番外編『バレンタイン』
皆が殺気立っている……理由は単純明快、バレンタインだからである。正確には二日後なのだが、二月十四日は生憎の日曜日であり、バレンタインチョコを貰うには金曜日の今日しかないのである。
しかしながらバレンタインチョコを渡すというのはキリスト教司祭のウァレンティヌスが処刑されてしまったことに由来するのだ。
死後暫くしてバレンタインを讃えようと、大切な人にプレゼントを渡すようになり、外国では男の人から女の人に渡したりすることが主流だ。
日本に入ってきたのは、もっと後のことであり、企業が商売のために「バレンタインにはチョコを送ろう!」と声をかけて始まりまったのだ!
つまりは日本のバレンタインは商法であると言える。そんなのに踊らされている彼らは愚の骨頂であるのだ。
だが貰える物は当然貰いたい。商法に踊らされている訳では当然ないのだが、当然ないのだが……(大事なことなので二回言った)一人貰えないのは悲しすぎるだろう。
しかしながら俺は和真のような滑稽な行動はしない。幼馴染の葵が情けでくれると分かっているからである。小学六年迄物心ついた時から毎年の様に手の込んだ義理チェコを貰っていた。多分義理チョコである。今年も貰えるその思いが和真のような行動をしない理由だろう。
和真は何度も「義理チョコでいいからください」と色んな女子に声をかけては断られていた。笑い者である。
と葵に声をかけたようで……葵から丁度よくチョコを貰えたらしい。手に握られているのはどうやら市販の小さなチョコのようで明らかに義理チョコだ。しかしなんだか胸がむしゃくしゃしてしまった……
葵は次々と義理チョコを渡していた。クラスの中でもトップクラスで可愛い葵から義理チョコを貰えた男子は、和真同様間抜けな顔を晒していた。
いよいよ俺の目の前に葵がやってくる……
「秀くん……ごめんね?チェコ無くなっちゃった……」
一瞬何を言ったのか分からなかった。毎年貰っていたチェコが貰えない……そのことを理解した時俺はそっと目を閉じた。
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そんなことがあったのが二日前のことだ。目を閉じた後、俺は倒れてしまったらしく、病院に運ばれていた。一條財閥の人間に間違いがあってはならないと救急車で運ばれたらしい。
勿論体調に一切問題はなく直ぐに自宅に帰宅することとなる。結局チェコが貰えてなかったことに気づき再び倒れた。
で何故か二月十四日の朝家には二人の来客がいた。葵と桃さんである。一番の疑問は何故桃さんに家バレしているかであるのだが……二人は睨み合っていた。
「あんた秀くんのなんなのよ!」
「貴女こそ秀麻くんのなんなの!」
「幼馴染で本命チェコを持ってきたの!」
「なによ!私だって本命持ってきたのよ!」
「なんで秀くんのお家知ってるの!なんでお家の中にいるの!」
「そっそれは事務所にお願いして(ボソボソ)」
と口喧嘩をしていた。というよりこの美少女二人が本命を持って来てくれたことの方が驚きなのだが……
「「で!私とアイツどっちのチョコを受け取るの!!」」
「どっちでもじゃダメですか……」
「「許す訳ないでしょ!」」
同時に葵と桃さんに抱きつかれ……俺は意識を手放してしまった。
また救急車で運ばれて、病院から帰ったあと、二人の本命チョコを食べた。人生の中で最も美味しかった。……でも二人から好意を示されるってこんなにも困る物なのだろうか……
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短編出しました。宜しければご覧ください。もしかしたら葵と桃目線のバレンタイン編を更新するかもしれないです。でも期待はしないでください笑
彼女をレンタルしたらモテる様になってしまった件 橘 有栖 @Ailice_dhole
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