(説明できないのでレビューではなくほぼ感想です)
- ★★★ Excellent!!!
アリの巣にサイダー流し込んだりセミの死体蹴ったりする少年と過ごした夏のお話。
面白かった、というかとてもよかったのですけれど、何がどう、と言われるとなかなか言葉にできません。なんで面白いんだろう? 正直、まったくレビューになってないのですが、なんだかいてもたってもいられないので書きました。
説明文に「こむら川2作目」とある通り、競作の企画に出すために書き下ろされた作品で、その企画の共通のお題として『擬態』というテーマがありました(したがって、この作品も『擬態』というテーマを意識して書かれた作品ということになります)。そのお題に対してものすごく誠実に書かれた回答というか、『擬態』という要素をこれ以上ないほど綺麗に消化した作品だと思いました。
実は個人的な読み方の姿勢として、こういう事前に指定されたテーマ等はあえてあまり意識しないようにして読む方なのですが、それでも無理矢理振り向かされたような感じです。ここまでされるとさすがに、的な。
あと文章が好きです。冒頭の一文からもう「うまい……」ってなりました。なんでこんなにいいのかわからなくて、なんだか「畜生、魅力を感じてなどやるものか」と無意味に抵抗しながら読んだりしました(すみません)。いやだって、本当にいいのになんでかわかんない……話の内容に至ってはもう何をどう言えば? 刺さった、というかなんか胸の真ん中を裏側から硬い棒かなんかでグリグリ押されたみたいになりました。
最終盤の「川から引き上げられた彼の」から始まる段がクライマックスで、ここのぐわんとせり上がってくる感じがやっぱり一番好きなのですが、さらにそのあとの結びまでの処理、シュッとしめやかに締めるのではなくて『擬態』でもう一発かまして拓けてくるところがとても気持ち良かったです。もうレビューというよりはただの感想でした。