5月 May

第16話 『モーパッサンはお好き ᕦ⊙෴⊙ᕤ』 柊圭介さん

〇作品 『モーパッサンはお好き ᕦ⊙෴⊙ᕤ』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054917992862

 

〇作者 柊圭介さん


【作品の状況】

 連載中です。


【作品を見つけた経緯】

 カクヨム運営公式のレビューの通知が流れてきて知りました。

 最近(といっても、昨年の12月くらいまで遡る)、本屋でモーパッサンを立ち読みして面白いなと思っていたので、それを取り上げているこちらの作品に興味を持ちました。


【ざっくりと内容説明】

 モーパッサンの作品を取り上げています。

 作品の紹介だけでなく、内容の解説、また当時のフランス(モーパッサンはフランス出身です)の状況などについても説明されていて、理解しやすい内容になっています。


【感想】

 『モーパッサンはお好き ᕦ⊙෴⊙ᕤ』は、フランスの小説家であるモーパッサンの短編作品について紹介・解説している作品です。(説明がややこしくてすみません)

 まず何といっても読みやすいことにつきます。読み始めたらスイスイです。

 また、作者である柊圭介さんがモーパッサンの作品を上手い具合に噛み砕いて説明して下さるものですから、フランス文学なんて難しい! と敬遠している方でも楽々と読めてしまう。その上、テンポもいい。きちんとした文章の中に、読者に楽しく読んでもらえるような気遣いがあるなと感じます。


 肝心の中身ですが、どの作品の紹介もとっても分かりやすく、明快なので、モーパッサンの作品をよく理解できるだけでなく、しっかり楽しむことができます。

 そのため、モーパッサンを読んだことがない人はきっと読みたくなるでしょうし、今まで忘れていた人はその魅力に再び気づいて、読み返したくなってしまうことでしょう。

 折角なので、読んだ範囲の中で、私が特に印象に残っている話を取り上げておきます。



処女作にして傑作「脂肪のかたまり Boule de Suif」①

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917992862/episodes/1177354054917993955



『脂肪のかたまり』ってどんな話だよ、ってタイトルを見た瞬間訝しげに思った私ですが、紹介者であり『モーパッサンはお好き ᕦ⊙෴⊙ᕤ』の作者柊さんが、「僕の中ではこれが最高傑作です」と仰ったので続きを読んでみると、これは本当に最高傑作だと言いたくなるのが分かるほど、すごい話でした。


『脂肪のかたまり』は、登場する娼婦のことを指すのですが、この方が中々に良い方なんですね。しかし、この方が最後に奈落の底に突き落とされます。それも彼女が、優しくした人たちから酷い仕打ちを受けるのです。


 どうしてそんなことになったのかというのは、『モーパッサンはお好き ᕦ⊙෴⊙ᕤ』に全て書いてありますので、是非お読みください。


 人間の汚いところといいますか、独りよがりなところとか、身勝手なところなんかがふんだんに盛り込まれていて、読後は嫌な気持ちにさせられます。でも、読まずにはいらず、物語の中にぐいぐい惹き込まれていってしまいます。


 柊さんの説明だけで、悲しみ、腹立たしさ、怒りという感情が、心の底で暗く渦巻いてしまいましたが、実際の作品も読んでみたくなりました。ちょっと怖い気もしますけど。


 上記の紹介も面白いのですが、私が以下の二つの作品も気に入っています。


小市民の生活辞典「首飾り La Parure」①

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917992862/episodes/1177354054918099846#end


父なし子のかなしみ「シモンのパパ Le Papa de Simon」①

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917992862/episodes/1177354054918898972


 語ると長くなりそうなので、それは割愛しますが、一つの短編につき多くても三話で説明が終わるので、隙間時間で読むことが出来ます。ただ、読者を惹きつける紹介文なので、一度読みだしたら中々止まれないかもしれない、とだけ付け加えておきますね。



 今日は柊圭介さんの『モーパッサンはお好き ᕦ⊙෴⊙ᕤ』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。


【余談】

 「シモンのパパ Le Papa de Simon」は、紹介文を読んで「涙なしには読めない、素敵な家族の物語だ!」と知ったので、ぜひとも実際の作品を読んでみたいと思いました。そのため最近購入したモーパッサンの短編集に収録されているかなと、期待して目次を見てみたのですが、残念ながらありませんでした……。悲しい。

 また上記で取り上げた他の2作品も入っていませんでした。さすが、300以上の短編を紡いだ作家。短編集1冊には収まるわけがないですし、翻訳も全部はされていないのかもしれませんね。



【補足】

 モーパッサンのことを知らない方のために、辞書に載っていた説明を一応掲載しておきます。


<ギイ=ド・モーパッサン>

 フランスの小説家。フロベールに師事し、短編「脂肪の塊」(1880)で名声を博し、以来明晰な文体、みごとな人物・風景・心理描写で天才をうたわれたが、厭世と疲労の極に、精神を病み、短命に終わった。代表作は長編の「女の一生」「ベラミ」など。(1850-93)

(『精選版 日本国語大辞典』「モーパッサン」の項目より)

*作中では、「ギ・ド・モーパッサン」と紹介されています。

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