第4話 アルラトゥ~“罪”を背負いし導き手~
以下は、2022年7月28日に近況ノート上でサポーター様向けに書かせて頂いた短編の転載で御座います。
【第452話 F級の僕は、『追想の琥珀』に封じられし想いを追体験する】
をご覧になられたうえでお読み頂くと、より、その意味を深く理解する事が出来るかもしれません。
――◇―――◇―――◇――
―――行くのですね……
荒野を吹きすさぶ寒風の中、ボロをまとって歩く彼女の耳元に、優しい声が届けられた。
「はい。私にはまだ……」
彼女はそう口にしながら、そっと振り返った。
「……果たすべき責務が有りますから」
彼女の背後には、やはりボロをまとった老若男女十数人がよろめくように付き従っている。
元は雪のように白く輝いていた彼等彼女等の肌は、今はくすんだこげ茶色へと変化してしまった。
かつては視界の中、きらめくように舞い踊っていた精霊達の姿も、今はもう永遠に見る事はかなわなくなってしまった。
呪いを受け、世界から拒絶された彼等を安息の地に導く事。
それこそが自らに課せられているはずの最後の責務
顔を前に戻した彼女の耳元、再び優しい声が届いた。
―――あなたが全てを背負う必要は無いではありませんか。あなたはただ、交わされた
「私は妹を
―――ですがあなたが始めたからこそ、この世界は解放されました
彼女は静かに首を横に振った。
「世界を解放したのは、妹と……」
彼女の脳裏に、若く
彼と死闘を演じる“ふり”をして、彼にすら気付かれる事無く、彼をかつて創世神と
彼が振るう刀が、光を失い闇に堕ちた女神の神性をその実体ごと斬り裂いた瞬間を。
「……あの獣人族の英雄です」
束の間の沈黙の後、優しい声が
―――神託を下す事も出来たのですよ
「……」
―――あなたには元々罪など無かった、と
「ありがとうございます。ですが……」
彼女は立ち止まると、もう一度そっと背後に視線を向けた。
寒風の中、結果的に巻き込んでしまった罪なき同族達がふらつきながら、それでも彼女について来ているその姿に。
「やはり私はこのまま行きます」
優しい
そして僕等は彼に出会う 風の吹くまま気の向くまま @takashi21
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