明けない夜は無い

 世界に平和が訪れたその日、少女と少年が世界議事堂の階段を駆け下りていった。何人かの人々が、2人を目撃したと証言したが、彼らのその後の消息は誰にも確かめることが出来なかった。


***


「待って!待ってよ!」


 少女が少年に向かって叫ぶ。確かにさっき、2人で誰も知らないところまで逃げようって言われたけれど、嬉しかったけれど、生まれてからほとんど初めて走ったわたしの体力を、彼は全然考えてくれていないと思う!


「待って…待ってったら!もう!」


 大きく息を切らしながら、必死に叫ぶわたしの声にようやく気が付いたのか、少し先を走るみどり色の眼をした金髪の少年が、その場で駆け足を続けながら、振り返って少女に叫ぶ。


「ホラ!早くおいでよ!…あ、そうだ。そうだよ。名前を聞き忘れてた。こんな大事なこと、忘れちゃいけないよね。ねえ。名前!名前ちゃんと聞かせてよ!ねえったら!」


 黒髪黒目の少女が立ち止まって、頬を赤らめながら答えた。


「わたし…わたし…アヤ!アヤって言うのよ!」

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パンドラの匣 QAZ @QAZ1122121

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