最終話 クダのいる家

 身を隠す暗がりがある屋敷は減ってしまったけれど、探せばまだあるものだ。

 私は潜り込んだ縁の下の暗がりから辺りを窺った。木の生茂る庭。古い家屋。屋敷の隅に凝る影。

 良さそうな場所だ。

 長い旅だった。私は疲れた体を横たえ、眠ろうとした。


「だあれ?」


 縁の下を覗き込んだのは、まだ年端もいかない子どもだった。私が見える者もたまにいる。かつての祖母のような。私に菫という名をつけた、かつて私が母と呼んだ人。今なら全て思い出せる。



 私は答えた。



「私は菫」



 クダのいる家・完


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クダのいる家 いぬきつねこ @tunekoinuki

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