お姉さん
僕は
桜が咲いたころから、高校生ぐらいのとっても綺麗なお姉さんを見かけるようになった。僕、好きになっちゃったみたい。朝、決まった時間に公園の前を通るので、思い切って「おはよう」って挨拶してみようと思ったんだけど、僕の妹が「お兄ちゃんは私以外の人と仲良くなっちゃダメ!」って駄々をこねるから、声をかけられずにいる。毎日、見てるだけ。
何日か前の夕方、少し陽が暮れてきたころ、お姉さんが公園のぶらんこに一人で座ってたの。雨がポツポツ降って来たけど、ずっとブランコに乗ったままユラユラしてた。僕は滑り台の下で妹と雨宿りをしていたんだけど、チラチラ見てたら、お姉さんのほっぺが濡れてたんだ。全然楽しそうじゃなかったし、きっと悲しいことがあったんだろうなと思って、僕、ポケットからハンカチを取り出してお姉さんに差し出してみたんだ。お姉さん、何も言わずに立ち上がって、公園から出ていっちゃった。僕のハンカチ、汚しちゃいけないと思ったのかな。
次の日の朝、いつもの時間にお姉さんが公園の前を歩いていったから、勇気を出して、お姉さんに「おはよう」って声をかけてみた。お姉さんは僕の顔を見て驚いていたけど、子どもだからか何も言わずに駆け足で行っちゃった。もしかしたら恥ずかしかったのかもしれないな。
2~3日経って、いつもの時間にお姉さんが歩いてきたんだけど、目を離したすきに妹が公園から飛び出して、目の前の横断歩道の真ん中まで行っちゃったんだ。向こう側を散歩している犬を触りたかったのかもしれないね。スピードを出したまま車が走ってきたから、思わず僕が「危ない!」って大声で叫んだら、お姉さんが気づいて妹を助けてくれたの。そのあと叫び声がして、人がいっぱい集まって来た。救急車も来たんだよ。
お姉さんは、それからずっと横断歩道の真ん中にいる。「おはよう」って挨拶できるようになって、僕、すごく嬉しいな。
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