萌えどころ(バイクの場合)


 うっかりしていて、ガソリンの残量を示すゲージが残り2つになっていた。車を走らせ、ドライブがてらにちょっぴり遠くのガソリンスタンドへと向かう。出始めたころは苦手だったセルフ給油も、いまでは挙動不審者どころか、すっかりお手の物だ。


 走行距離メーターを0に戻し、座席の下にあるレバーを引いて給油口のドアを開ける。


『いらっしゃいませ。お支払い方法と、油種をご選択ください』


 はいはい、レギュラー満タンね。いつもの手順で油種と支払い方法を選択していると


ブオン ブオン


いかにも格好良さそうな音を立てて、バイクが隣の給油スペースに入って来た。

 バイクはあまり詳しくないけれど、①やっぱり「大柄な男性が大きなバイクに跨っている」のは萌えポイントが大きい。200ccクラスでも格好良いバイクがたくさんあるので、「大きなバイク」というのは「見た目がゴツイ」という意味。

 ②加えて言うなら「革ジャン+革パンツ」、もしくは「バイクスーツ」だと萌えも5割増し。

 足が長くてイケメンならば、文句なし。……漫画や小説の世界ならいざしらず、そんなに世の中が甘くないことは重々承知の上で書いてみた。

 さてさて、気づかれない程度にチラ見させていただきましょうか。


 キター! ゴツイです。バイク本体は真っ黒。加えて白地のバイクースーツ。かなり萌える。

 何て読むのか分からないけれど、英文字みたいなのがバイクスーツにあしらわれていて、縦の黒ラインみたいなのも入ってて格好良い。颯爽とバイクから降りる男性。フルフェイスヘルメット。外国人並みの足の長さ……とは言い切れないが、もう充分に魅力的。あと10歳ぐらい若かったら


「後ろに乗せてくださいっ!」


と顎の下で手のひらを握りしめ、潤んだ瞳で見つめたいところだ。良いねぇ、ドキドキ大事。

 私はレギュラーガソリンの注ぎ口を片手に、必要以上に隣の給油スペースをチラ見する。


ピロン ピロリン


 バイクの向こうから、給油機の選択ボタンを押す音が聞こえる。振り向く彼。目元を覆うシールドが上がっている! 頭の中に浮かんだ彫の深いイケメンを想像しつつ、再度、チラ見……って、この人、


めちゃ目が細くない?


 ヘルメットを被ったままのせいか、細い目がさらに横に引っ張られていて、まるで、ゆで卵に切れ込みを入れたよう。ってか、黒目、どこ?

 あぁ、夢って、そんなに長くは続かないものなのね。


 ごめんなさい。①②に加えて、やっぱり③イケメン要素は重要でした。

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