第10話 能力の相性

「早くクラスチェンジしたいですね。頼りにしていますよ、先輩」


くすり


ルルイエが微笑む。


「でも、先輩も、本当はミレア様とPTを組みたかったんじゃ無いんですか?」


「そもそも、ミレアに相応しい地位と名声を手に入れる為のレベル上げだしな。ミレアにおんぶに抱っこでは、周囲の評価はおろか、ミレアにすら呆れられてしまう」


「……ミレア様は、先輩とPTを組むのを望んでおられると思いますが」


「いや、ミレアにとって、俺と組んでもメリットは薄いよ。ミレアは万能だからな」


俺とルルイエを合わせた様な能力だからな。


「んー。と言いますか。例えば、先輩はミレア様と一緒に冒険をすると楽しいですよね」


「ああ、何度かミレア達と組んだ事が有るが、楽しいぞ」


ミレア、パオラ、ラクチェは、良くPTを組む。

俺も混ざった事がある。


「そうではなく、ミレア様とペアで冒険に出たら、嬉しいですよね?」


「相性的に微妙だな。むしろパオラとペアの方がお互いに補い合えると思う」


「えっと……」


何か言いたげなルルイエ。


「俺とルルイエは、能力からだの相性ばっちりだと思うぞ」


「その台詞、パオラ先輩には言ってないでしょうね……」


「ルルイエ、お前以外にこんな事は言わないよ。お前だけだ、俺が将来を誓いたいと思ったのは」


「……絶対、先輩、女の娘を泣かしていると思います……」


ルルイエが胡乱な目で告げた。

俺は女性は大切にしている筈だぞ……?


−−


「50!」


モンスターハウス、魔物の群れの駆除。

50体目の魔物──クリスタルスパイダーを袈裟斬りにする。

ミスリルの斧に、ルルイエの強化魔法付与。

結構さくさく狩れる。


俺はレベルが89に。

ルルイエも48に。

やはり、上級ダンジョンは稼ぎが良い。


「先輩、そこの角に歪みが……!サモントラップです」


踏むと、大量の魔物が召喚され、天国に一直線。


「さっきの手で行こう。ルルイエ、あの通路へ」


「はい」


ルルイエが詠唱を始める。


「畏み畏み……盾持つ存在、美しき存在、叡智持つ存在……その御力、賜い給え……絶対防御イージス


俺の周囲に、防護結界が現れる。


ルルイエが通路へ移動後、始めた詠唱が終わるのを待ってから。


かちり


トラップを発動。


ゴウッ


100体近い魔物……って、待て!

今まで80前後のレベルの敵だったのに、レベルが100を超えてそうな奴が大半だ。

くそ……!


戦場の道化ザ・フール!」


俺の特異能力ユニークスキル

斧使いの弱さを強調する事で、思わず攻撃をしたくさせる技だ。

盾持ちの騎士とかなら有効活用できるが、防御が紙の斧使いが持っていても、ただの自殺願望だ。


キイイイイイ


敵が俺に突進……だが、絶対防御イージスに阻まれ……そして……


殲滅の光ジャッジメント!」


ゴウッ


ルルイエの放った光が、敵を焼き尽くした。

おいおい……100レベル超えの敵を一撃かよ。


ぱたり


ルルイエが倒れる。

駆け寄り、助け起こす。

気を失っているな。


さっき使った時もかなり疲労していたが、今回は加減せず撃ったのだろう。

ソロ余裕じゃね、と思ったが、これはソロでは使えない手だな。


-------------


観「主人公の言葉の選び方が……これで流せるルルイエも凄いな」

歌「PT活動や戦闘の話題がメイン、と認識した上で聞けば、どうにかなっているようです」


観「自分にイージスをかけて敵に突撃、ジャッジメントを撃てばソロで荒稼ぎできるのか?」

歌「さすがに自分に大量に敵が群がっている状況では集中できないですし。そもそも、主人公のスキルなしでは、敵も警戒してそうそう密に集まってくれないですしね」

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月下夜話 赤里キツネ @akasato_kitsune

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