Day After Day
故郷は田舎で、感染者の噂すら聞き届いていないように見える。
人影はまばらに歩いているが、もちろん既に生きてはいない。
結論から言えば、俺は故郷になど戻るべきではなかった。
両親は虚ろに家の中を徘徊するだけの存在となっていた。
家の扉に釘を打ち付けて密閉し、俺は家を後にする。
俺だけが生き延びても仕方が無い。
死ぬ事だけが今や希望だ。
俺は自分の頭に銃を突きつけ、引き金を引こうとする。
その瞬間に、俺の筋肉が硬直してしまう。
引き金はひかせないというわけだ。
首吊りも試してみたが、台を蹴った瞬間に俺の首の筋肉が膨張し、輪っかを膨張圧で引きちぎってしまった。
あらゆる毒も飲んだ所でたちどころに分解される。
出血で死のうとしてもあっという間に血が止まってしまう。
俺は死ねなくなった。
寄生体は俺が自殺を図ろうとするたびに身体を支配し、拒む。
まるで生きろと言わんばかりに。
日々を無為に過ごしていた時、突如俺の元に一人の生存者が現れる。
迷彩服に身を包んだ、いかにもな風貌をしている男。
「やあ。君は適合者、だね」
「……何故、俺が適合者だと知っている」
「適合者はある特定の周波数を定期的に飛ばしている事が分かった。不完全な感染者であれば、この電波は不定期か途切れがちになる」
「お前、何者だ? 適合者が存在する事を何故知っている」
「教える義理はない」
奴は突然、懐からマシンガンを取り出してぶっ放した。
まともに喰らったが、俺はまるで意に介さず持っている散弾銃でお返ししてやった。
反射的に撃ってしまったので、生存者の頭を狙ってしまい直撃した。
「あーあ。やっちまった。殺意なんか向けるからだよ」
銃弾程度で俺たちが死ねたら苦労しねえよ。
俺の体に食い込んだ銃弾を、いつの間にか寄生体は体から吐き出している。
俺と寄生体の融合はますます進み、もはやどこからどこまでが寄生体なのか全くわからない。
しかし依然として頭と腹の部分は異形のままだ。
適合者となった感染者が居る事を嗅ぎ付けた連中がついに現れたか。
医者と会って以来は他人との交流は断ってきた。
俺の存在は死んだ医者以外は知らないはず。
だとすれば、俺と同じような奴が他にも居る可能性が高い。
「仲間を見つけた方が、身の安全を図る為にはよさそうだな」
俺は包帯を頭と腹に巻き、怪我人を装って再び故郷を出る事にした。
東の方向に定期的な電波を感じる。
「カリフォルニアから東か……」
ニューヨークまで行かないで済むことを願うしかないが、果たしてどうかな。
終末のフリークス 綿貫むじな @DRtanuki
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