5話 あの日何が起こったか
——はい。確かにそうです。
もう2年も前の話ですけど。
ええ、たしかにわたしは◼️◼️◼️家に嫁ぎました。
嫁いで初めて知ったんです。
クダって言ってましたね。
守り神みたいなもので、屋敷中にたくさんいるんだって言ってました。姑が。彼女には見えてたのかな。
姑は厳しい人で、◼️◼️◼️家のルールを守らないとすごく叱られましたよ。
屋敷の奥に子ども部屋があるんです。
誰もいないんですけど、必ずそこに挨拶しなきゃならないんです。朝起きた時、お昼、寝る前も。7歳くらいの女の子がいるって設定で絵本を読んでやったりお話とかしてやらなくちゃいけなくて。他にはお布団を敷いたりとか。はい。そうです。誰もいないんですよ。
姑の話では、そこにいるのもクダなんだそうです。でもその子はずっと大切にされていたから、自分のことを人間だって思ってて、他のクダがいなくなってもずっとお屋敷に残ってくれるんだとか。だから出来るだけ居心地いいようにして、それで。えっと、外の世界に興味が湧いたりもしないようにわたしにもお洒落なんかするなって言ってましたね。クダだってことも気づかせちゃだめだとか。とにかく面倒くさいルールがあったんです。そういうのが続いて、私はもう耐えられなくてお屋敷を出ちゃったんです。
今回の件はニュースで知りました。
大変だったんですね。そうですか。あの人も意識が戻ったんだ。死ななくてよかった。まあ、一度は一緒になった人ですから。
獣?クダって獣なんですか?噛み跡が?人のものでも獣のものでもない歯形?へー。怖い。
私にはわからないです。全部ただのしきたりだと思っていたし。
子どもの名前?菫です。菫ちゃんって呼んでました。
えっ、みんな、紫色の目をした獣に襲われたって言ってるんですか?
ふーん。だから菫ちゃんって名前だったんだ。
月刊 オカルト真書 取材テープより
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