英会話教室に行った話

河童

The Canary Wharf 的な気分

 夜空がきれいな街。


 40階から見える街の夜景がきらめいて見えるのは、このレストランフロアの雰囲気がそうさせているのか。それとも、それをたくと一緒に見ているからなのか。


「でさぁ、春香はるか。英会話の先生が難しいこと言うんだよ」

「拓がそう思ってるだけじゃないの?」


 拓は仕事がちょうど終わったところらしくて、スーツのまま私をディナーに連れてきてくれた。本人は恥ずかしいって言ってるけど、これがまた似合ってるからズルいのだ。しっかりと着こなしたスーツに、彼が時折見せる真剣なまなざしが見事に均衡する。そんなことをいつも意識してるからなのか、付き合って数年が経つのに二人で話すのはどこか落ち着かない。


「意外だったなー、海外には興味ないって前に言ってたのに。なんの前触れもなく英会話教室行ってきたとか言うんだからさ、私驚いちゃった」

「うん? 俺は外国とか興味ないよ」

「じゃあなんで?」

「春香こそ前に言ってたじゃん。ロンドン行きたいなー、って。二人で行くんだったら、最低でも俺は喋れるようになってないといけないだろ、英語」

「えっ?」


 私が戸惑う様子を見せると、彼はわざとらしく微笑んだ。

「新婚旅行、ロンドンはご不満でしょうか?」

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