第6話脅迫、守護神視点

「守護神様、もし本当に守護神なのなら、この仕打ちはいかがなものでしょう?

 民に塗炭の苦しみを味合わせ、何の救いも与えず、それでも守護神ですか!

 残忍非道な王侯貴族を見逃し、天罰の時には哀れな民まで巻き込み処罰する。

 それでは守護神ではなく悪鬼羅刹、悪魔の所業ではありませんか?

 本当に守護神だと申されるのなら、せめて哀れな民に救いの手を差し伸べるべきではありませんか?!」


 腹立たしいことではあるが、聖女の申すことももっともではある。

 問答無用で人間を皆殺しにすれば、悪魔と同列だと自ら認める事になる。

 それは絶対に嫌だから、人類を皆殺しにする事も、この国の民を皆殺しにする事もできなくなってしまった。

 本当に聖女には腹が立つ、いっそ聖女も人類と一緒に滅ぼすか?


 いや、そんな事をすれば、他の神が黙っていない。

 それでなくても、唯一神と名乗った事で、他の神々から忌み嫌われてしまった。

 もう今では誰も神の付き合いをしてくれなくなっている。

 父母兄妹神からも絶縁され、機会があれば滅ぼされるだろう。

 人族の記録と記憶の中では神として残れても、神界では滅びる事になる。

 滅びたくないのなら、人類を滅ぼす事も聖女を殺す事もできない。


 腹立たしことだが、皆殺しは諦めて、神を崇めない者、悪事を働いている者だけ殺すことにしよう。

 人間など罪悪の塊だから、幼子さえ見逃せば、他の神も文句は言えんだろう。

 幼子は脅しをかけてきた聖女に押し付けてやる、苦労すればいいのだ。

 食糧や乳を集め幼子を全て助けるのは不可能だろう、神を脅したのだ、その罪を思い知るがいい。


 この国の民を皆殺しにする方法だが、神使に虐殺させるか?

 だが一撃で楽に殺すのは面白くない、疫病を流行らせて、激痛で苦しみ抜いて、最後は神に許しを請うように仕向けるか?

 だがそれだと、罪のない幼子だけ除外するのが難しい。

 いっそ神使に幼子以外の人間を喰い殺させるか?


 ふむ、神の教えを蔑ろにしたら、神使に喰い殺されるとなれば、神を敬うだろう。

 神使ならば、神の教えを守らなかった者と、幼子の区別くらいならできる。

 問題は数が少ないことだが、時間をかけてじっくり殺すのも恐怖を煽る事ができて、逆に神を敬わせるのに役に立つかもしれない。


 ふっふっふっふっ、それがいい、それが面白い。

 神を敬わない人間など、皆殺しにすればいい。

 他国に逃げたら、その国まで追いかけて喰い殺させよう。

 一度で楽に死なせるのは面白くない、腕や足を本づつ喰わせて、一度二度と逃げして、恐怖と苦痛を与えながら殺してやろう。

 

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眼つきの悪い聖女は妹に婚約者の王太子をとられ、婚約破棄追放されるも、望み通りでした。 克全 @dokatu

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