3.ついに…


俺が新たに生を受けてから約一年。俺には様々な成長があった。


まず一つ目にハイハイできるようになった。これは大きい。今までベットの上でしか行動できなかったがこれだけ大きく俺の行動範囲が増した。とはいっても俺の家は二階建てなので1階に降りることはできない。流石に階段から転げ落ちることを考えたらとてもじゃないが近づけない。


もう一つは魔法だ。あの時どうして魔法が発動したけどあんな風に暴発したのかが分からなかった。でもそれを後日考え直してみるととあることに気が付いた。そうやったこともないことがそう簡単にできるわけがないということだ。


いやいや何言ってんのこいつと思うかもしれないがとりあえず聞いてほしい。皆さんも自転車に乗ったことがあるだろう。いうなればあれと同じだ。最初は三輪を付けてこぐことから始めて、次に3輪を外して自転車本来の形でこぎ始める。


俺もなかなかうまくいかなかった。こいではこけて、こいではこけての繰り返し。こけるたびにだんだんと少しずつ自転車でのバランスがとれる時間が長くなるあの感覚。もう2度と味わえないんだろうな。今でこそ笑い事ですんでいるがあの時の俺の親なんて俺のことを道具としか思ってないから失敗するたびに鞭でしばかれた。いやほんとにつらかったよ、うん。


まぁ、話はそれたが魔法を同じだ。魔法を使う際に必要なものと言えば魔力。じゃあ、魔力の扱いがうまくなれば魔法もコントロールできるんじゃね?と思ったので実際にやってみたところ成功だった。成功か判断するのにかなりの月日が流れたが…。


そこで分かったのが魔力のコントロールというものは相当に難しかった。前世には存在しなかったものなのでいまいち正しい方法もわからないし、言葉もうまく話せないので親にも頼れず一人でベットで黙々とやった。


幾度となく魔力のコントロールに苦労した結果、その甲斐があったのか魔力がある程度コントロールできるようになったところでこの前とは違って明確に小さな風を起こそうとコントロールした結果そよ風が吹いた。


もうそれは感動してベットでキャッキャうふふしてしまった。おかげで両親からは、生暖かい目で見られてしまった。恥ずかしい。



とまぁこんな風にいろいろなことができるようになった。とは言えまだまだ不自由なのだが…。

そしてなんと今日で俺の生誕1周年。要するに1歳の誕生日なのだ。めちゃくちゃ親も張り切っていた。

正直ちょっと不安である。そして今日俺はあることをお披露目するのだ。


その前に眠たいので親の準備が終わるまでは、寝ることにしよう。おやすみ。


◇◇◇


「んぅ。」


何か揺さぶられている気がする。寝ぼけた意識を急速に加速させて目を開ける。残念ながらまだ視界はぼやけている。


「フェイちゃん、降りるからじっとしててね。」


お母さんだった。どうやら抱えられて下に連れていかれているようだ。俺は、天井を向いているので良く周りが見えないが…。


俺は、席に着かされた。流石に1歳にもなれば母乳から卒業している。と言っても離乳食なんてないので細かく切った野菜やお肉などが料理として出される感じだった。


「はい、フェイちゃん。これお誕生日プレゼントの絵本ね。」


「だうぅー。」


母さんから渡されたのは、一冊の絵本だ。とある英雄について書かれている本のようだった。まだ字は少ししか読めないので後日お母さんに読み聞かせしてもらおう。


「俺からは、この弓をやろう。」


「だあぅ。」


父さんから渡されたのはおもちゃの弓だ。エルフは、やはり弓が得意なようだ。正直おもちゃでも楽しそうなのでうれしい。ここいらでとっておきを見せておくべきだろう。このt目だけに特訓を積んできたからな。


「まぁーま、ぱーぱ。あいがとーー。」


「「!?」」


二人の表情が驚愕で染まった。そりゃそうだろう。一歳とは言え、しゃべるのはありえないはずなのだから。と思っていると二人が泣き出した。


「今しゃべったよな?」


「ねえ?いましゃべったよね。」


二人が顔を合わせて確認し合っている。


「よかった。良かったよー、フェイ。」


お父さんが抱き着いてきた。めちゃくちゃ暑苦しい。それにしても泣いて喜ぶほどなのか?


「そうね。なかなかしゃべらないから私もこの子がしゃべれないかと思ってたの。だからほんとに良かった。」


え?今とんでもないことが聞こえたんだけど。

人間だと3歳ぐらいでようやくしゃべれるようになるのにエルフだと1歳で遅いくらいなの?

今まで必死に練習してきて身に着けてこの日まで温めていたのに!?

まるで俺がばかみたいじゃん。エルフめちゃくちゃ成長早いなおい。


まぁ、親が泣いて喜んでくれたのは良かったかもしれない。前の世界だとこんな風に喜んでくれなかったから。こういう家族でほんとに良かったと思う。


俺は、この家に生まれてくることができて本当に良かった。



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