エピローグ其の二:城のその後

 トリコ・チンコール城は完全に崩壊し、あたり一帯に大規模な洪水をもたらした。そしてむろん警察による捜査が入ったが、めぼしい証拠を見つけることはできずその代わりに児童ポルノが大量に見つかった。そのポルノが見つかったことを捜査本部が上にあげた瞬間、何者かの圧力で捜査は中断されることになる。

 尾宮総裁の死体は上がることはなく、どこかで生きているのかもしくは完全に消滅したか?おそらく前者だと思われるが、トリコ・チンコール城の精が地獄に送ったのかもしれない。

 そんなことが余裕で考えられる恐ろしい城であった。

 そしてそれから一年後。

 この城跡に花束を持った小柄な男と同じくらいの背丈の女の子が現れた。

 そう、大怪盗ビッグディック。その人である。

 そして隣にいる女の子は尾宮悟りである。

 尾宮悟りは親権者が不在になってしまったためビッグディックの家族が引き取り現在は一緒に暮らしている。そして今日はこの城に侵入しPTAを盗んだその日である。

 悟りは父親のため。

 ビッグディックはあの時死んだスーパーの店長のため。

 花束をささげに来ていた。

 そしてしばらくの黙とうの後手を合わせてその場で立ち尽くす。ビッグディックの脳裏には様々な思い出が廻っていた。

 野球拳で半裸になったこと。

 クイズでスナッチを脱がせたこと。

 スーパーでのレース・・・。

 正直まともな思い出はほとんどないが、彼にとっては真っ当な思い出なのだ。

 一方スナッチは高校を卒業後、一流大学の工学部に入り真っ当な生活を送っている。

 しかし、ビッグディックとの縁を切ることはなく何か盗めるモノはないかと探していた。むろん研究資金のために。

 見つかるまでの間ビッグディックは悟りが相続した尾宮勝悟の遺産に縋り付いていた。

 悟りとしては別にそれだけのことをしてくれたしいいやと思っている。

 そして長い黙とうが終わった後、悟りが口を開いた。

「お父さんにまた会えますかね」

 ビッグディックにとっては少々意外だった。

「なんで?」

「あの時のパスワードの数字・・・私の誕生日だったんです。お姉ちゃんとパスワードを調べるとき真っ先に外してたんですけど・・・」

 ビッグディックはそう言う事か。と思った。そして悟りが続ける。

「なんだかんだで私の事を思っているところはあったんだと思います。まあそれ以上に最低ですけど・・・できれば地獄で反省してまともな父親になってまた会いたいですね!」

「そうだね!悟り!」

 そして二人は帰っていった。電車を乗り継ぎ家に帰る。

 それぞれの部屋に行くとビッグディックは勉強を始めた。大検を取るために。

 彼は怪盗という仕事の不安定さに気づき、高校卒業の資格を取るために日夜勉強していたのだ。最初こそ両親は驚いたがだんだんとその気概を理解していった。


 そして奥の棚の奥のほう。そこに悟りからもらった宝石の髪飾りが鎮座している。

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大怪盗ビッグディックとトリコ・チンコール城の秘宝 そーそー @mi666

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