灰色の月

シェンマオ

第1話

私の世界に色彩は無い。

街も、人も、太陽も、全て同じ色に見える。薄ぼんやりとした灰色だ。

それを不自由や、不便だと思った事はない。

ましてや不幸だなんて考えた事も無かった。


けど、世界はそうじゃないらしい。

私には一色に見えるこの世界には、赤や青、黄や緑といった様々な色彩で溢れているらしい。それが見えないなんて可哀想だと、様々な人に言われた。


私は可哀想なのだろうか。

色が感じられない事が、それほど駄目な事なのだろうか。イケない事なのだろうか。

悲観しないと、いけないのだろうか。


私は悩み、考え、空を見上げた。

灰色の濃淡が広がっている。中でも一際明るく見えるのが太陽なのだろう。

私の目には限りなく明るい灰色に見えるあの太陽は、他の人には一体どう見えているのだろう。


夜が好きだ。

明るい時間はすぐに目が痛くなるが、暗い夜は痛くならない。街は相変わらずアンニュイな喧騒に戯れているが、それも何だか昼間より素敵に見える。


夜の海が好きだ。

心地いい夜風と、連なる波の音。

それに、綺麗な月明かり。

月の色は感じれる。だから私は、月が好きだった。



パパとママは画家をやっている。

二人とも有名な画家、自慢の両親だ。私は二人の事が大好きだった。


でも、私は二人に捨てられた。

今頃、家ではパパとママ。そして私と同じ名前の女の子が、一緒になって笑い、ご飯を食べている。

その光景はきっと、絵にするなら太陽のような、私には感じれない色合いで描かれるのだろう。


夜の海はまるで私の心のようだった。

冷たい夜風と、今にも途切れそうな波の音。

月は……綺麗だ。ずっと、綺麗。


海べりで座っていると、段々眠くなってきた。夢に微睡む私は、波の音に任せ、目を瞑る。


私の世界に色彩は無い。

けど、可哀想でも、不幸でも無い。

でも、この灰色の世界は何処までも、私に冷たかった。


海の水より、ずっと。ずっと。

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灰色の月 シェンマオ @kamui00621

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