第42話幕間11
またバルド様の性根をエルザ様が叩き直してくださった。
もうテオドシウス王家もアルベルト家もエルザ様に頭が上がらない。
バルド様の天賦の才は、戦国の大英雄と呼ばれた陛下に匹敵すると思うのだが、如何せん御心が優し過ぎて悩んでしまわれる。
女を教える時期を誤まった、俺の一生の不覚だ。
「あんたもグズグズ考えすぎだよ!
男なんて女の尻に惹かれているくらいで丁度いいんだよ。
自分を顧みればそれくらいの事は分るだろう。
さっさと配下の者の訓練でもやってきな!」
アーダにどやされて、家を追い出されてしまった。
結婚する前は、女忍者にしてはおしとやかな女だと思っていたのだが。
女はみんな魔物だというのは本当の事らしい。
まあ、あれでも閨の中ではとても可愛い所もあるのだが……
「家の前で馬鹿な事を考えていないで、サッサと訓練してきな!」
俺の家桜は何でもお見通しのようだ。
バルド様とエルザ様もこういう感じなのかもしれないな。
バルド様がエルザ様と出会い結ばれた事は、本当に幸運だった。
そう思えば、シュレースヴィヒ伯爵に恥をかかせるわけにはいかない。
シュレースヴィヒ伯爵が生きている間は、皇国の転覆をはかるのも、皇国を内から乗っ取るのもやめておこう。
ジャスワン様が壮年になられて、押しも押されもしないテオドシウス王家の当主となられる頃には、シュレースヴィヒ伯爵も死んでいるだろう。
その頃には皇国に入り込んだテオドシウス王家とアルベルト家の分家も、かなりの地位についているはずだ。
皇国を混乱させずにアリステラ皇室を滅ぼし、テオドシウス王家が皇国を乗っ取る事も不可能ではないだろう。
その頃には俺もアーダも死んでいて、テオドシウス王家が天下を取るところを見る事はできないだろうが、民を苦しめるような政権交代をバルド様がお認めになられるはずもないし、こればかりは仕方がないな。
問題はヴィルヘル様とクリス様が、自分の代でアリステラ皇室を滅ぼして建国王に成る欲望を抱くことだ。
今から具体的な計画を立てて、お二人が暴走しないようにしておかなければならないが、まあ、大丈夫であろう。
エルザ様の目が黒い間は、お二人も動けないような気がする。
「おい、お前ら、今からバルド様の所に行って稽古をつけてもらうからな。
少しでも手を抜いたらエルザ様の雷が俺にまで落ちるんだからな。
俺に恥をかかせるんじゃないぞ!」
没落貴族バルドの武闘録 克全 @dokatu
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