収束

 シオリは、シズクと共に女子としての新生活を再スタートさせた。

 昼夜問わず、いつも一緒だ。一緒に暮らし始めてから1週間ほどで、二人は昔からの親友のように仲良しになった。


 1ヶ月ほど経つと、親友と呼べる同性ができたためか、シオリは一気に女性の生活つになじんだ。

 

 距離をおいたカエデはだいぶ大人しくなった。


 最初はシズクに対抗心剥き出しで妬いていたが、シオリとシズクの関係が親友のそれとわかると、気にしなくなったのだ。そのあとは、シオリへの異常な愛情も落ち着き始め、カエデとシオリの恋愛はすこしずつ順調になり、愛を育むようになり始めた。


 そんなシオリの様子を受けて、女子のレクチャー期間は早めに終了し、シオリは、実家で生活するようになった。シオリの両親は、とても女の子らしくなった娘に感激し、カエデとシズクに感謝した。



 シオリとシズクは、スマホのビデオ通話をしながら、自分の部屋で宿題をしていた。

 

 シズクが言う。

<今更だけど、まさか、タキモト君と親友になるとは思っても見なかったよ>


 シオリが返す。

<私だって、イチジョウさんと親友になるとはおもってなかった>


<シオリ、この短期間にすっかり女子になったよね。

 いま楽しいでしょ? 女子やってるの>


<うん、シズクのおかげ。いまから男子やれって言われてもかなりこまる>


<すっかり乙女化したものね。超かっこいい彼氏もいるしさ。女だけど>


<まぁね。私が彼女なのが納得いかない時もあるけどね>


<それありえないから。シオリに彼氏はむりだって、私が保証する。

 そういえば、ウエノさんとは連絡とってないの? 仲良かったのでしょ?>


「〝私〟は仲良くないよ。ほとんど話をしたことないし。シズクの家で生活するようになってからは一度も話していない」


<そうなんだ。好きだったんじゃないの?>


<そうだけど、ほとんど話すらしないで、雰囲気だけで好きって思い込んでただけだよ。

 それに目の前で、今のアキト君のこと期待以上に素敵な彼氏だって惚気のろけられたら、幻滅しちゃった。

 今はただの同性って感じ。

 美人で誰にでも優しい感じだけど、もういいかなって思ってる。

 カエデの方がカッコ良くて好き>


<それひどいね、中身別人なのにね。ウエノさんてそう言う感じなんだ。

 でも、乙女心に目覚めちゃったか。カエデは女子からもモテモテだしね。

 ちなみに、ウエノさんとは友情も芽生えない感じ?>


<もう接点ないからね。それに、あの二人を見るのが辛いんだよね……。

 できるだけ関わらないようにしてるの>


<そっか、まだ乗り越えられてなかったんだね。泣いとく?

 泣きたくなったらいつでも言ってね。近所なんだし、駆けつけるよ>


<今は大丈夫、ありがとね>


 ピンポーン

 玄関のチャイムが鳴る。


<たぶん、カエデだ>


<お泊まりだっけ? ラブラブですなー

 ごゆっくり。それじゃまたね>


<うん、またね>



 カエデがシオリの部屋に入ってくる。

「おまたせ、シオリ」

 二人は挨拶がわりのキスをする。


「宿題してたの? 順調? 私の写す?」


「順調だよ。自分でやらないとだし」


「わからないところあったらいつでも言ってね、教えてあげるから」


「助かる。でも今のところはなんとかなってるよ」


「そうなの? 頼ってくれたほうが嬉しいのだけど。

 ちょと見せて……、ほら、こことここ間違えてる」


「え? 違うの?」


「いい? ここはね、こうやって解くの」


「そうだったんだ、勘違いしてた」


「こっちはこうするの」


「私、ダメダメだね……」


「成績は良い方なのだから気を落とさなくていいよ。

 わざとひっかけ問題が混ぜてあるんだけなんだからさ」


「すごいな、私、カエデには何もかなわないよ」


「別にいいじゃない、それで。

 私がシオリを大好きなのに変わりはないのだから」


「うん……ありがと。こんな私を好きになってくれて」


「貴女だからこそなのよ?

 可愛い。愛してる」


 カエデがシオリを抱き寄せる。

 

「嬉しい。私も、カエデが大好き」


 二人は甘いキスに酔いしれた。

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