第5話 お弁当箱の唐揚げ
昨夜の事からあまり眠れなかった私は悪あがきとして、最近は作っていなかったお弁当箱に朝の5時から取り掛かりました。キッチンの前に立つまでに色々な葛藤はありました。
朝に再度聞いてみるか、いっそ眠っている夫を横目にケータイを見てしまうか。もう一度振り向いて貰うよう努力するか。溜まりに溜まった案は洗濯ものの山のようになり、どれから手を付けて良いものか分からなくなりました。
中でもお弁当は今の私を整理するのにも丁度良かったです。夫の好きな具を詰め込み、再度夫のことが好きなんだと実感しました。
会社で仕事をして休憩の時にもう一度私のことを思い出して欲しい。
好きなんです。夫のことが。
元々、恋愛結婚としての期間は短い方でした。
30歳手前の私は結婚するなら大恋愛をしてからより、結婚を前提にお付き合いをしたい。そう考えていました。
そんな時に元々友人でもあった人から告白されたのが今の夫です。
友人時代から素敵な人だとは思っており、歳下の彼と私がどうこうなるはずがない。想像なんてしてはいけないと思いながら、彼の人生観に惹かれていました。
告白されてからはスムーズに事は運び、無事に結ばれました。私が困った時、迷った時は優しく話を聞いてくれ、嬉しかった時、楽しい時は一緒に笑ってくれました。
夫婦なのにどこか恋人の様なワクワクを。
これが夫の考えだそうで、初めは子供みたいで可愛いなぁ...と思いましたが、恋人の期間が短かった事もありまるで数年前付き合って気づけば結婚していた。くらいの錯覚をおこしました。
そんな夫婦になっても努力をしてくれて、夫婦のために、未来のために我慢もしてくれる夫がやはり大好きです。
...泣きそうだ。
夫の大好きな唐揚げを最後に詰めて私はお弁当箱に蓋をしました。
夫は今から会社に向かいます。
どうか、勘違いでいさせてください。
今日のパンツは黒色です。
恋とパンツと嫁日記 はる @koi_pantsu
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