カタツムリ、閉じこもり、恋しがり

引きこもりになってしまった主人公と、家庭教師の物語。

主人公を励ます先生の言葉に、
「だめだよ、こんなカタツムリみたいな人間は誰も相手してくれない」
と返す。
先生は「僕もカタツムリだった」と零す。

この『カタツムリ』が非常に素晴らしい暗喩になっていて素敵だと思いました。
ストーリー上では明言されていない部分もありますが、カタツムリの特性は二人の性質とピタッと合わさっています。

読み始めは家庭教師とのBLを想像させられましたが、突如としてその甘い妄想は砕かれます。
後味は決して良くありませんが、それこそがこういったたぐいの小説の醍醐味だと思います。無理矢理適当なハッピーエンドにされるよりは、断然こちらの方が良い。そう思わされるのはおそらく作中で描かれる社会がとてもリアルだったからだと思います。またそれにより社会風刺にも磨きがかかっていて、他人事だと思ってはいけない迫力のようなものがありました。

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