第15話 『明治小話』 井上みなとさん

〇作品 『明治小話』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054892405363

 

〇作者 井上みなとさん


<作品を見つけた経緯>

 どなたかの作品フォローを覗いた際に発見しました。しばらく積読していたのですが、カクヨムさんで新選組の歴史小説を読んだこともあり「これを機に」と、明治時代の小話が書かれているこちらの作品を拝読することに。


<ざっくりと内容説明>

 明治時代に生きた人たちの小話です(タイトルそのまま)。


<作品の状況>

 連載中


<感想>

 この作品はまず文章の質に注目してしまいます。明快な文章であり、かつ小気味のよいテンポで書かれているのです。また文章の流れに淀みが少なく、体にすうっと染み込んでいくようです。作者さんの筆致力を堪能するのであれば、私は第2話をおすすめします。

 内容がしっかりとしていて、よく調べられている話だということがわかります。しかしだからといって難しさはなく、それでいて明治時代の雰囲気を感じさせるような少し硬さをまとっているところが粋だなと思います。


 興味がそそられる面白い小話が並び、作者さんの「こうだったのではないか」という解釈を含めて読むと、教科書に書かれてある淡々として無味無臭な色気のない歴史的事実に色が付けられ、そこに生きた人がいたことを実感します。

 私にとって歴史的に活躍した人たちは、教科書の中ではただの「人物」にしかなりません。

 しかし書き手の人たちが彼らの小さな行動を取り上げて描くことで、歴史上有名な人物たちも「血の通った人間」だったことを思い出すと言いますか、文字の中から人物が浮き上がってくるような感じがします。


 ――どのような成果を収めた人なのか。

 ――日本にとってどんな重要なことをしたのか。


 そういう歴史を知るのはもちろん大切なことですが、後世に素晴らしい功績を残したような人が酒癖が悪かったり、すぐに激情する人だったり、逆に年下相手にも偉ぶることがなかったりすることを知ったりするのは中々に面白いです。


 特に第10話の「伊藤博文の仲間たちと福沢諭吉」のところで語られる、伊藤博文の人物像。これは私の想像とは違っていました。

 どうやら彼は「女好きな割には一人の女に執着しないくせに、男に対して粘着質」らしいのです。そして彼の性格が自身の周囲に配置する人間を決定付け、しかも政治的に力のある人たちですから、彼らの行動一つで歴史が決まったのかもしれないと思うと、物事の流れというのは単純明快ではないなと改めて思いました。


 今日は井上みなとさんの『明治小話』をご紹介しました。

 それでは次回、またお会いしましょう。

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