写し身

 夏目漱石の『草枕』ではないが、とかくにこの世は住みにくい。
 本作の作者は、『現実』と『リアル』を分けて考えている。これは昭和世代の私にとって新鮮な感覚だ。
 あらゆる物事がデジタルにもアナログにも並行して存在する世界は、さすがの漱石も予想だに出来なかったろう。しかし、漱石を始めとする明治の先人達は、鎖国が解けて新しくやってきた言葉や感覚を日本語に直し続けた。
 現代の我々は、デジタルとアナログを互いに翻訳し合う行為を必要としている。本作を読んでいてそう感じた。
 詳細本作。