第37話 リウ君、平穏な日常に復帰する

第37話 リウ君、平穏な日常に復帰する



 職号クラスコードというのは、持っているとその〝クラス〟に属するスキルが使えるのだ。

 でも発動させることもできて、それをすると変身できる。


 うーん、違うか?


 発動するとそのクラス特有のバフ(強化とか補助とか)がかかる感じかな。

 そのバフはその時だけ使える職号スキルだったり、魔法的な防御だったり、能力強化だったりするわけなんだけど、その効果が身に纏うような形で見えたりする。

 それが装備っぽく見えるんだ。


 父さんの称号クラスコード『拳聖』は光の鎧のようだったよね。


 で、僕の周囲を飛び回っていた光が収まるとそこには光の法衣のようなものを着た僕がいたわけ。

 頭の後ろに浮いている天使の輪見たいなのがポイント。

 

 あと元がすっぽんぽんなので、ところどころ恥ずかしいのもポイント。言ってみれば身に纏う感じの魔法陣なのさ。

 うん、これはちょっとまずい。

 モザイク案件まではいかないと思うけど。


「リウたんクラスコード使えたんだ…」


「うん」


 フウカ姉がびっくりしている。

 でもクラスコードって、クラスがあれば使えるのでは?


《その通りですよー、でもたくさん練習が必要ですよー。

 荒れも魔法見たいなものですよー

 使いこなすのは大変ですよー》


 なっ。なるほど。

 と言われてもよくわかんない。でも立ち会うのがフウカ姉だけだったのは正解だったというわけだ。

 これはあまり大っぴらにしない方がいいということで覚えておこう。


 それ以前に微妙な露出が恥ずかしい。


《クラスコードのバフはランクが高いほど露出が減るですよー、聖者は希少級だからちょっと露出があるですよー。

 でも少ない方ですよー》


 つまり服を着ているのが前提なのね。


「さて、スキル【祝福】を起動します。

 エスタル・アーゼ神に代わって、彼の神の祝福をデアネイラちゃんに授けます」


 これは神様に代わってちょっとした祝福を授けることができるスキル。

 でも今回は事前に神様と打ち合わせしたからちょっと違うのさ。


 僕は指先でデアネイラちゃんの胸元をチョンとつついてスキルを発動させる。するとそこにエスタル・アーゼ神の聖印が浮かび上がるのだ。


「これは神様の祝福です。デアネイラちゃんが何かを必要としたときに、この祝福は何らかの形でデアネイラちゃんを助けるでしょう」


 デアネイラちゃんがびっくりしたように僕を見ている。

 所々シースルーなのであまり見ないでほしい。


 御風呂だからすっぽんぽんで、全く平気だったのに、一部が隠れるとすごく恥ずかしくなるのはなぜ?


 とか思っているうちに、聖印がほどけて三つに分離して、デアネイラちゃんの体に吸い込まれていった。


「よし、しーぽん鑑定だ」


《おう、ですよー》


 その結果、デアネイラちゃんに新しいスキルが生えていた。

【水鏡の盾】【真実の鏡】【隠蔽】の三つだね。


 水鏡の盾は『一定以下のあらゆる攻撃を跳ね返す』というもの。真実の鏡は『デアネイラちゃんにだけ目の前の人の鏡像が見えて、鏡像はその人の隠した本音を勝手にしゃべる』というものだった。

 隠蔽はこの二つを隠すスキルだね。


 さすが神様分かってる。


「あとついでだね」


 僕はフウカ姉の胸にも祝福をかけた。

 こちらは神様と相談してないから、普通の祝福だと思う…あれ?


【聖乳】あなたが愛する幼子にその乳を与えなさい、いかなる傷も癒すでしょう。

【求めよ、さすれば導かれん】愛しいと思う誰かを思うとき、その相手がどんなに離れていても居場所が分かるでしょう。


 なんかどっちもすごいスキルなんですけど…


 しかも二つ目がやばくね? フウカ姉にこのスキルって…やばくね?


《やばいですよー、ストーカー御用達ですよー》


 しかも本人にはどんな力か分かるみたい。


「リウたん。ありがとう」


 うおおっ、感極まって抱き付かれた。

 オッパイが、おっぱいが、息が…逝き…


《キャー、リウ太がピンチですよー、回復魔法を使うですよー》


 僕はデアネイラちゃんの楽しそうな笑い声を聞きつつ意識を失った。

 たぶん力の使い過ぎが原因だな。


 おっぱいこわい。


 ◇・◇・◇・◇


 翌日、フウカ姉ちゃんとデアネイラちゃん。そして公爵家からつけられたデアネイラちゃんの側近の人たちがまず旅立った。

 爺ちゃんの弟子たちの中で信用できる人たちだそうだ。頑張ってほしいものである。


 ちなみに竜爺も一緒。


『しばらくはフォローせにゃなるめえ…』


 とか言ってた。それに爺ちゃんとタタリの話をしてたから、その報告もあるのだろう。今のところできることはないとしてもね。


 そしてその後、僕たちも爺ちゃんの車に乗って村に向かう。


 ここでの爺ちゃんのお仕事も終わったからだ。ふらふらしているように見えてもこの短期間で領主様の仕事を片付けたのだからすごいことなのだと思う。まあ、見てないから詳しいことは知らんけど。

 たぶんすごく頑張ったんだと思う。


《リウ太はいい子ですよー》


 そして帰りは何の問題もなく村に到着して、父さんやお母ちゃんに温かく出迎えられた。

 そして当然。


「ステフー」


 僕はお母ちゃんに抱っこされたステフに突進。

 しようと思ったらお母ちゃんがステフを下におろした。

 靴を履いている。


 まさか。


 よたよたとしながらも歩み寄ってくるステフ。笑顔がマジ天使。

 そう言えば僕が出かけているうちに一歳になっていたのだ。


「にー」


「うおおおおおっ、ステフがたったーーーーーーーっ!

 ステフが歩いたーーーーーーっ!

 しゃべったーーーーーっ!!」


 超うれしいじゃん。


 思わず駆け寄って〝むきゅーっ〟と抱きしめる。子供は大きくなるの早いな。

 誕生日を祝ってやれなかった兄ちゃんを許してくれ。

 全部あのジジイが悪いんだ。


《きゃーーーーーっ、つかまったですよー、助けてですよー》


「あっ、しーぽんが捕まった」


 ステフがしーぽんを捕まえて、また口に持っていく。

 絵面としては赤ちゃんに食べられる怪獣王だ。うん、面白い。


 きゃっきゃ喜ぶステフ。父さんとお母ちゃんが苦笑している。

 二人にはしーぽんは見えないけど、いつものことだから大体察しているんだ。


《リウ太、助けてですよーーーーっ》


 えーっ、そんなこと言ってもーかわいいしー。

 あっ。


 僕がしーぽんを見捨てたところでしーぽんが思いもよらない攻撃に出た。


《うりゃ、ですよー》


 ぽよんっ、ぽよぽよっ


 しーぽんが苦肉の策として影の箱庭世界(空間収納)からドラゴンの卵を取り出し、そして放り投げたのだ。


 卵は石のような硬い印象を裏切って、地面で跳ね返る。まるでゴムまりのように。

 そして卵型なので当然変な方向に撥ねる。


「うあ?」


 それにつられてステフが興味を示した。そしてそのまま卵に抱き付いた。

 見事なタックルだったと言っておこう。


「よかったね、しーぽん、抜け出せて」


《よだれでべとべとですよー、汚れちまったですよー。汚れちまった悲しみを~どう表現するですよー》


 なんかぺちょッとした感じで地面でうなだれるしーぽん。

 良かったね、普通の人に見えなくて。


 さーて、これで一段落だ。いえーい。


 というわけで僕の冒険の旅『大都会で冒険だの巻』は一先ず終わりです。

 読んでくれてありがとう。

 そんでもってたくさんの応援ありがとう。


 いろいろあったけど乗り越えられたのはみんなの応援のおかげです。


 また機会があったら…ってまあ、たぶんほっといてもいろいろあるんだと思うんだけど、お話しすることができたらまたお目にかかりたいと思います。


 というわけで今回のお話はここまで。

 第二章『完』です。


 またねー。


 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


 というわけで、リウ太の二章はここまでとなります。

 リウ太の言う通り、また話すような事がたまったらお目にかかりたいと思っていますが、しばらくはお休みをいただくことになります。


 ああ、でも、閑話を少し、出したいかな。


 リウ太の生存報告みたいに月一ぐらいで。


 というわけで皆様、応援ありがとうございました。

 本当にたくさんの人に応援いただいて、作者はとっても幸せです。


 またいつかリウ太を見かけましたら、遊びに来てやってください。


 それでは皆様、ごきげんよう。


 ぼん@ぼうやっじ。


 追記。この章のタイトルは『リウ君のそこそこ平穏な日常』です。『大都会で冒険だの巻』ではありません。


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転生して捨てられたけど、リウ君は日々是好日。 ぼん@ぼおやっじ @74175963987456321

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