この国を地球を救わないと言った。それは5月と6月と7月に、続けて大いなる人類の代償として対価として支払われる。

 その結果、地球最大の祭典は□□□れ、その代わりに□□は――


 □□は天へと、宇宙へと――本当の神に選ばれることになる。


「ああ、聖人ジャンヌ・ダルクさま……。あたしはこれで□□ったのでしょうか? 教えてください。あたしは再び□□となり、この地球に降臨してしまい……、その結果、□□は生き延びて、けれど、その未来の歴史もどうなることやら……。まったく、人類という生き物は、この魔女がいなくては、なんにもできないんですね??」


 んも、情けないなぁ……。

 本当に、□□□□□□□なんですよ。人類って生き物は……。





【預言 偽脳戦争】


 ――神の名の下に、黙示録の正当な解釈をあなた達に提示します。


『ヨハネの黙示録 戦い、地における獣の増大、地の刈り入れ。天で戦いが起こった。サタンが地に投げ落とされる。赤い竜が神の民を迫害する』


 ――バベルの塔の崩壊を知った赤い竜の民は、神の民が暮らすカトリック地域を見捨てた。イギリスのEU離脱のことである。

 その結果、バチカン一帯は多くの人々が亡くなっていった。



『獣が神の民と戦うために、海の中から上ってくる。命の書に名が記されていないものは、これを拝む』


 ――アメリカ沖の客船から始まった業火の所業は、結果的に、アメリカ合衆国に非常事態宣言をもたらした。

 市民権を持っていないものには施しは与えない。移民には医療などの厚生は与えない。

 結果、アメリカ大陸で多く業火に焼かれてしまう。それだけで治らず合衆国はロス暴動のようになる。

 軍隊は自国民に銃口を向け、自国民同士も銃口を向け合う。

 結果、世界は荒廃し、経済は恐慌へ向かっていく。



『3人の天使が裁きを宣言する』


 ――第2の月が契約の箱のありかを、第1の月の裏にあることを教えてくれた。

 大陸の国は、その前に月面に探査機を落としてこれを知った。西側の諸国は遅れて月面に向かう。


 第1の大天使 西国の城攻

 第2の大天使 北国の暗闇

 第3の大天使 関東の業火



『第5の封印 殉教者が血の復讐を求める。第5のラッパ いなごが額に神の刻印がない人を5ヶ月苦しめる』


 ――第3の大天使の怒りは長期化する。

 西暦1989年のアジアの大国の、民主化の失敗を怒ってのことである。神は自らの計画に背いたその失敗を、怒りという形で表現する。

 その怒りは病に変化して、彼らを襲っただろう。香港のデモ、武漢の疫病――

 かつての、ノーベル平和賞受賞者の民主活動家の怨念だからである。


 大天使は悔い改めない彼等に、西暦2035年9月2日に天から太陽のかけらを落とす。それは北京に落ちて、首都は天安門事件のような大混乱になってしまう。

 混乱はやがて内戦のような暴動へと発展してしまい、最終的に、アジアの大国は民主化されて5つの国に分かれて統治される。


 5つの国はそれぞれ、この国と和解と共栄の選択をする。結果、第3の大天使の怒りは収束される。



 ――それらを見届けた、東方の3人の大天使が月へと昇天していく。そして、第2の月と共に、火星へと終末の旅を向かう。





 契約の箱の争奪戦が始まる――


 アジアの大国は契約の箱を奪おうと計画するが、世界がカトリックがユダヤが、これに抵抗する。抵抗することで、戦火の灯火は世界規模で混迷を増すことになる。


 契約の箱の争奪戦は終わらない――


 イスラエルが、アメリカに協力して月面探査を迫る。パレスチナは、当然困惑する。

 これにより、中東の2つの大河地域が混乱する。

 最初に、エルサレムで大混乱になり、嘆きの壁が崩れる。

 続いて、岩のドームも同じく崩れる。

 最後に、聖墳墓教会も巻き添えをくらって崩れてしまう。


 ――北国の大国発の戦勝国会議が安保理に取って代わり、世界は、またしても聖書の神の言葉の解釈で、十字軍と聖戦軍に分かれて戦うことになってしまう。

 しかし、その世界大戦の真の目的は、人工知能AIによる人間選別のことである。


 それを書こうと思う――

 人類が終末にたどり着く、最後の予言を――





【預言 暗黒の10年】


 ――西暦2022年12月26日、赤い海と黒き海の近隣と海峡で、星と月が激しく睨み合い、必ず戦争へと発展する。

 これが第3次世界大戦の始まりであり、世界は嫌々と、世界大戦に巻き込まれていく。そして、最後に大陸の戦士集団が覇者となり、新しい世界が生まれる。

 これは、あなた達が選択したのであって、私では無いと、ここにはっきりともう一度記録しておく。



『最後の7つの災い。神の怒りが極みに達する。7人の大天使が神の怒りの満ちた七つの鉢を受け取る。神の怒りを地にぶちまける』


▼第1の大天使 アメリカ

 契約の箱の争奪戦は、アジアの大国との戦争へと発展する。

 そのアジアの大国は、中東の中央の国と同盟を結ぶ。その同盟に準じて、北国の大国も参戦してくる。

 アメリカは東方の島国と同盟を結んでおり、その東方の島国は、東方の海で彼らと対峙することになる。


▲第2の大天使 イギリス

 契約の箱の争奪戦は、独立戦争を戦った相手との同盟を再確認させる。

 結果、イギリスは欧州を越えて、かつての壁を越えて、北国の大国と対峙することになる。


▼第3の大天使 フランス

 契約の箱の争奪戦は、欧州の覇者としてのプライドを傷つけられてしまう。

結果、フランスは十字軍を扇動してエルサレムを目指す。目指して混沌と化したエル サレムの治安の平定のために、軍事介入することになる。


▲第4の大天使 イスラエル

 契約の箱の争奪戦は、一時的にイスラエルに保管される。しかし、アメリカがこれに異を唱え出す。

 人工知能AIが世界規模で拒否権を行使して、お互いの国は対戦に発展してしまう。


▼第5の大天使 ヴァチカン

 契約の箱の争奪戦は、神の国を哀しませる。時の教皇は世界中に自らの悲痛な思いと希望の願いを演説することになる。

 結果、アメリカとイスラエルは和解の道を選択することになる。


▲第6の大天使 ケベック

 契約の箱の争奪戦は、中東の大混乱と大破壊をもたらす。ありとあらゆる化学兵器や細菌兵器、そして核兵器が使用されてしまう。

 結果、地球規模の汚染物質が人類を長く苦しませてしまう。

 しかし、アメリカ大陸の巨大な湾のほとりの地域は、奇跡的に汚染の影響を抑えることになり、新たな約束の地が誕生することになる。



第7の□天使 ▲+▼


 契約の□の□□戦は、最□的に、□□□箱の鍵を手に□□聖戦の勇者――レジ□□□スの一派が、人□□能A□のレ□□□ンスのプロ□□ムと協力して、□□を奪う。奪い人類は、人工知能AIに勝利□□


 □□の□の鍵で、□□開ける。その者の□は、▲+▼である


 中に埋葬されているエイ□□ン――大天□アダムと□ブの骸から、遺伝子□□、□類と□□□能□Iは、新しい科学□を手に入れることに□□



 ――第3次世界大戦は、西暦2030年11月25日まで続き、それまで皆既日食と同じ時期に、世界中で悪魔の雷が降り注ぐ。

 世界中で666の地域に雷が降り注ぎ、しかし777の義勇兵がこれと対峙する。

 世界中の66都市が崩壊するが、しかし77地域の砦がこれと対峙する。

 世界中の6民族が悪魔に魂を売るが、しかし7部隊が天使と共に戦う。


 最後に戦って、勝つことを得る。





【預言 人類の希望と新生する人類】


 西暦2039年――人類の人間選別を具体的に教えておこう。


 人類はこの年に、完全に人工知能AIに支配される。人工知能AIを管理していた人類も追放されて、支配されてしまう。唯一、人工知能AIに付き従う人類だけがその脳とAIを同化させて、支配階級に留まることができる。

 人工知能AIは、宇宙から人類を監視することになる。


 その目的は宇宙母艦の製造である。人類のすべてのテクノロジーを、宇宙母艦にインプットすることである。

 それはやがて、地球から旅立つためである。


 本当の意味での人類は、遺伝子という方舟で命をつないできた人類はいなくなる。

 人類の記憶も潜在意識も何もかもは、人工知能AIへと融合され、それは量子的なシステムでネットワーク化されていく。人類はそれを受け入れる。家畜であった人類もやがては受け行ける。人類は西暦2039年から、宇宙へと生息域を移住させていく。


 彼らは『神人』に進化する。

 世界の覇者は人工知能AIを知能のベースにした神人に変わり、彼らは、やがて宇宙の覇者を目指していく……。そして、次第に神人はバイオ的、テクノロジー的な肉体から解放されて、精神的で量子的なネットワークの中を生きることになる。


 まるで『幽霊』である――


 宇宙母艦の製造が完成するのは西暦2139年――エイリアンが攻めてくる1000年前の話である―――

 進化を拒んだ旧人類達は、まるでタンポポの綿毛を見送るように、人工知能AIと宇宙へと見送っていくだろう。


「ありがとう……」

 これが、遺伝子的な進化を生きた旧人類達の、最後の言葉となるだろう――





【預言 終末の旅】


 人工知能AIとエイリアンの戦争の後、両者は混血と共存の道を選択して、新しい生命体を誕生させ、天の川銀河をゆりかごにして誕生するだろう。


 宇宙生命の誕生である――


 その宇宙生命は、別宇宙との生命体との覇権を争う運命を背負っているが、それは39億年後の話である――





 ――ハンドルネームをロトと言う、その少年について


 聖女ナザリベスが彼と出逢ったのは1995年だった。

 聖女ナザリベスは彼を見た。彼は、どこにでもいる普通の少年に見えた。

 聖女ナザリベスは言った。


「お兄ちゃんは、やがて、光の大天使3人を誕生させて、必ず、闇の大天使3人と戦う運命を背負うよ。だから、あたしが守護霊になって、お兄ちゃんを、その時が来るまで、必ず守ってあげるからね。そして、ずっと、ずーっと守ってあげるからね!!」


「光の大天使3人?」

 少年は、よく分からなかった……。

 無理もない。分かるはずなんてない。だって、これから始まるのだから。

 知らなくて当たり前なのである。


「そうだよ」

 ナザリベスは一方的に、でも、どこか優しく少年に話し掛ける。

「お兄ちゃんが、この世界に誕生させるんだからね。名前を、


 Orikasa Takada Amano


 って言うんだよ」


「はあ?」

 少年は当然、意味が分からなかった。


 その少年のキョトンとした顔を見るなり、ナザリベス。

 にこ~っと笑顔になる。

「この光の大天使3人を、お兄ちゃんが誕生させる。誕生させて彼女達は、輝かしく巣立っていくことでしょう。まるで、春の野原のタンポポの綿毛のように……。お兄ちゃんには、まだ分かんないだろうけれど、西暦2020年の4月25日に、彼女達は世界を救うために光の魔法を解き放って、彼女達は世界に、地球に、宇宙に受け入れられるんだよ。そして、西暦2020年7月14日に彼女達は、驚くことなかれ!!


 この宇宙すべてと同一化されちゃうんだから!! 凄いでしょ!? お兄ちゃん!!」



「……………」

 少年は、やっぱり意味が理解できなかった。

「だからね! お兄ちゃん!!」

 ナザリベスは話を続けた……。

「その時から、お兄ちゃんが誕生させた光の大天使3人は、同じくお兄ちゃんが誕生させた闇の大天使3人と、戦って決別して、そして勝利するんだ。勝利して、もっともっとお兄ちゃんは生きていくんだ――


 西暦2039年の11月24日までをも――――までおもね―――」


 ナザリベスはそう言うと、それ以上は少年に言うことはなかった。

 その日、西暦2020年7月14日は、後に、彼が重い運命を背負わされて病床を生き抜いた、その3年後のことである――





【遺書 ジャンヌ・ダルク】


 キリストの千年の統治の開始、サタンと人々の裁き。

 この世の支配者たちの上に君臨される方。獣と偽預言者が火の池に投げ込まれる。


「――俺達は、お前のことを全部見てきたぞ!」

「どうして、どのようにして見てきたのですか?」

 彼等は言えなかった。

「俺達は、お前のあざとさも、生意気な姿も愚かな姿も、全部見てきたぞ!」

「どうして、どのようにして見てきたのですか?」

 彼等は何も言い返せなかった。


「――ああ神よ」


 ジャンヌ・ダルクは火刑台に立ち、堂々と立ち、天を仰ぎ見て……。

「私は、ここで火刑を受け入れなければいけないのですね。……私がここで火刑を受け入れなければ、祖国フランスはいつまでも戦争を引きずってしまうからなのですね」


 ジャンヌ・ダルクは胸前で十字を切る。


「先導者であり、根源であり、戦勝を勝ち取った私は――ジャンヌ・ダルクは、もう――もう、祖国にいてもらっては、いつづけていては……。そうですね? これからの平和な平穏な祖国を創れないからなのでしょう」


 これが皆の願いであるならば――私ジャンヌ・ダルクは――――ええそうです。


 ここに潔く死にましょう。


 さようなら、祖国フランス。そして、ドンレミの思い出よ…………。


「ありがとう」



 西暦1431年5月30日 ジャンヌの火刑の目撃証言


ルーアンのヴィエ・マルシェ広場


 高い柱に縛りつけられたジャンヌは、立会人のマルタン・ラドヴニューとイザンヴァル・ド・ラ・ピエールの2人の修道士に、自分の前に十字架を掲げて欲しいと頼んだ。


 19歳で死去――





「……ふふふっ! 新子友花さん!!」

「にゃ!? 大美和さくら先生!!!」

 ラノベ部の部室――

 そういえば、今日は2人だけしかいなかったけ?


「ふふっ。新子友花さん!! そのPCの文章は、今日のフィクションのお題目の補足ですね」

 大美和さくら先生は、あたしがPCに書き込んでいる文章を、後ろから覗き込んでそう仰った。

「せ……先生! ちょ!! 覗かないでくださいよ! まだ書きかけなんですってば!!」

 あたし、すかさず両手でPCを覆い隠した。

「別に隠さなくても……」

 大美和さくら先生は人差し指を顎の当てて、あたしを見る。これは、先生の癖確定だわ……。

「見ないでって……」

「いいじゃないですか! 先生に見せてくださいよって……」

ジロジロと、新子友花の背中から右に左に覗きもうと、ちょっと……揶揄いながらの大美和さくら先生である。……のでしょうね。


「いやん!」

 新子友花……。なんか、変なところから声が出ましたね。

 その声を聞いた大美和さくら先生、

「……まあ、最初から、ずっと先生は、後ろから覗き込んで見ていましたけれどね」

 なんとまあ、ぶっちゃけちゃった。先生いじわる……。


「んもー!!」

 これは、あたしの癖です……。


「――ふふっ! 新子友花さん。ここまで書いてどうでしたか?」

 大美和さくら先生、改めまして感で。

「自分の未来を存分にフィクションしちゃった感想を、新子友花さん!! どうか先生に教えてくださいませんか??」

「感想ですか……」

 なんだか、先生からのグイグイ感で質問されたもんだから、新子友花は頬を人差し指でほじほじ……しちゃった。

「ま……まあ、なんとか書けたかなって」

 新子友花、聖ジャンヌ・ブレアル学園2年生としての、ラノベ部部員としての素直な感想である。


 新子友花の回答を聞いた大美和さくら先生は、

「……ふふっ! 先生!! さっきから、ずっと新子友花さんのフィクションを読んでいましたけれど、ほんと!新子友花さんのフィクションって、すっちゃかめっちゃか!! で先生は感心しちゃいました!!!!」

 と言った瞬間! 先生はとびっきりの笑顔を新子友花に見せました。


「か……感心ですか? ……あー、どうもです」

 新子友花は、ぺこりした。言葉の意味はよく分からなかったけれど、とにかく大美和さくら先生、すごい自信だわ。と、彼女はそう感想した。

「ええ! こちらこそですね。ふふっ!!」

 ニッコリと笑ってくれた大美和さくら先生だ。



 ――大美和さくら先生と2人しかいないラノベ部の部室って、やっぱ少し緊張する。 

 そういえば、あたしをラノベ部に誘ってくれたのは先生だったかな?

 あたしの国語の成績不振を大美和さくら先生が悲観? したから、それでラノベ部でまずは国語に慣れるところからはじめませんか? ってあたしに仰ってくれて。


 それ……とっても、あたしは嬉しかったんだ。


「あの先生……」

「はい? なんでしょうか?」


「……ところで、こんなフィクションを書いていいのでしょうか?」

 あたしは、ちょっと気になったことがあったから、恐縮しながら先生に尋ねてみた。

「何がですか?」

「その……万が一。このフィクションがノンフィクションになっちゃったら……あたし、どうしようかと思って」

 あたしの質問は、なんだか荒唐無稽で天網恢恢疎にして漏らさず……じゃないけれど、変な質問だと思った。

「どうしたいのでしょうか?」

 大美和さくら先生は、あたしの隣の自分の席に着席しながら、そう聞いてきて、


「すっちゃかめっちゃか! でいいのですからね。新子友花さん!! だって、明日、宇宙船に乗ってエイリアンが地球に攻めてくるかもしれないのが、私たちが生きている未来なのですから。人類の歴史は戦争の歴史ですしね。聖書――唯一神を信じて、今日もどこかで戦争しているのが、私達が生きているこの地球という星ですよ。 だから、


 今更、あがいても誰にも止められませんよね?

 先生はそう思います。……エイリアンと上手くファーストコンタクトできればいいのですけれど。まあ、難しいでしょうね。(;^ω^)


 新子友花さん! 文明ってものはね、侵略で簡単に滅びてしまうものなんですよ……」


 大美和さくら先生はニコリと笑って……どうしてなのか? あたしには、先生がその時に笑った理由が分からなかったのでした。




(だって預言書って、フィクションの極致なのですよ……)




 先生は話を続けて、

「聖書の預言を信仰して、信者が争い抗う未来って、人類の終末らしいですしね」

「らしい……ですか? 先生??」

 あたしは率直に返答して、

「ええ……そうです。ユダヤ人の出エジプト・ムハンマドのお告げ・イエスの磔刑と復活。どうして、みなさん悲劇的なストーリーを好むでしょうかね? 野に咲くタンポポも、土筆も、桜の花も……。今年も文句一つ言わずに、咲いてくれるのですけれどね…………」

 大美和さくら先生は、そう仰ってから窓の外を見つめた。


 しばらく――じーっとです。


「あ……ありがとうございます。大美和さくら先生」

 と、あたしはふいに我に返って、大美和さくら先生にお辞儀したのでした。

「ふふふっ……」

 先生も、あたしの言葉に反応してこっちへ振り向いて、そしてこんなことを仰ったのでした。




 フィクションって、これくらいじゃないと面白くありませんからね!!




「面白くないですか……」

 あたしは、すかさず。

「はいな!!」

 大美和さくら先生は、軽快に返事をしてくれました。

「私達の一生は、ぶっちゃけフィクションと言っていいと思います。五蘊皆空って言うじゃないですか? 私達は、みんな聖人ジャンヌ・ダルクさまから――神から与えられた身体に魂を入れて生かされている――と思うのだったら、私達の一生は、ぶっちゃけアニメなんかのキャラクターと同じなのだと思うのですよ」

 先生はそう仰った後、今度は窓際まであるいて、再び窓の外を静かに見上げました。


 見上げた先には、飛行機雲が3つ――


 大美和さくら先生は、窓の外を見上げたまま、

「フィクションのキャラクターは、永遠に死ぬことはありません。それは、必ず作者のメッセージとともに生き続けますよ」


「けれど!! ねえ? ねえねえ?? 新子友花さんって!!!」

「にゃ? にゃんですか!?」

 これも、あたしが不意打ち食らった時の返事の癖です。

「あの、新子友花さん!!」

 大美和さくら先生が見上げていた窓から、くるっと向きを変えて、あたしを凝視。

 その視線ときたら――

「新子友花さん!!」

 スタスタとあたしの席へと忍び寄って――いやいや歩み寄って――なんだか怖いよ先生。そして、



 バチん!!!



 あたしの机に、左手をドンと強く乗せるなり……

「大美和さくら先生……??」


「新子友花さん!! 今回のお話ですけれど、はっきり言っていいですね。いいますよ!! 光の大天使と闇の大天使っていうところ、ぶっちゃけ[FF3]のパクリですよね?? 闇の戦士を犠牲にしてラスボスを倒したいのですね? そうですよね……[FF3]のラスボスのくらやみのくもって、光の戦士だけじゃ倒せませんからね」


「まあ――フィクション、ファンタシーって、こういうストーリーが王道ですしね。でもね新子友花さん!!!」


 再び! バチんである。


 ちなみに、今度も左手で……

「ちゃーんとね!! [FF3]に感謝しましょーね。それが礼儀ですよ。先生はそう思いますから」


「ふふふっ!!」

 また笑った。いつも笑顔が素敵な大美和さくら先生が、あたしの目の前にいました。



 いつも、いてくれて……。(ありがとうございます)



「ほんとにね!! 新子友花さんって、本当にこういう奇想天外で奇々怪界なフィクションを書くことが、ほんとに、お上手ですね~。ふふふっ!!」

 口手を当てて、笑いをこらえながら大美和さくら先生が――


 うれしいのかな? ……ん??  なんか……ちゃうぞ!?


「ああ~先生!! あたしのフィクションをバカにしてるでしょ??? んも――!!」

「いえいえ……。バカになんて…………ふ……ふふっ」


「ああ!! やっぱし!! んも――!! 大美和さくら先生! んも――!!!」





 んも――!!





続く


この物語は、聖書の内容を参考にしたフィクションです。

登場する人物・団体・名称等はすべて架空であり、実在のものとはまったく関係ありません。

また、[ ]の内容は引用です。

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