歯車の入れ違った世界で探し人〜姉を探して三千里〜

イザナミ

しんだひ

 「あぁーお腹すいたぁー」


 「後もう少しよカイト、我慢して」


 「おんぶ〜〜」


 「もぉ仕方ないわねぇ、よいしょっと」


 ルミシア王国の幼い住民カイトと5歳程歳の離れた姉サレンダは国から10キロ近くの小さな学校へと毎日あるって通っていた。

 その道はとても荒く険しい崖に囲まれた道のりで普通の人達は別の道から車で遠回りするほどだ。

 そう、2人の家庭は2年前に事故で母と父を失ってから貧しい生活をしていたが、2人での生活はとても楽しいものだった。


 そんなある日、下校するためいつも通り2人で暗闇の中をランプを灯して歩いていた時



 「ねぇ、おねーちゃん。今日の夕食何にするのー?」


 「えーとね、今日は学校の授業でじゃがいもが沢山取れたからカイトの大好きな蒸かし芋とかどう?」


 「やったぁ!ふかし芋だ!蒸かし芋!蒸かし芋!だーいすき!はーやくかーえろ!」


 カイトは大喜びで走り回る。


 「こら、そんなにはしゃぐと怪我するわよー」


 「芋!芋!芋!芋!」


 カイトは調子に乗り崖の端にある景色が見渡せるところに飛び乗る。そこは景色が良いと有名なスポットで、人が落ちないように木で柵を建てていた。


 カイトもよくここから気色を眺めていたが、その時は違った。

 調子に乗ったカイトの目には看板に大きく書かれた”工事中”の文字が映らなかったのだ。


 「あ、危ない!」


 ガタガタッ


 下の岩が崩れカイトはバランスを崩す。


 グラグラッ


 「あっ!お姉ちゃぁぁぁぁあああん!!」


 「カイト!!!」


 ────────


 「は!?ぜい、ぜい、ゆ、ゆめか?

て、は?こ、ここは?」


 目を覚ますとそこは真っ白でどこまで見ても何もない世界が広がっている。


 「目を覚ましたか。カイトよ」


 「だっ、だれ!?」


 どこを見渡しても誰もいない。けれど頭に直接声が入って来ている様な嫌な気分だ。


 「まぁ混乱してもしかた無いな。

お主はあの世界での役目を終えたのだよ」


 「や、役目を?」


 「そうだ、父母が亡くなりお主が崖から落ちて亡くなるまでがお主の役目、運命だったのだよ」


 記憶が湧き上がってくる。


 「あ、おねーちゃんは!?」


 「姉だと?その様な者は御主の人生に関わりがないはずだが...

そうか、それで...」


 「おねーちゃんは!?」


 「お主、今から話すことを落ちついて聞けるか?」


 「聞けるから!教えて!」


 しばらく間隔が空き、声が再び頭の中に通じてくる。


 「お主のいた世界は滅んだ」


 僕には意味がさっぱり分からなかった。

 普通の人は理解出来ないだろう。


 「悪い、こっちの不手際だ。

 世界という物は小さな歯車が沢山組み重なり構築されている。そしてお主が死んだように人もその歯車の様に運命が組み込まれているんだ。

 けれどそこに全く違う大きさの歯車がハマるとどうなるのか...そう、バラバラに崩れてしまう。

 今回の場合お主の姉はあの世界で存在する筈では無かった、何かの手違いで他の世界の歯車と取り違いになっていた。と言う事だ」


 「不手際って...お姉ちゃんを救い出して世界が滅ぶのを止める方法はあるの?」


 カイトは決心していた。この誰か分からない人の信じにくい話を信じ姉を救い出すと。


 「お主...1つだけある。だが...」


 「教えて!僕はおねーちゃんを救い出すんだ!」


 「ふむ。仕方ない、何を言っても変わらなそうじゃな。その決意しかと受け取った。」


 僕の身体が突然光り出し、宙にぷかぷかと浮き出す。


 「うわぁわぁわぁぁあああ!」


 「向こうの世界でお主が行って世界が滅びないギリギリの3年以内に御主の姉と入れ違ったもう片方の歯車を見つけ出すんだ。

 向こうの世界で使えるだろう道具を次元カバンに入れといたから使ってくれ。

頼んだぞ!青年」

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歯車の入れ違った世界で探し人〜姉を探して三千里〜 イザナミ @izanamipopo21356

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