10月の夢

10月6日

 大きな家でホウキやハタキをかけて掃除をしていると、「敵」が次々と出てくる。これはそういうゲームなのだな、と、頭の中で納得した。

 ボール、本棚、壺のほこりを払っていく。

 俺自身は「敵」を出すだけで、追い払ったり打ち倒したりすることはない。

 四人組(三人組)の一人が、俺に話しかけてきた。

「これが終われば、帰れるな」

「そうですね(誰?)」

 でも、ここが俺の家だ。

 どこに帰るというのだろう。


10月14日

 クイズ番組に出た。

 回答する前に番組のキメ台詞を言わなければならず、とても恥ずかしい。

「古きを求めて自由を知る これ○○と同じじゃないですか」

 ○○の部分は、回答者ごとに何を言ってもいいそうなのだ。だけど、アドリブほど苦手なものはない。いや、それはウソだ。俺だって、アドリブもやろうと思えばできる。けど、アドリブしても盛り上がらないのがいやだ。

 しかたなく、「これ中野と同じじゃないですか」と言った。

 やっぱり、全然盛り上がらない。

 恥ずかしいのに、もういっこ言わないといけない。


10月16日

 デルタに修正えーらを

「反応あり、くすりの準備を」

「くすり準備します」

 犬が次の四年かん議長継続再任

 デルタ型基調方式三者合議制

「くすり注入開始」

「くすり注入します」

 バックスペースをもうけて たくさんのひょー


 ……ここで目が覚めた。


10月17日から22日

 個人情報と社内の内部情報に関する夢ばかり見る。


10月24日

 『暴力団の娘 長谷川はじめの抗争』という演劇を観る。

 これがちっとも面白くない。

 金田一少年の事件簿みたいなもののようなのだが、舞台が稚拙で、声に張りがない。

 それに何より、このおはなしは私が女子だからまったく響いてこない。別に暴力団の娘である意味もないし、共感するところがさっぱりない。どうしてこんな劇に連れてこられたのかよく分からないが、そこで連れてこられたことに気づいた。


10月25日

 会議室の空気がとても重い。上司が怒っているからだ。

 Tさん(タカモトさん)が私的な理由で初音ミクさんの誕生日をお祝いしようと会社の企画を用いて仕事に取り組んでいた。それが明らかになり、上司にもバレて今まさに追い詰められているところなのだ。

 悪いことに、Tさんはすでに弁明を済ませており、また上司も激しく叱責をするようなタイプではなかった。だから俺は居心地悪く、どんなことをしでかしたのかを聞きながら、処分が下るのを黙って見守っていた。


10月27日

 アパートの二階の階段は、両側から真ん中へ降りるようについている。その右側から降りようとしたとき、一階で何やら騒ぎが起きていた。

 一階の住人が陸上用のスパイクを履いたまま通路を歩いたのである。それで、アパートの通路がめちゃめちゃになってしまった。スパイクは、ピンを抜いてあったとはいえ、硬い靴だ。それで柔らかい通路がガタガタになってしまったのだろう。

 ガタガタになった通路を通った周りの人が次々と転んでしまっている。僕が二階から降りて話を聞いてみると、そういう事情だった。

 スパイクを履いた人は、「履き慣れた靴だから大丈夫だと思った」と言って、誰かに連れていかれてしまった。

 たしかに掃き慣れた靴ならそう思うのも無理はない。

 しかし、実際は通路が壊れてしまったのだ。


10月28日

 町を急いでいると、声をかけられた。細くてどこかへ抜けるような女性の声だ。

「おにいさぁん、遊び相手は見つかったぁ? あなたのおうちにぃ、お雛様を連れて行く」

「遊び相手なんかいらない」

「じゃぁ、私も探してないよぅ。お雛様だよぅ」

 雨が降っている。

 こっちを見ている。

 だんだん大きくなっていく。くちが大きくなっていく。

 俺は声を見ていないのに、大きくなっていく。

 雨は、冷たい雨が降っている。

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