第3話写真
「見て、この人よ、きれいね」
「え、誰ですか? 」私の顔を見てその人は、どこか意地悪な雰囲気も残したまま
「Qさんの元旦那さんの、新しい奥さん」
「え!! こんなにきれいな人・・・」
「しかも料理も掃除も、家計の管理も完璧にできるらしいわよ。旦那さんの両親が「前の嫁とは雲泥の差」って言っているらしいの、ちょっとそれは可哀そうね・・・正直私もこんな人とは戦えないわ」
「そうなの・・・」
さすがにこの事は自然と人を集めることになった。数人で輪を作り、真剣な会議の様相だった。すると女の勘なのか、ヒガミと言われても仕方がないが、全員この意見に賛成した。
「おかしいよね、こんな人が普通の男の人に・・・」
「これだけ美人だったら、色々な経験をしているはず。恋愛感情だけで動くかしら」
「まだ離婚して数か月よね、でもどう見てもずいぶん前から知っている雰囲気 ね、SNSにアップしている写真を見て見ると」
「旦那さん、本当に普通の感じですね。女遊びをするようなタイプじゃなさそう」
「誠実さに惹かれたらしいわよ」
「奥さんのいる人なのに? 」
そして最終結論として
「略奪愛の後の保険金目的・・・とか・・・以前あったわよね、料理上手な人で男性を次々にって」
「あなた、推理小説好きって言っていたわよね、どう思う」
「そうですね、現実の事件って案外シンプルですから、どう見てもその線と思いま す。でも、ちょっと悲しい気もします。人を恋する気持ちを私たちは忘れたんですかね」
「本当に」
その後、皆家に帰って、私は娘とこのことについて話した。
「お前どう思う? 」
「やめてくれない、そんな話。聞きたくもないわ」
「でも・・・」
「夫婦なんて割れ鍋に綴じ蓋でしょ、Qさんと結婚する男の人なんだから・・・まあ私も女としての現金な下心だと思うけれど」
「お前の方がひどいじゃない」
「とにかくもうその話やめて。こっちにも悪いことが起こりそう」
「それもそうね」
老いては子に従えで、私もなるべくこの事を話さないようにした。そうしているうちに時は過ぎ、一年以上たって、皆この事をすっかり忘れ去っていた。
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