吾輩は黒猫である。名前はアル。御主人は高校二年生の千里である。
御主人である千里が生まれた日に夏前の家に飼い猫としてやって来た。
千里と共に十六年過ごし去年その生涯を閉じた。
今は千里のリックサックの黒猫のキーホルダーとして一緒にいる。
そう、吾輩は千里の事が大好きである。
なので、神様に頼んでキーホルダーにしてもらった。
死して千里と一緒に居られる事は幸せの限りである。
今朝もリックサックのアクセサリーとして、共に登校である。
バスに揺られて数十分、親友の模利と昇降口で待ち合わせのメッセージ交換であった。
吾輩が居なくなった時に、梨菜が支えてくれたのだ。
「少し早く着いたか……」
御主人が昇降口前で立ち尽くしていると。
「夏前、今日も友達待ちか?」
昇降口に立って挨拶をしている教師に声をかけられる。
「はい……」
返事を返すと御主人は下を向いてしまう。
それは対人恐怖なのである。こんな時は吾輩の出番だ。
リックサックをぶら下げた体をブルブルと動かして御主人に気づいてもらう。
「うん?アルが揺れている」
よかった気がついた。
「アル、お前も寂しいのか?」
御主人はリュックサックを降ろして吾輩に触れる。吾輩は揺れる事しかできないが御主人の心を癒す事ができるのだ。
御主人が吾輩に触れていると親友の模利がやってくる。
「おはようー千里」
「うん、おはよう」
御主人に笑顔が戻った。
吾輩は御主人の笑顔が大好きなのだ。
そして、リュクサックを背負うと教室に向かうのであった。
……ーーー
「お母さん、アルがグッタリしているの。嫌だよ、死んじゃ嫌だよ」
それは御主人との別れの時であった。泣き叫び顔がグチャグチャの御主人を見るのは辛かった。
「千里、アルは天寿をまっとうしたの、笑顔で送ってあげましょう」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ」
首をふるふるさせて、御主人は泣く。
吾輩は幸せ者であった。今の御主人がその証拠だ。
吾輩は天国には行かず神様にお願いすることにした。
それはまだまだ御主人のことが心配であったからた。
こうしてキーホルダーの吾輩が生まれたのた。
……ーーー