都市に散骨するまで。
君足巳足@kimiterary
思いつくまま散らばったまま
第一回イトリ川短編小説賞、参加者の人もそうでない方もまずはお疲れ様でした。
「都市に散骨する」については正直かけた労力とか文字数とかからの予想よりはるかに読まれていて、え、コスパがいい……みたいに感じております(ありがとうございます)(みんな骨好きだな)。
というわけで、なんでこうなったか、実際どんな感じに書いたのか、雑に書いていこうと思います。
■ネタ出し
まず「都市に散骨する」ってフレーズなんですが、オリジナルでは全くなくて、とある方の、「都市に散骨するのって違法なのだろうか」というようなツイートからの借用です。わりと普段から「これだけで小説じゃん?」みたいなフレーズを見かけると気まぐれにメモっておくタイプなので、今回もそんな感じでメモから持ってきました。最近メモった例だと「大親友の彼女目を閉じれば光るタイプ」←純恋歌ランダム生成診断メーカーより、とか。(目を閉じると光る女、かわいいですね)(いつか書くのかな……?)
さて話を戻します。
「都市に散骨してほしい」はたった一つの望みとしてすでにキャッチーなので、あとは都市を決めて散骨するだけでした。
生まれも育ちも千葉の民なので都市は無難に東京。「山手線の駅をランダムに抽選して歩く」という馬鹿な遊びを何度かやった(水曜どうでしょうの東京ウォーカーの影響)ことがあり、せっかく東京なら歩かせるしかないなと、山手線一周散骨の旅に企画が決定。
あと、掌編の最後の一文を感情表現で締める、というのをやってみたかったので、それだけ決め打ちして書き始めました。
なんでやってみたいと思っていたかという話もしておくと、古川日出男に「プーラ」という掌編がありまして、めちゃくちゃ綺麗に「切ないよ」で終わるんですよね……これはパク……真似るしかないなと前々から思っていたのでやっちゃいました。別に感情表現であれば楽しいでも嬉しいでも悲しいでも(丸パクリになってしまう「切ないよ」でなければ)よかったのですが、結局この主人公は最後に寂しくなったようです。
いいじゃんこれ、って思ったものは結構そのまま軽率に使っていくタイプなので、何かこう誰かのなんらかの不興を買ったりしているかもしれませんがまあそんなものです。個人的には何かに似てるとかパクリとか気にせず気楽にやればいいと思います。どうせ完コピなんてできないので。
■本文
今回はほとんど迷わず一発書きで決まったケースです。それでもタイピング遅いマンなので3時間くらい?かかってますかね。測ってないので自信ないですが、とりあえず夕方から夜にかけてで書き上げたという記憶があります。
1行目は情報提示として綺麗に書きたくて、結構詰め込んだなという印象ですね。その後も説明が続いてしまうので、なるべくただの説明にならないように細かい手の動きを入れたり、ずれたモノローグ(この米、食えんのかな?とか)を入れてみたりしています。
主人公の両親について、過去については深くは書かないことに決めました。文字数とか面倒臭さとかの理由も大きいんですが、とにかく主人公と妹との関係性に終始したかったし、別に親子の確執が解消するような話ではないので。むしろ、いきなり放り込まれた異物としての物言わぬ遺骨と、付随する感情(ここでは主に怒り)をどう処理するかというのが主題の話。
で、こういうところに作者の性格が出るんだと思うんですが、なんかむかつく異物が日常にぶち込まれた場合、とにかく淡々とタスクをこなして、肉体的に疲れて、馬鹿馬鹿しくなって出てくる笑い、みたいなところに落ち着かせたくなる性分です。問題は根本的には何も解決してないんですけど、そんなことより笑えることの方が大事。
そんなわけで山手線巡礼編。出発駅はぼかせばよかったなと後悔してますね。それぞれの駅を細かく描写するわけではないので、余計な情報です。とにかく山手線=東京=都市、の等式の方に集中させるべきでした。引き算が下手。逆に何万字か書くとなればルート完全に決めてランドマークをつないでいくようにしたんでしょうけど。
一日でできるわけないというのは実体験としてもわかってたので一泊してもらいました。ここも一つ反省ポイントで、シャワーでなんとなく憑き物を落とすって使っちゃったんですけど、これ「日に焼けたこと」と「火で焼かれた骨」を重ねる方がスマートですね。今思えば。反省会はやってみるものだなあとなります。(そもそも推敲無しで出すな)
そして後半。「あと15、14」ってカウントダウンは古川日出男「ハル、ハル、ハル」のパクりですね(もう誤魔化す気がない)。軽率に真似ていきたい。そして「ハル、ハル、ハル」は最高の短編なので軽率に読んで欲しい。
描写を食べ物縛りにしたのは、歩くことや考えることや祈ることの「中断」「休憩」だけを書けば別に行間はいらないかなと思ったし、それをやるなら徹底的にそうしようと思ったからですね。暑いし汗は出るし腹は減るし疲れる、考え事ばかりしてられないし怒ってばかりもいられないし飯は旨い、みたいなことを大事にしたい。
「(タリーズにいた)おおきなくま」と「寿司」は妹の好きなものなので前半との対になるように登場。ラーメンとビールは、絶対欲しくなるだろと思ったのであげました。肉体性。あ、黒ラベルの星に触れるなら死んだら星になるって話が入れられたりしなかったかなと今思いました(ホトケサマ一重で下膨れだからなりたくないって台詞はお気に入りですけど)。
「やっと泣けた」まで書いて、ここで終わってしまうとほんとにスケールの小さい話になってしまってハッタリが効かないなと思ったので未来の妄想を突っ込みました。スケールを大きくしたい。個人的には1000年後って言われるとそれだけでアガってしまうんですがこれはなんなんでしょうね。(全然関係ない布教をしますがスイセイノボアズ「3020」を一人でも多くの人に聴いて欲しい)(聴いて)
そこから先は予定通り終わりましたということで。
■書いた後
思ったより褒められたのでわーい(雑)。
ありがとうございます。
あと散骨じゃなくて埋葬だよなの話はなぜか一瞬妙な盛り上がりがTwitterでありましたね。書いた本人的には凡ミスなのであれなんですけど。骨を砕いて撒くバージョンだとどうなってたんでしょうねこの話。
褒めていただいておいてあれなんですけど、書いた本人的には「この話一体何が面白いんだろうな(好きだけど)」という思いも結構あって、こういうものばかりガンガン作れるかというとそういう気はしないんで……次はどうしようかなの気持ちもあります(いや東京をぐるぐる徒歩移動する話はたぶん無限に作れるんですけどそこが面白いわけではないからね……)
そんなわけで、自分で「狙ってそうした」部分については上で言語化してみましたが、どうでしょう。いやお前そこじゃねえよ作者のくせにわかってねえのかみたいな面白さがあったら教えてください。お手数ですが。
そんなわけで、この辺りで終わろうと思います。半分より長くなっちゃいそうなので。
ではまた、どこかの川で。
都市に散骨するまで。 君足巳足@kimiterary @kimiterary
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