エピローグ

「で、どうして今更、そんな話を私にしたんですか?」


 目の前に座る少女が、怪訝な視線を僕へ向ける。僕は氷が溶けたアイスコーヒーを一口飲んでから質問に答えた。


「まあ、焦らず聞いてよ」


「なんですか?」


 彼女は目を細めると、鋭い口調でそう言い放った。


「僕は彼女のやり方とは違って、救えるかもしれない人を救いたいんだよ。僕が自殺を助けるのは、本当にどうしようもないときだけ。だからこうやって、自殺支援プロジェクトに応募してきた君と面接をしてるんだ」


 僕の言葉を聞いた彼女は不満げな表情を浮かべた。わざとらしく、眉間にしわを寄せる。


「私の死にたい理由が足りないって言いたいんですか?」


「違うよ。ましてや君のお姉ちゃんがそんなことを望んでないとかそういうことを言いたいわけでもない。『大好きだったお姉ちゃんが死んだから私も死にたい』って理由の中にも、どこかに希望があるかもしれないだろ」


 僕がそう言っても彼女の怪訝な顔は変わらず、「早く死なせてください」というオーラが伝わってくる。


 僕の親友だって、もしかしたら助けることができたかもしれない。もう、後悔したくない。


「自殺支援プロジェクトっていうのは、死にたくてどうしようもない人が最後に行き着く場所じゃないといけないんだよ」


 伊東が言っていたとおり、「生きてればいいことがあるよ」「死んじゃダメ」は全部、他人のエゴだ。でも、「死にたいからとりあえず死ぬ」も、自分のエゴなのかもしれない。


「じゃあ、なんだって言うんですか」


 僕は背筋を伸ばし、咳払いをした。


「えー、本日はお足元の悪い中お越し頂き、ありがとうございます。というわけで、今から自殺支援プロジェクト運営古谷による、伊東理乃さんの面接を始めます」


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自殺支援プロジェクト 新代 ゆう(にいしろ ゆう) @hos_momo_re

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