異世界転生物で、いつも不思議なのは会話が普通に通じる事でした。
そりゃまあね、テレパシーで心のやりとりが出来る能力者の設定ならいざ知らず。
イキナリ外国に飛ばされても言葉の壁で苦労するのに、なんで異世界に転生して即会話が出来るんだろうと。
どう見ても中世ヨーロッパ風なのになんで日本語喋ってるんじゃい?ここは日本か?と。
じゃあ、会話が通じない時に、どうすれば良いのか?その方法の一つが見事に描かれています。
異世界転生して異種生物との心のコミュニケーション。相手のトカゲは結局最後まで日本語なんか喋りません。
「ギャギャギャ」「カチカチ」「ギャ」コレでちゃんとコミュニケーション出来てる、しかもサバイバルしてる。
しかも最後はお互いの気持ちまで通じ合ってるのが読者にも見て取れるのです!
異世界物を書く人には是非勧めたい一冊ですd(^_^o)
異世界に人間種が生息していると誰が決めたのでしょう。
この作品で少年が飛ばされたのは、特異に進化した爬虫類や獣は居るけれども人間の居ない世界。こうなって、ひとりぼっちになっては、生きていけません。
けれども主人公は生きていきます。
僕はこの小説をバディ物として読みました。主人公と、とあるキャラ、というにはキャラが薄いというか台詞もないのですが、その一人と一匹が、生き延びるために手を組みます。
でも、それでは異世界からやってきた主人公が一方的に利益を享受しています。その不公平への答えは、結末に集約されています。
信頼できる相手がいる。そのことがなんと安心感を与えるのでしょう。その心強さを知る作品です。
この作品は、あえて「世間が好みそうな」要素を外している(と思う)。
だからこそこの作品は、「普遍性」を獲得している。老若男女が問題なく読める作品。世界名作劇場的な格がある。一見派手さはないようにも思えるが、それゆえに最高に挑戦的な作品とも言える。
チートもハーレムも(そもそもヒロインも)ないが、物語を通して厨二的な雰囲気も全くなく、ひたすら実直に異世界を生き抜いていく二人。まったくスカしたところのない素直な主人公と、言葉の通じないトカゲのコンビは、とてもとても素晴らしい。
そう思わせるのは、この作品の確かな小説としての力。細かな感情推移に、納得の表現たち。
ギャグにもシリアスにも傾くことなく、必死で瞬間瞬間を生き抜く姿は、たまらなく「ポジティブ」である。
映画化望む🐸
蛙の国より。
周りの顔色を窺い、言いたいことも言えない気弱な少年、優輝。
彼の転機となるのは異世界への転移なのですが、そこは言葉はおろか表情すらも読みがたく、外見も人とは全く異なるトカゲたちの世界。
生きることに本気にならなければ死んでしまう過酷な自然のなか、気遣ってくれるような素振りを見せるトカゲのヌラと少しずつ絆を深め、生き抜きながら成長していく姿が読者の心を熱くする成長譚です。
運動の苦手で、当初は元の世界に帰りたくて泣いていた優輝は、力強く生きる術を、言葉は通じなくても心を通わせる人間らしさを、大切なものを見捨てない心の強さを少しずつ手に入れていきます。その人間らしさを与えてくれるきっかけが、最後の最後まで何を言っているかわからないトカゲなのを考えると。言葉も機微も分かる人間との絆を結ぶのなんて、互いが本気になればもっと簡単で誰も傷つかないはずなんですよね。
人との向き合い方を、改めて考えさせられた作品でした。
ところで、蔦のロープや各種の生物など、サバイバルのための描写が細かく、世界に引き込まれました。その重厚さが、過酷な環境を演出してくれていて素敵です。