オカルト好きな従兄から伝え聞いた「異界を呼び寄せる方法」を試す子供たちが巻き込まれる恐怖の物語。
とにかく全体的に続きを読ませる力がすごいと思いました。
異界に関する小道具や逸話などの背景設定の開示。いつもと違う何かが始まるんだという期待感に満ちた中で準備が進んでいく序盤。そして少しずつ雲行きが怪しくなってゆく中盤。いよいよ姿を見せ始める正真正銘のホラー展開と緊張の連続。これら多彩な場面変遷が見事というほかなく、次はどうなる次はどうなると、読む手が止まりませんでした。
展開の面白さもさることながら、この作品を面白くしているのは主人公の一人称を使いこなした心情描写の巧みさだと思います。登場人物たちの焦りや不安、緊張感を余すことなく読者に伝えてくれて、強い臨場感があります。
僕自身の文章能力が到底足りないために、このレビューだけではその魅力を伝えきれないのが大変惜しい。
とにかく、まず読んでほしい作品です。
小学六年生の「ぼく」ことタツノが、従兄弟のお兄ちゃんから異界を招くための儀式を教えてもらう。同級生ナルと話が弾んで、いつのまにか異界探検ツアーと題して、皆で儀式を試すことに……。というあらすじ。
この儀式というのが、高い塔の上で魔法陣の上で祈ると、下から異界が上ってくるというもの。使われていないビルの屋上を見繕って儀式を試し、いざ下へ降りてゆこう!というわけですが、ここの描写が大変に良い。少年少女がワイワイと楽しみながら、一つまみの怖さを味わう情景。だんだんと不穏になってくるあたりの様子。来るぞ…来るぞ…と思わせて、まだ来ない、いつ来るか、と読者まで息を飲む恐怖の演出。リアリティのあるホラー描写で、感心しました。彼らの異界探検の結末がいったいどうなるのか、皆さんもこの夏休みホラー体験を味わってみてください。