徒然ガールズしりとり(あるいは行き先を決めるためのとりとめのない会話を一幕)
望戸
徒然ガールズしりとり(あるいは行き先を決めるためのとりとめのない会話を一幕)
「じゃあ、次の勝負ね。お題は?」
「名前は『知ってる』けど見たことのない、見てみたいもの」
「見てみたいモノね。しりとりの『り』からだから……り……リス園」
「アンタはしりとりのルールを覚える気あるの?」
「や、だって行ってみたくない? リス園。リスめっちゃいるんだよ?」
「というかそもそも私達、リスを見たことすらないじゃない」
「……『リス園』じゃなくて『リス』にすればよかった」
「じゃあ、『リス』ね。す……簀巻き」
「すまき? なにそれ?」
「人間を海に沈めるときの作法だって」
「こわっ! ……き……キメラ」
「あー、あのバイオテクノロジーの権化みたいなやつ」
「やることマジえげつないよね、簀巻きもそうだけど」
「好奇心旺盛なんでしょ。……ら……ラップバトル」
「る? る……ルパン……一族」
「その逃げ方ありなの? 一族って」
「アリでしょ。初代に限らず子孫もいろいろいるらしいじゃん」
「怪盗って要は窃盗犯でしょ? あんなに大っぴらに情報を明らかにしていいのかしら」
「絶対につかまらないっていう自分への自信がヤバいよね」
「羨ましいくらいだわね。『一族』の、く……クレームブリュレ」
「レモンスカッシュ! 見たいっていうか飲んでみたい」
「んん、まずレモンがわからないわね。要素がわかれば再現できそうなものだけど」
「だいたい▲☆◎★みたいな感じじゃないかな。要は酸味がありゃいいんでしょ?」
「レモン農家が聞いたら怒るわよ、それ」
「レモン農家も見たことないなあ。どんなプラントなんだろ」
「次は『しゅ』? うーん、シュークリーム」
「甘いものが続くじゃん。さすがJKの頭脳」
「よくわからないけれど、この人種の思考形態をトレスしているとなぜか際限なく食への欲望が湧き上がってくるのよね。しかも主食じゃなくて間食」
「それサンプルとして適切なの? 後で怒られない?」
「まあ、JKだって人類の一種であることは確かだし……」
「ならいっか。いいのかな? うーん、……武蔵野」
「武蔵野」
「知ってるけど行ったことない」
「……本当。こっちも駅名としての知識しかないみたい」
「マジで? うちらじゃなくて、そのカラダの持ち主の方が?」
「社交的で活動範囲が広いと思ってピックアップした割に、どうも行動が偏ってるのよね……」
「ま、まだ一人目だしね。それじゃ、次は武蔵野で適当な人類を捕まえますか」
「次はオスがいいわね。性差での認知の違いに興味があるから」
「えー、かわいいのがいいなあ」
「かわいいオスを選べばいいでしょ」
捕虜の脳を用いたブレインストーミングは、その捕虜が暮らしていた生息域の文化を手っ取り早く知るためによく用いられる手段である。脳の表面に貼り付けた電極と自分自身の思考回路をリンクさせることで、捕虜の知識をあたかも自分の知識のように『思い出す』ことができるのだ。
繁華街で捕まえた二匹の女子高生はもう用済みである。邪魔な肉体は貴重な栄養源として蛋白質ストッカーにぶちこみ、脳だけを念のため保存液に漬け込んで、侵略者たちは一路武蔵野へ向かう。
「……ところで、武蔵野ってどこ?」
「いつもの駅からだと隣のホームだって」
「ステルス機で空から行くのに全く役に立たない記憶をありがとう」
「ネットで地図見るかあ」
「さっき試したけど私たちの外皮じゃスマホ反応しなかったじゃない」
「そうだった! さっきのJK、指だけ残しとけばよかったね」
「痛恨のミスだわ……」
徒然ガールズしりとり(あるいは行き先を決めるためのとりとめのない会話を一幕) 望戸 @seamoon15
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