雨の迷ひ路

深見萩緒

雨の迷ひ路


薄暗い雨の迷ひ路に佇んでゐるおまへの影に

くらあい何かが憑いてゐた

七月に迷つた雨どもが優しいおまへに縋り付き

未だ梅雨が明けずにおるのだ


傘から垂れた雨のよだれに

おまへの肩はじつとり湿り

黴臭い陰鬱の薫りがする


優しいおまへ

雨をどこへ連れてゆくのだ

遥か南シナの海より北上し

行き先を見失ひ泣いてゐる

雨の子 梅雨の子

その子をどこへ連れてゆくのだ

よもやじめつく陰雨の子を

抱へ込むつもりではあるまいが


優しいおまへ

明けぬ梅雨を想つて涙を流す

優しいおまへ

おまへの涙が雨を呼び

また八月が遠のくのだ


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雨の迷ひ路 深見萩緒 @miscanthus_nogi

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