第3話 桜坂の道の向こうに

 陸華とのデートの帰り道を歩いていた。わたしは個室のトイレ恐怖症である。一度、学校の個室に入っていた時に上から水をかけられた。ずぶ濡れになり、それからは多目的トイレにしか入っていない。


 Wバーガーで我慢できなくなり。


 陸華を置いて多目的トイレを探すのであった。デートはめちゃくちゃになり、トボトボと歩いていた。わたしはダメ人間だ……。


『コンレイのこともっと理解すべきだった』


 陸華からのショートメールが届く。


 優しいなー。


 わたしは言葉を探していた。大好きな陸華に届く言葉だ。しかし、送れたのは『ゴメン』だけであった。


 わたしは家に着くと布団の中にこもる。布団の中で泣こうと思ったが更にショートメールが届く。やり取りをするうちに前向きに生きようと思うのであった。わたしは二階の部屋から庭を見渡す。季節の移ろいが感じられた。お気に入りの紅茶を取り出して一口飲むのであった。


 いい香り……。


 ツバメが鳴いている。巣立ちの季節である。肥るのを覚悟でチーズケーキを取り出す。その味は思い出に残るモノであった。


 わたしはコンレイこと今野麗子だ。


 意味不明の自信は陸華にもう一度デートに誘う勇気をくれた。個室トイレの恐怖症は明日から直そう。わたしの人生は回り始めたばかりだ。




 春、わたしは大学に通い始めた。


 桜坂の道を歩く。


 高校時代にわたしに嫌がらせをしていた、三人は自主退学をした。陸華と受験の冬は終わり。猛勉強の末に同じ大学に通う事になった。桜並木の向こうで陸華が待っている。新生活はこの街で始まるのである。


 この坂を毎日上がるのか……。


 運動不足のわたしは息を切らせていた。陸華が見えてきた。


 わたしは陸華とグータッチをする。


 きっと、そんな関係なのであろう。


 大学生のカップルには幼いのであった。そう、ある朝に陸華が嫌がらせしていた女子にガツンと言ったのである。泣き始める三人は担任にすがるが嫌がらせを認めざる事になり。自主退学に追い込まれた。


 そんな大事になって、泣きそうな毎日でも陸華は味方でいてくれた。わたしは優等生の陸華についていく事にした。高校二年生から猛勉強で成績を上げて、陸華に相応しいと言われるまでになった。結果、同じ大学に通い始める事ができた。


 この遠い土地で新生活が始まる。アパートは別々に借りていた。流石に同居は恥ずかしい。


 入学式の後でのオリエンテーションは二人で参加した。校舎の窓から見える桜坂は一生の思い出になりそうだ。わたしは記念に一枚、桜坂を画像に残す。


 そう、これからがわたしの人生だ。

 

 横にいる陸華を見つめて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

桜坂の道 霜花 桔梗 @myosotis2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る