リハビリ小説集
@moyo
死んでほしいのかな
学生時代の話です。
自分は霊感のようなものや霊体験に遭遇したことはほとんどなく、不思議な経験もこれきりです。
グループワークで同じ組みになったNくんとHくんという人がいました。Nくんは要領が悪いしあまり話を聞かないタイプで、Hくんはそれをフォローすると言った調子でした。(例えばNくんがSNSのグループに入りたがらないので全然進行が伝わってない時に、Hくんが連絡を入れるとか)
それでてっきり周りも自分も、NくんとHくんは仲がいいんだと思っていました。
ところが中間報告が終わった日の飲み会にちょっとした出来事がありました。Nくんが隣の席になったHくんを突き飛ばしたのです。そして「近寄るな!俺は知ってるんだ!」というようなことを言いました。
突然叫んでケンカ(?)したので、店は一瞬静かになり、そのあと結局謝って出ることになりました。
自分はNくんの下宿先のアパートが家に近かったので、彼を送っていきました。Nくんはあまり飲んでおらず、それなりに冷静で、さっき起こしたことを気にして自分に謝ってきました。ただ、どうして急に大声を出したのか聞くと、妙なことを言ったのです。
それはHくんが高校の時にすでに死んでいるという話でした。
自分は今日だって普通に飲み会に来た人が、どうして死んだなんて……と思い、笑ったのですが、Nくんは「俺はHの葬式にも出たんだ」と言うのです。それに交通事故だから、調べれば出てくると。
彼の表情は真剣だったのですが、とにかく自分はNくんに休むよう言いました。
それで帰り道に、Hくんの名前を調べて見ると本当に出てきたんですよ。交通事故の記事が。事故は交差点で……あまり詳しく書くものではないのですが、確かにHくんが巻き込まれた被害者として書かれていました。(それでここでは本名を書くのは控えています)
Nくんは同じ学校の出身で、ずいぶん落ち込んだんでしょう。それが生き返った、いや仮に同姓同名の別人だとしても、そんな人が親切にして仲良さそうに近づいてきたら、たしかに気味が悪いですよね。
もちろん全部が全部、納得したわけではなかったので、翌日、自分はHくんに会いに行ったんです。Nくんが話していた「Hくん」が亡くなっていること、そしてHくんにビビっていることを伝えました。彼は何か勘違いしているんだろうけど、とも言いました。
すると、Hくんはニコニコしながら「Nは他に何も言ってないの?」と聞き返してきました。
自分は「Hくん」は事故にあったらしいと言いました。
それを聞いて、Hくんはこう言いました。「Nはその事故現場にいたんだよ。だから、あの時に本当は何が起きたか知ってるんだ。でもあいつ、俺に死んでほしいのかな。それはそれでいいことだけども」
どういう意味かはよく分かりません。ただ次の講義が始まるので、この話はそれきりになってしまいました。
それで、Hくんはこの日以来、姿を消してしまったのです。SNSグループからもいつのまにか消えてしまい、さっぱり連絡がつかめなくなってしまいました。
頼みの綱はNくんでしたが、彼とも何度か連絡を取ったあと、そのうち疎遠になりました。もともとみんな親しくはありませんでしたし。
Hくんが何だったのか、未だによくわかりません。
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