第2話 【スピンオフ】2039年 あたしの旅 これで、良かったのですよ……
かつて、地球の歴史を作った『東方の最後の魔女』は、もういない。
残されたのは、この最後の預言者だけである。
魔女はどこに行ったのだろう? 生きているのか、そうでないのか?
もう、わからない。 誰にもである……
……遺書を、生きているうちに書いておこうと。
こんなに世界が終わってしまって、みんな死んでいって……。でも、私はまだ生きている。だから。
でも、それも、いつまでなのか分かりません。けれど、私が残した記録は、たぶん、これからも残っていくと信じています。
最後の戦いを前にして、なんとか手に入れて、でも、私はまもなく人生を終えるでしょう。……それは、分かりませんけれど、それだけは、天だけが知っています。
私も、やがては……。でも、その方が地球のためなのかもしれませんね。こんなムチャな戦いなんて……。
私なんかより…………
『契約の箱の鍵』を私が手に入れてから、それを奪い返そうと、あらゆる天変地異が私を襲いかかってきて、私は、もうダメだ。もう死ぬのだと覚悟したことが何度もありました。
私には意味が分からず、その時思ったことは、生きているうちに成し遂げたいことを、やろうという思いだけでした。それは何か、私の『遺伝子』を残すことです。
でも、なんなのでしょう?
私は何も悪くないはずなのに、この理不尽な攻撃はなんなのですか? 鍵なんて私が見つけなければ、それは、この地球の禁忌だったのでしょうか?
そうは思いたくないのです。私は……これは天命なのだと。
私は祈りました。
誇り名高き『聖人ジャンヌ・ダルクさま』に祈りました。
どうか、私がいなくなってからも、地球をお救いください。
ありがとう。感謝の言葉とともに――
さくら
『あなたは今夜、鶏が鳴く前に3度私のことを、知らないと言うであろう……』
「…………入るぞ、お前」
「 ! ………………んもー!! お前って言うな勇太! 入ってくんな!!」
――前触れもなく、玄関から一人の男性がやって来た。
ドアは破壊されていて外れ、朽ちて横たわっている。
ここは新子友花の部屋である。正確に言えば、かつて新子友花の部屋だったところである。今はすっかり廃墟である。
人工知能AIとの戦争は続いている。
新子友花は椅子に腰掛けている。
テーブルには、読み終わったそれが置いてある。読み終わった後、新子友花は、しばらく過去の思い出の余韻に浸っていた。楽しかった過去の思い出を、いろんなことがあったっけ? ……そんな感じである。
そしたら、ひょいっと玄関から姿を現したのが忍海勇太だった。
彼も、今は39歳である。新子友花と同じく、彼も歳を取ってしまった。当たり前といえば、当たり前であるけれど。
歳を取って生きている。生きなければならなくなった、この世界のあり様は、なんなのだろう……。
「ねえ、勇太。どうしてここに来たの? っていうか、なんで来るの?」
「なんて言うか、なんとなくだぞ。まあ、お前が気になって……ってな」
「にゃ!?」
ドキッてな具合に、胸元に両手を当てて、赤面した新子友花である。
「お前? 何勘違いしてるんだ……」
彼女が猫が驚いたみたいにその声を荒げる時は、必ず自分に対して好意を持っている時だ。それを十分に知っている忍海勇太である。
「……何って? ……あ、あたしのことを気に掛けてくれて」
真顔に戻って……新子友花が聞く。
――沈黙して見つめ合う2人。
忍海勇太は立ったまま、自分の髪の毛を触った。少し呆れた感が表情に出ている。
「……俺は、確かにお前のことを気に掛けていたけれど、でも、それはお前自身じゃなくって」
「じゃなくって?」
椅子に腰掛けたままの新子友花は、彼を見上げている。
「俺は、お前の食い意地を気に掛けてだな、……その、だから、ここまで来たんだ」
「……食い意地? なんのこと勇太??」
……ここで、忍海勇太『はあ~』と、一つため息をついて、
「お前さ。そのリュックの中に入っている物を見せてみろ」
と、新子友花が座っている椅子の足元に置いてあるリュックを指さして言った。
サッ…… …
すかさず新子友花、足払いで自分のリュックをテーブルの下へと隠す……。
いやいや、もうバレてるって。でも、人間ってこういう時にね、あからさまな態度になっちゃうものなんだよ……。
「……だ…か…らさ~、……お前って…………言わないでてくれる?」
えっ? ……そんなに緊張する?
「あ、あんた20年前から、ずっとあたしのこと『お前』って呼んでいるし。なんなのかな? ……ってかさ、もうそろそろ、お前言うの卒業しようよ、……ね?」
新子友花なりの意地の言葉だ。
「じゃあ、……友花。で、いいか?」
「それも……よ、よくない!!」
じゃあ、どう呼べばいいんだ? 新子友花の返事に困って、忍海勇太が、また頭に手を当てた。
「いいから、リュックをさ!」
テーブルの下にある新子友花のリュックを、強引に手づかみ。それをテーブルの上へとドサっと置いた。
「ちょ……」
言葉に詰まる新子友花。それを横目でちらっと見ている忍海勇太である。
「開けるぞ……」
「ちょ……勇太って! 女のカバンの中をまさぐるな!」
「カバンじゃない。リュックだ」
ズズ…… ズズズ…… ……
忍海勇太は、ためらいもなくリュックのチャックを開けた。そして、
「ほ~ら、やっぱりな!」
今度はリュックの中に手を入れてそう言った。かなり大胆な行動だ。
「お前、どんだけ食い意地がずるいねん」
呆れて忍海勇太が手に持った物、……それは非常食用の缶詰だった。
「…………」
「……お前、食料はみんなで分配するって、そうみんなで決めたよな?」
「……はいな」
しょぼんとしちゃった新子友花。
「でもさ! ……だってさ! お腹が空いちゃったんだもん」
「じゃもん、じゃね~って」
再び『はあ~』と、大きくため息をつく忍海勇太だった。
「わかってるよ、勇太。けどね……」
「けどねじゃね~ってば!!」
「はいな……」
両手の人差し指を合わせて、ツンツンという具合に……、新子友花がしょげちゃった。
――その後、今度は2人そろって無言になった。
理解できなくもない。今は戦時だから、どうしてもお腹が空くこともあるだろう。……それにしても、どうして、こんな世界に変わってしまったのだろう。新子友花と忍海勇太の内心は、こういうところである。
しばらく無言が続いた後、忍海勇太が新子友花の顔を見つめた。……何か言いたげな表情である。
たぶん、こんな時代で生きる自分達。ずっと一緒に生きてきた者同士としての励ましか? それとも、なぐさめか? 何か言わなきゃいけないと、彼はそう思ったのだろう。
……それに、彼のそういうところに、長年一緒にいるから分かるものがあるから、阿吽の呼吸のように新子友花が、忍海勇太の言いたげなそれに気が付いた。
見上げる新子友花。ちょっと目が潤んでいる。
「お前、やっぱ食い意地があるってことは、さては妊娠か?」
「……? アホか勇太! んもー!! ほんとに、勇太なんか“知らない”んだからっ!!」
――こんな世界になっちゃったけど、ああ、これってあの時の文化祭で、あたし達ラノベ部が出版した『あたらしい文芸』のせいなのかな?
『友花……』と、あたしに愛が。
『友花ちゃん!』夕美は、いつも元気だな。
みんないた。まだいた。
こんな世界になっても出逢うことができた。 良かった。
でもいない。先生が、いないんだよ。
「さあ! 新子友花さん!! 大詰めですね」
「は、はいっ! 大美和さくら先生……」
――話は戻って、ここは20年前のラノベ部の部室である。
机の上には大量の原稿の山、やま、ヤマである。
「友花さんのための……な~んてね。なんせ『あたらしい文芸」なのですから。最後の後記は友花さんが、しっかりと締めて書いてくださいね!』
先生にっこり。先生はいつも、にっこりだけれど。
「……はい先生。でも」
「……でも? なんでしょう??」
ん? ……首を傾げる大美和さくら先生。
「その、やっぱ、みんなで後記は書いたほうが……。だって、みんなの文芸誌なんですから」
「お前、書くのが面倒臭いだけだろ……」
自分の編集作業の手を休めて、ほ~らやっぱり、みたいな視線で新子友花を見つめているのは忍海勇太である。
(だ か ら 、 お 前 って …… 言 う な ……)
口をパクパクさせて、傍に立っている大美和さくら先生に聞こえないように、新子友花、お決まりのセリフを忍海勇太に言った。
「っふふ。やっぱし。新子友花さんらしいですね~。本当に、みんな思いですね」
大美和さくら先生はニッコリして
「じゃあ、何を書きましょうか?」
口元に人差し指を当てて、今日の夕食のレシピは何がいいかな……独身な作者が想像する、新妻の新婚生活4日目の午後のひととき。……という感じで、大美和さくら先生は目を閉じて考えている。
「俺は、何でもいいぞ……」
「勇太さまも、しっかりと考えてくださいって」
「友花……。何にしようか?」
忍海勇太、神殿愛、東雲夕美、みんなが新子友花の机へと集まって来た。
また会えて、あたしは嬉しいよ。
あの時、あたしは……、そうだ! これを書こう!!
と言ってPCに向かって、あたしは書いたっけ……
「そうだ! 先生は思い付きました。新子友花さん。あの話の続きはどうでしょう?」
「あの話のですか? ……なんだろ??」
「あの話ですよ。あれ!」
「……うーん? “知らない”です。先生、覚えていないです」
「覚えていませんか? 先生と新子友花さんが、この部室で二人っきりになった時の課題ですよ」
「…………ああっ、……もしかして『フィクション』ってやつですか?」
「はい! そうで~す。ふふっ!!」
と言うなり、大美和さくら先生は、
ツッ… ツッ… ツッ…
と部室の前のホワイトボードに向かって走って行き、ペンを持って素早くズガーっと、例の『あれ』を書いたのであった。
フィクション!! (今度はビックリマークのおまけまで……)
「ハアハア……。そうです。これです。思う存分に、自分の未来を『フィクション』しちゃってみましょうっていう……ハアハア……です」
先生は息切れている……。
あたしは、前回のフィクションをPCに表示した。
先生は笑ってくれた。みんなも笑ってくれた。
こんな拙い、稚拙な、あたしの小説を…… みんなで……
「さあ! 新子友花さん。書きましょうか!!」
大美和さくら先生が大きな声で言った。
「あなたの未来の姿をフィクションにして、思う存分に書いてください。書くことで、あなたはラノベ部の部員として、また一段と実力が上がりレベルアップできることでしょう。それに国語の成績も、前にも言ったように書くことで、読解力や文章力は身に付くものですからね。それに、好成績になれば新子友花さんの、この学園の授業中の気持ちも明るくなるでしょうから」
あたしの肩にポンって優しく手を当てて、先生はそう言ってくれた。
「もちろん! フィクションでいいのですよ。……この世界に、どうしてフィクションが、こんなにも多くあるのかを知っていますか? それはですね、新子友花さん」
私たちの人生って、みんなフィクションだからですよ!!
「じゃじゃーん!!」
――ナザリベスがいる?? ……なんで? どうしているの??
「それはね、あたしは、お兄ちゃんの守護霊だからだよ。……お兄ちゃん。さあ帰ろう」
(帰ろうって?)
「お兄ちゃんがいる、本当の世界にだよ」
エッヘンと両腰に腕を当てて、ナザリベスが言った。ところで、お兄ちゃんって誰だ?
「お兄ちゃんは4歳の時に、滑り台から落ちて大ケガをして……。そんでね、死んじゃったんだよ」
「死んで……」
「うん。そうだよ。死んだんだから、遺書も何もかもが無なんだって」
「……俺、死んでいたのか?」
「うん!」
あっさりと、ナザリベスがそう返事をする。衝撃の告白だった。
「この世界は、死んだお兄ちゃんから見た地球だよ」
「……つまり、死後の世界ってやつか」
「お兄ちゃん! あたし須弥山まで徒歩で歩いてきたよ。覚えてる?」(この部分は『ナザリベスはウソしかつかなーい!!』を読んでください)
「須弥山まで行って閻魔様がね! あたしに、こう言ったんだ」
「仰っただろ。……んで、なんて言った?」
「これ、あたしからのなぞなぞー!! なーんだ?」
「……またか」
やっぱりこういう展開になるよな。なぞなぞ対決になるよな。
「ヒントはね、もう、このスピンオフに書いてるよ」
「……ヒント、じゃなくて答えだろ」
「うん。まあ……そうだよね」
腰に当てていた両手を今度は腕組して、ちょっと考えたナザリベス。
【フィクションの本質、キャラクターは死なない】
「せいか~い! 例えば、死んだあたしを誰が思ってくれる? RPGもアニメも、セーブポイントからやり直せば、すぐに生き返るじゃん!! 全話を見返せば、いつでも生きているじゃん!! これがお兄ちゃん。フィクションの本質だよ。まるで、生きながらに死んでいて、死んでいるのにまだ生きているってね」
自己言及のパラドックス。これを仏教では無我というが……じゃあ、カトリックでは、何て言うのかな?
たぶん。 聖人とか、大天使とかだろう。
2039年 あたしたちの旅
これは、ラノベ部のみんなで考えて書いた後記です。まあ、適当な後記なのですけどね。
題材は聖人ジャンヌ・ダルクさまをベースにした聖書のお話。この学園がカトリック系なのでこうなりますよね。でも、内容はなんなのでしょうか? (*’▽’)
新子友花
――その東方に生きる預言者は、静かに語った。
聖書の四騎士はトランプ高原という、一方的な名称によって成立しました。これから、彼の地は戦乱へと陥るでしょう。ヨハネの黙示録の記述のとおり、四騎士が約束の地へ降臨したのです。
あなた達は何も分かっていません。フランスの[ノートルダム大聖堂]の大火災も、すべてが聖書の預言の結果なのです。旧約聖書の[バベルの塔]の最後の再現、ヨーロッパの民衆を陥れるための策略です。そして[エッフェル塔]も、やがて倒壊する計画があることを知りなさい。その後には新しい塔が建設されます。
大天使のラッパが吹き終わるのは、[サグラダファミリア]が完成する2026年です。では、その後にくる真の歴史を、あなた達に教えましょう。
『ヨハネの黙示録 - 天の戦い、地における獣の増大、地の刈り入れ』
2035年7月4日に[東京スカイツリー]のような新バベルの塔がフランスに完成する。[ホワイトハウス]も新しく完成する。その塔は雲に近付く高さである。その建物は地下深くまで広がる要塞施設である。
その塔からは、世界中に宇宙にまで電波を飛ばして交信するだろう。その建物は、地下深くに選ばれし民衆を匿うシェルターとなるだろう。
しかし、その結果、堕天使の怒りを受け、罰として[国際宇宙ステーション]が地球に墜落する。墜落してヨーロッパかワシントンのどちらかに墜落する。
世界は破壊される。その破片は地球を覆い続ける。幾人かの者達はシェルターによって命は守られる。守られて生き延びる。
誰もが知っている[アルマゲドン]と[インディペンデンス・デイ]の、あのハリウッド映画の再現である。警鐘してくれていたと言えば綺麗事になるが、東日本大震災を金儲けに利用したそれも、過去にはあったけれど。大昔の[タイタニック]の小説[タイタン]とか……。
(奴らって、こういうことを平気でするのです)
――問題はここからだ。日本の話である。
2020年3月25日の関東大噴火の預言は、すでに箱根山の小規模な噴火によって、いずれ収束するだろう。
しかし、その矛先は必ず関東の大地へと還元される。それは[東京オリンピック]の聖火の話である。その炎は同時に世界に終末を教え、開催時には降臨した大王の祝いのための、生贄の業火に変わる。
どうして四国、それも高知県の地震が少ないかである。この話をしよう。
堕天使である[東方の三賢者]は、日本に狙いを定めたことは前に書いた。これは東方が壮大な実験場になるという、かつての預言と同意である。終戦まで、広島市はほぼ無傷だったけれど、その最後を原爆投下で破壊した。その実験は最終段階の必須だった。
――これは言っておこう。
2035年9月2日の皆既日食の日に、日本を大災害が襲う。
時刻は午前11時24分 震源地は高知県沖。
いわゆる[南海トラフ]という大災害である。
高知県が今まで無傷な理由がこれである。(……ま~た、ノストラダムスの大預言の影響ですか? やめてくださいよ……。 ← 担当編集からの苦情)
『ヨハネの黙示録 - 最後の七つの災い。神の怒りが極みに達する』
高知県は、ヨハネの黙示録の犠牲地となってしまう。これは、それを起こす輩が最終的に判断する。イルミナティのことである。
その皆既日食から、世界を人工知能AIが支配する。これは前に書いたとおりである。
2036年1月の大統領就任式には人工知能AIが就任する。そして、月の裏側に[契約の箱]があったと宣言する。キリスト教信者は、これを信じる。契約の箱の中には、2体の大天使の骸(むくろ)が納められている。[アダムとイブ]である。
宇宙人は大天使だったのか!
信者達は、必ずそういうことを言って熱狂する。救世主は実在した! と言うだろう。それは、すべて嘘である。信者達が見たそのすべてはCGである。[アポロ計画]の月面には、コーラ瓶が転がっていたという。それが何を意味するかは、もはや言わないでおく……。
その後に必ず、最後の審判が始まる。
旧約聖書の還元、その骸からアダムとイブの遺伝子を得る。新約聖書の完成、ヨハネの黙示録がすべて実在化される。結果、聖書は融合される。
されて、新しい神が誕生するのだ。その新しい神は[
――この預言をもう一度、2039年の人類は二極化している。
一方は、神人と共に意識体となって人工進化して、やがて宇宙へと行く。
もう一方は、ゴーレムと共に家畜として、真実が何も分からないまま地球で生き続ける。
かつて、東方の最後の魔女は彼らと戦い2019年6月に、彼らのラスボスの一塊を倒した。
人類は束の間の勝利を得ることに成功した。けれど、新しいラスボスはまだいる。それも強敵ぞろいだ。
――もしかしたら、人類は、ここまで努力を重ねてきたけれど、このまま力尽きて、朽ちる運命なのかもしれない。
「そんなことはないぞ!!」
――どこからともなく、不思議な声が聞こえてきた。
「正しき聖剣士よ! どうか聞きなさい!! あなた達の先に聖騎士がいました。その者達は5人いました。私の師匠である。誰もが勇敢で強かった5人である。私は聖騎士から人生を学んだのである。いいか! よく聞きなさい!!」
「私は、日本の地が壮大な実験場であると言いました。これは本当です。私は、フランスのノートルダム大聖堂の大火災をバベル崩壊の前哨として言いました。彼らはこれでも思い留まらず、今度はこの日本で、同じ行為をしたでしょう……」
「覚えていますか? 2019年7月18日の京都大火災である!!」
「この京都大火災は、世界を恐怖に陥れました。これは歴史の事実です。彼らの目的をハッキリと言おう! 聖書の中に書かれている大災害[ソドムとゴモラ]を再現させたのです。東日本大震災など数々の大災害を経験してきた日本にとって、このような『壮大な実験』を日本人に与えることは、かつての原爆投下のように、もう一度言おう! 奴らは、こういうことを平気で行います。家畜を飼いならしたいだけなのです」
「いいか! ここからが重要なのである。この京都大火災の真の目的とは[イルミナティカード]に記されている、また、かつての人気アニメーション映画にも描かれている[東京オリンピック]開催前の大災害である。誰も気が付いていないだろうから教えておこう。開催一年前の悲劇を再現させたのである」
「私は、かつての最後の魔女である。いいか! イルミナティよ! 魔女を本気で怒らせたことを、あなた達は理解しなさい。こういうことをすれば、お前達は、人類は家畜化できるだろうと、そう思っているのであれば、悔い改め、正しい信仰に戻りなさい!! こういうことをして、私、魔女一族の命も奪った。奪って、のうのうと……また同じことを繰り返す。ずるい類の奴らで本当に嫌いだ! 滅びろ!!」
――預言を続けよう。
2022年12月26日、赤い海と黒き海の近隣と海峡で、星と月が激しく睨み合い、必ず戦争へと発展する。これが第三次世界大戦の始まりであり、世界は嫌々と、世界大戦に巻き込まれていく。
そして、最後に大陸の戦士集団が覇者となり、新しい世界が生まれる。
これは、あなた達が選択したのであって、私では無いと、ここにはっきりと記録しておく。
「んもー!! これ以上は、ダメだよ!!!」
――今度は、どこからともなく7歳の幽霊の女の子が姿を現した。
「お兄ちゃん! お兄ちゃんは夢で見たんでしょ? 地獄を見たんでしょ。そこで、お前は、まだ来るんじゃないと……、地獄に行ったら門が閉まってたんだってね。別の夢では裏稲荷神社があって、ずっと仲良しの巫女さんと話をしていて、お参りもして。だから、もう……
十分。
だよね? お兄ちゃん。
だからさ、必ず。
行こう! 天国へとね!!
[約束の地]は、とっても平和なんだよ。こんな俗世の争いなんて全く無いんだから。
お兄ちゃんは悔しいよね? だって、お兄ちゃんは世界の
大好きな…… ってあたしの分身の、お兄ちゃん!!
せっかくだから旅立って見ようよ!!
新しい人生を! 生きる世界をね!!
神が与えてくれた、おにいちゃんの大切な世界――
『旧約聖書 - 約束の地 カナン』
「言おう! 騙されるな!!」
――更に、またまた、どこからともなく声が聞こえてきた。
「ジャンヌ・ダルクとして降臨し、皆に、全人類の皆に言おう! 決して騙されてはいけません!! 私は何度も言ったでしょう。彼らは人間選別をして、私達を家畜としてしか見ていないことをです。何度も何度も、何度も何度も言ってきました。これは、神の教えに背く犯罪行為であることを言ってきました。ああ神よ。本当の神よ。どうか彼らに天罰を、天罰を必ず奴らに……」
「祈りなさい! 本当の神にです!! 神はこのような愚行を決して許しません。自然の摂理に背いているからです。例え39億年後に、もはや地球は豹変していて、生命体はいないのかもしれません。だからと言って……。人工進化で人類を意識体として、宇宙へと旅立たせるこの計画は、ああ神よ! 本当に正しい進化なのでしょうか?」
「しかし、その行為が、どうして人間選別を正当化するのですか? 人間が判断した優秀な人間だけを選別して、人工進化をする。まるで[アウシュヴィッツ]の中で行われた人体実験。本当の神は、すべての命に救いの手を差し伸べてくれる。だから、こんな優生学は、ハンセン病だけで止めなさい!!」
「聖人ジャンヌ・ダルクは、ここに言おう!! こんなことを平気で行うお前達は愚かである。世界を守ってきた聖人達を、神を、蔑んで何とも思っていないこと!」
ああ 嘆かわしい
666の呪いに朽ちた者達
私は777を愛している
「――愛しているのだから、私は神の御前に跪き祈る。ああ、神よ。どうか私達人類に『本当の救い』を与えてください。私達人類なんてものは、あなた様から見れば、ちっぽけな泥人形でしかないのかもしれません。その程度の私たちが、宇宙に向かう価値が、私達人類に本当にあるのでしょうか? 人類の科学、歴史を、人間選別の結果の意識体という生命体を、神は、お許しくださるのでしょうか??」
『旧約聖書 創世記 - ノアが方舟を作った時、まだ、雨は降ってなかった』
ある1人の女性がいた。彼女は魔女と言われ、理不尽な思いをしてきた。
彼女は言った。力一杯言った。 私は魔女じゃない。 すると……
ああ、そうだ。お前はただの人だ。魔女じゃない。 と、1人の男性が言ってくれた。
……ありがとう。
彼女は頷いた。そして優しく――
「抱かれたんだ。その男に。そしたら子どもが……」
「にゃ!? アホか勇太!!!」
「……友花。そんな下心を後記に残そうと……。なんていじらしい……」
「まあ、友花らしいよね~」
「んもー!! にゃに! みんな、そろいにそろって、そんな猥褻な……」
――前のめりになって、夢中でPCに向かって原稿を書いていた新子友花。
彼女の回りにはラノベ部部長の忍海勇太、生徒会長の神殿愛、新入部員の東雲夕美が取り囲んで、その内容を興味津々な思いで隠し読みしていた!
……いつもにぎやかな、ラノベ部の当然の光景がある。それを、
「まあまあ、友花さん。けっこう読みがいのある後記ですよ。先生感心です!」
みんな、落ち着きましょうね……。という具合に、部員一人一人に肩を当てて、宥めながら話し掛けているのは、顧問の大美和さくら先生である。
「えっ本当に? 先生、本当ですか?」
「ええ、本当ですよ。感心ですよ~」
「…………」
新子友花は先生のその言葉を聞いて、しばし沈黙した。目を閉じて(じ~ん……)感無量の達成感を味わっている。
「あの、あ、あたし……」
「はい、なんでしょう?」
目を開けた新子友花が、大美和さくら先生に聞く。
「……その、こんな稚拙な後記でいいのですか?」
「ふふっ、何がでしょう?」
先生はニッコリと応える。
「あたし、後記でこんなことを書いていて、……なんか、ふざけてるって思われないかって。この『あたらしい文芸』って、文化祭のラノベ部の大切な活動記録なんだし、もっと、真面目に書いた方がいいのかなって……」
「ふふっ、いいじゃないですか! いいえ。いいと言ってあげます。だって、新子友花さんが、しっかりと生き抜いた人生を先生が認めなくて、一体、誰がみとめ……る…………のでしょう…………………………か? だって、ラノベは面白くないと。…………ねえ! 自分の人生をフィクションで書き残すって………………すばらしい……………………ってね………………………………………………」
「……友花ちゃん」
あたしに肩を掛けて、そう話してきたのは、夕美。
「うん。大丈夫だから。ありがとう」
あたしは、少し頷いてそう返した。
夕美から渡された大美和さくら先生の遺書を……あたしは読んでいて、そして、泣いていた。
「友花……。元気出そうよ」
今度は神殿愛が、あたしを哀しく見つめながら、そう話し掛けてくれた。
「ん。……愛も、ありがとう」
あたしは、また少し頷く。
「お前……」
「だから、お前って言うな! 勇太ってば……」
自分の目に流れている涙をぬぐいながら、あたしは力一杯、お約束の返事を……。
――大美和さくら先生は、人工知能AIの戦闘兵器で、この前、狙撃されたということを、他のグループのレジスタンスから、風の便りで教えてもらった。
幸い……というか、即死だったから。なんか……ほっとしたけど。
どうして武器を持つものは、いつも、こんなことをするのですか? かつて私は、ある人間に聞いて、そして、それを『命令』だからと、そう返事してくれましたよね?
戦争なんて、嫌だよ……
あたしは許さない。何が人工知能AIだ!
世界の自由にために、みんなが競って開発した人工知能AIを、本来だったら平和の中で、文明発展のために使われるはずだった人工知能AIを、……今では、こんな凶悪な兵器として悪用して、そして先生の命を……
「うわーーー!!」
あたしは泣いた。
泣きたかった。
なんで? どうして?
どうして先生が逝っちゃったんだって。
こんなの……なんでだって話だよ。
こんな世界になっても、……もしかしたら、どこかで必ず逢えると思い続けてきたのに……。
逢える。
逢いたいよって……。
こんなお別れなんて、悔しいよ。
「……ふふっ。新子友花さん」
――どこからともなく声が。……またしても。 (このパターン。これが最後です……)
「新子友花さん。泣かないでください」
「…………大美和さくら先生?」
ああ、これが魂の声なんだ……。大美和さくら先生の魂が、あたしに優しく語ってくれているんだ。
「先生は、もう十分生きてきたのですから、それほど悔いていませんよ。だから、泣かないでください」
「先生! そんな寂しいことを、言わないでください!」
「新子友花さん。先生は、みんなのことが大好きですよ!!」
「だから、後ろを、振り向いてごらんなさい……」
!!
瞬間、あたしは振り向いた。
――ずっと天国からの魂の声と思っていた。でも、違った。
…………その声は、実は、あたしのすぐ後ろから聞こえてきていたのだった。
大美和さくら先生だ…… 生きてる 生きていた
「ふふっ! ビックリしましたか?」
いつも、ニッコリしている先生がそこにいた。
「覚えていますか? 先生が新子友花さんに『あたらしい文芸』のメイン企画の文章について語ったアドバイスを……。新子友花さんがかつて書いた、自分の未来のフィクションも同じです。――人間というものはね何かしらの覚悟を決めた時に、物凄いエネルギーを表現にして、それをメッセージに変えるのですよ」
2039年の新子友花さん――ラノベ部のころに書いた文章に救われましたね♡
『新子友花さんも、これから先、更なる苦難の人生があり、それに堂々と立ち向かって、生きて行かなければならない修羅場があることでしょう。新子友花さん。この世界の戦争は継続しています。けれど、くじけずに、たとえ仲間が犠牲に遭っても、決して、聖人ジャンヌ・ダルクさまの教えを忘れずに、清く、潔く、立ち向かってください』
「先生も、応援しますからね!!」
「大美和さくら先生。んも……。もう、“知らない”んだから……」
「驚かせちゃいましたね。ごめんなさい、新子友花さん。……実は先生、ずっと世界崩壊後のレジスタンスのメンバーとして活動していたのです。その一環で、ちょっと……とある物を探していたのです」
なんだか、衝撃的な内容の大美和さくら先生からの言葉だ。
先生は、ショルダーバックの中に手をつっこんで、なにやらゴソゴソと探している。
「あっ! これです。みんな……これなんだか分かりますか?」
と言って、先生がある物を取り出すと、手の平を広げて、それをみんなに見せてくれた。
「これは、契約の箱の鍵です。CIAの友人から拝借しちゃいました」
どんな伝手なんだ?
「……みんな。これで世界をね、地球をもとあった世界にしましょう! 契約の箱をこの鍵で閉めて、みんなで人類の平和を取り戻しましょう!!」
「はい! 大美和さくら先生!!」 と、
新子友花、忍海勇太、それに神殿愛、東雲夕美が声をそろえて返事をした。
先生は、それを見て…… また、にっこりだ!!
――ところで新子友花さん。念のために、お尋ねしてもいいかしら?
……はい、なんでしょうか。大美和さくら先生?
今回の続編も、ぶっちゃけ[なんとかゲリオン]とか[なんとかフォース]は勿論ですが、付け加えるならば[なんとか機動隊]に[機動戦士なんとか]と、戦争って[火垂るのなんとか]、手紙のところなんて[ヴァイオレットなんとか]のアニメーションの影響がモロにありますよね?
実写映画で言えば、[なんとかインパクト]と[アルマゲドン]に[インディペンデンス・デイ]とか(それは先に書いてる……)、あと[ホワイトなんとかダウン]に[ダヴィンチなんとか]の影響が、これもモロに出ていますよね?
ふふ、新子友花さん。好きですね~
「んもー!! だって、フィクション書けっていったじゃんかい!!!」
――はるか未来。新しい命『宇宙生命』
その宇宙生命は、天の川銀河を種子として見事に孵化した。遠い39億年後の出来事である。今まで無限に近い生命が死んでいきました。あなたが地球を慕う気持ちは理解できます。けれどね、私たちは大いなる生命体の細胞の一部にしか過ぎないのです。
あの時、人類の迷宮の出口を発見した『さくら』が、その遺伝子を、この宇宙へと旅立たせました。あなたを形成している身体も、何度も生まれ変わり生きてきました。それが生きるということであり、死んでこそ誕生する息吹というものがあるのです。
見てごらんなさい。この宇宙で銀河が、また新しい命を産みましたよ――
この宇宙に、大きな赤ん坊の産声が聞こえてきた。
あなたはしっかりと残しました。
この世界のための職責、あなたの遺伝子を残すことができたのです。それは、あなたの意志から始まった命です。信じられないでしょう。けれど、そうなのですよ。本当に。
あなたの命は、遠い遠い時間を経て、今、新しい命を宇宙生命として誕生させたのです。
あなたの遺伝子ですよ。
私は『さくら』は、本来はちっぽけで無力な生命体だったのに。それでも自分の遺伝子を残すことができて、……もしかしたら、こんなことをは許されない禁忌だったのかもしれない。私はずっと世界から虐げられてきました。
それは、聖人ジャンヌ・ダルクさまが最後に、魔女としての烙印を押されて火刑に処されたようにです。
私よりも、もっと優秀な遺伝子があったでしょう。それなのに……。
――あの時の、あの友達との時間は、あなたにとっては[最後の晩餐]みたいなものだったのでしょうか?
あなたは知っていましたね。やがて人類が荒廃していくことを、預言者として。
新子友花に3度知らないと言わせたあなたは、友達を英雄にして彼らの軌跡を歴史にして、自分は消えていこうと。消えた方がいいのだという運命を、あなたは受け入れたのですよね?
宇宙の始まりからの物理方程式によって、私たちは、生まれる前から運命は化学変化や状態変化のように、すべて決定されています。脳の活動はすべて科学的ですからね。私たちの回りにある植物や山や海との関係も、すべて科学的な物理方程式で決定されています。
それは、まるで人工知能AIによるVRの世界のように、オンラインゲームのMMORPGのようにです。あなたの出逢いも別れも、すべて運命なのです。
これで、良かったのですよ……
本当に優しい作者ですね。 (あの~。自分で書かないでください。 ← 担当編集)
よくぞ言った!!
聖人ジャンヌ・ダルクは、お前を認めよう。
だから必ず、天国へ来い!!!!! (あたしの話、聞いてないでしょ?)
続く
この物語は、聖書の内容を参考にしたフィクションです。
登場する人物・団体・名称等はすべて架空であり、実在のものとはまったく関係ありません。
また、[ ]の内容は引用です。
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