エルフの少年は凌駕したい〜勇者になんか負けたくない〜

七草 みらい

1.プロローグ



俺の名前は、荒崎快斗。昔から俺は、道具扱いされてきた。

結果を出さなければ、殴られ、食事も抜かれ、監禁させられる。そんな毎日だった。


そんな俺のもとにある日転機が訪れた。両親が殺されたのだ。別に誰に殺されようが俺はどうでもよかった。おそらく今になってみればこの時の俺に感情などなかったのだろう。殺した張本人としては俺が両親を殺されるところを目の前で見せつけて絶望するところを見たかったのだろう。


結果的に俺の元には、大量の親の残した資産が残った。その中には、汚い商売で手に入れたお金もあった。まぁ、そんなことはどうでもよかった。当時の俺は、12歳。小学6年生だった。


俺の元には親戚を名乗る人たちが襲い掛かってきた。十中八九資産狙いだとわかったのですべて潰した。


そんな俺を変えたのが中学生の頃だった。


「君って、人形みたいだね。」


そう言ってきたのは、松中瑠璃。ショートカットが特徴の女の子でかなりのお節介を焼いてくる子だった。当時の俺が感情を手に入れるきっかけになった子だ。


「もっと笑えよ。この世には楽しいことがいっぱいあるんだぜ?」


もう一人は、一条涼介。アウトドア派のスポーツ得意なイケメン野郎だ。当時の俺は、こいつに自分の見てきた世界の狭さを実感させられた。


この二人と過ごすのは楽しかった。毎日が新鮮だった。昔のことを忘れることができたからだ。だがそんな日にも唐突に終わりが訪れた。


それは、3人で帰っている時のことだった。


「やっぱりまいたけの山でしょ。」


「いや、違う。竹の里だ。」


「どっちでもいいでしょ。」


「「快斗は黙ってて。」」


仲良くお菓子談義をしていた時だった。横断歩道を渡っていると突如として悪寒を感じた。昔感じた死の気配だった。


慌てて周りを見ればトラックが来ていた。まっすぐこちらに向かって突っ込んできているではないか。


「おい!走るぞ。」


二人に声をかけ、走るように促す。


「おうっ。」


「うん、きゃっ。」


走ろうとするも瑠璃がこけてしまった。このままだと瑠璃が巻き込まれてしまう。そこからの判断は迅速だった。鞄を投げ捨て、瑠璃を抱える。そしてそのまま――。


「受け取れっ。涼!」


涼めがけて瑠璃を投げつけた。だが流石はスポーツ万能野郎。ここでもその身体能力を生かして瑠璃をキャッチした。逃げようと思った時にはもう遅かった。


体が宙に舞う感覚だった。何だが世界がスローになっているようにも感じた。俺にとって二人の存在は何よりも大切だ。それだけに守ることができたのは、良かった。ただ一つわがままを言うとすれば。


「もっと生きたかったなぁ。」


最後に見た二人の顔には涙がこぼれているような気がした。

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